第7話
以下に示される、音声データから起こされたこの情景は一見、何の変哲もない若者の、日常の交歓の1シーンであるかに認識される。
しかし、一方があの人類史、航宙史を切り拓いた英雄の俗称が相応しい有名人、第一期月入植現場指揮官にして初代月市長、ヴィクラム・サラバイであると知れれば俄然、その様相は一変する、その月出立直前での会合の1シーンであるのだ。
その特徴的な豊かなバリトンは、声紋解析するまでもなく英雄当人のものだ。
他方、当時の地球連合航宙保安局情報室資料編纂室室長代理、エディ・ランデンもまた、史書に記されない無名ながら、歴史の重要なバイプレイヤとしてその職責を全うした事が十分な蓋然性を以って推察可能なのだ。
火星危機研究に携わる公私研究者一同にとり、現存する第一級の史料である。
「血は1滴も流さない」
「理想は高く、高い方がいい」
「一人も、殺さない」
「そう、最低限、だ」
「自身も」
「自身も」
「血を流してでも勝利するくらいなら、素直に手をあげよう」
「流血の禍根は残さない、やり直す、そう、次代に」
や、もうこんな時間だ。
最後に二人は乾杯を交わす。
「人類の未来に」
「人類の未来に」
内務省情報開示請求アーカイブ参照可、音声データのみ現存、抜粋略記。
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