眠れぬ夜、頭上には星

 年金やら税金やら諸々の金に関するアレコレが頭の中を暴力的に駆け巡り、目が冴えてしまった午前3時過ぎ。


「畜生寝れぬ」


 高校生の時分から着ている寝巻のジャージに、先輩から貰ったスカジャンを羽織り、使い古し限りなく灰色に近いピンクのクロックス(バッタモン)を履き部屋を出た。


 季節は春の中ごろ、ゆえに若干の肌寒さを感じる。


 目指すは最寄りのコンビニ。


 クレープアイスを何となく食べたくなったのでコンビニに行くのだ。


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 さてコンビニについたのだけれど困ったことが起きた。


「おら! 金だ! レジの金全部だ!」


 またしても強盗が現れたのだ。


 目当てのクレープアイスを片手にレジに並んでいたら、前の男が懐から柳葉包丁を取り出し、レジに立つアルバイトの青年を脅しに掛かった。


 この異常な犯罪発生率を誇る私が暮らす街は東洋のゴッサムシティと揶揄されるスラム、訳ありの者が最後に行き着く終の棲家だ。


「お客さん冗談きついっすよ~」

 アルバイトの青年は余裕ある態度で強盗を接客する。

 何故なら私の正体を知っているのだから。


「おい百姓!」

 私は強盗をその背後から呼びかける。

「あ?」

 間抜けが。

 振り向きざまにクレープアイスを持っていない左手で、強盗が柳葉包丁を持った右手首をホールドし、クレープアイスをアルバイトに投げる。

「おっと!」

 アルバイトがクレープアイスをキャッチすると同時に、右手だけ魔法少女『マジカルキャンサー』の戦闘形態である着甲ちゃっこう状態に変身させる。

 着甲、詰まるところが巨大な蟹の鋏を腕に纏わせ


 宙に舞う強盗の生首をサッカーのリフティングが如く足で受け止め、床に置いた。


「うわあああああ!」

「うっるせえなおっさんよ」


 首だけの強盗が叫び、ややあって頭を無くした強盗の躰が膝をつき弾みを付けて前のめりにぶっ倒れた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る