第21話 執事に託す

 ヨニーは泣きながら震えて話す私の肩や手をさすりつつ今までのことを全部黙って聞いてくれた。


「大丈夫ですか?アンネット。今まで大変でしたね…。僕が…大変なご迷惑をおかけしたことを心より謝ります…」

 とヨニーは自分の知らないであろう自分の謝罪をしている。


「最初ヨニーは私の目の前で死ぬと言ったけど最期には目隠しして見せないようにしたわ。見せたくなかったのかも。最初の貴方は禁忌魔法を使ったけどそれだけ私を愛してくれていた。ねじ曲がっていたかもしれなかったけど私を大切に思ってしたこと。


 巻き戻りの中で私は王子に何の興味も示さなくなった事…ヨニーの事が好きになった事…二人が幸せになる道を作ろうとした事……でもいつも上手く行かない…何で?」


「まるで僕と幸せになることは神様がダメと言われているようだ」

 私は首を振る。


「そんなこと言わないで?貴方が最初死んだ時私は絶望してしまった。死にたいとすら思ったけど、巻き戻ってもこうして貴方に生きて会えてる事がとても幸せなの!神様がダメと言うなら私が許可するわ!」

 と強く言うと…ヨニーは額にキスし、自分のことを語り始めた。


「僕は…ファーニヴァル男爵家の中で異質な才能を持って産まれました。


 幼少期両親は僕の才能を隠そうと必死だった。兄二人にも気味悪がられていました。

 でも…幼い頃は本当に魔力のコントロールが下手で僕は……暴走したんです」


「え?暴走?」


「そうです…アンネット…。家が焼けたのは…男爵家が潰れたのは…僕の魔力暴走が原因なんです…。


 両親は何かあったら僕を頼むと…モーテンソン侯爵様に頼んでいたのです。父様と貴方の父君は学園時代からの親友でした。身分差を気にせず接してくれたと父様は自慢に思っていました。何度かうちに来たこともありました」


「そんなことがあったの…」


「ええ…男爵家の皆を…家族を殺したのは僕なのに…侯爵様はその罪を黙っていてくれたのです…。実際には魔力暴走は無意識化での事故扱いですし。


 だから貴方とお会いして初めて恋に落ちた時は苦しみました。正直…僕などがとずっと思っていたのです。


 でも一年前にアンネットが僕に想いを告げてキスまでしてそ、その後…一線超えてしまったこと…とても幸せだったけど、幸せになることは許さないともう一人の僕が囁くのです。家族を殺したお前が幸せになどなれるものかと…


 でも…僕は…アンネット…君を愛してしまいました…。ごめんなさい。こんな僕で…」

 とヨニーは涙を流して秘めていた事を喋る。

 私は手を握り返した。


「ヨニー…よく辛いことを話してくれたわ…」


「アンネット…こそ…」

 すると鐘が鳴り授業終了の合図が鳴る。


 私達は保健室を抜け出してヨニーの男子寮の部屋に向かった。とりあえず私は男装し侵入した。

 アルフの映像を奪おうと決めたのだ。あれさえ無ければ弱みは握られない。


 アルフの部屋の前に来て透明な魔法を自分たちにかけた。しばらくして授業の終わったアルフが部屋に入る時一緒に入り、彼にスリープの眠り魔法をかけ制服を弄ると先程の映像魔道具を発見してヨニーはそれを消してしまった。


 仕上げにヨニーはあの…例のヨニーにお熱な後輩ちゃんを呼び出して洗脳して、寝ているアルフの所に来て服を脱ぎ布団に入り込むという所を映像魔道具で記録した。


 そのままそれを寮長や先生に見せた事で騒ぎになり直ぐに会議になり、何が起きたかわからないアルフと後輩ちゃんはきょとんとしつつ弁明していたが、証拠がある限り処分が下されることになったと夕飯の時生徒達の噂になった。


「ヨニー!これで私達の障害は無くなったかしら?」


「恐らくは…それに後はアンネットが元の世界へ戻ってこのまま僕と結ばれていれば解決です!アンネットが話してくれたことできっと後のことは僕が何とか出来ます」

 とヨニーは言ってくれた!


「良かった!ヨニー!」

 と手を握ろうとして食堂なので断られ


「………後でまたお部屋にこっそりお邪魔します」

 と熱っぽい目で言われドキンとした。

 それって…今朝のようなことを意味してるの?


「この一年僕は貴方と密かに愛し合ったけど、今戻ってきたアンネットにとっては2回目になるのでしょう?あ…他の時間軸も合わせたら変わっちゃうかもだけど…16歳の僕とは初めてでしょう?」

 とヨニーはテーブルの下で見えないよう手を握る。

 私はもちろんコクリとうなづいた。


 夕飯が終わると寮に戻り早めに課題を終わらせてお風呂に入り綺麗にしてヨニーを待った。するとヨニーは真夜中に窓をコンコンと叩き浮遊魔法を使いあっさりと入る。透明化していたから見られる心配はない。


「ヨニー…」

 思わず抱きしめるとよしよしされる。


「後のことは僕に任せてください。次は夜会の日に王子とカルロッタ様?を会わせればいいのですね?」


「ええ…でも…もしまた最悪な世界になってたらと思うと戻るのが怖いけど…」


「もう2回も戻ったのですから眠ったら元の世界に帰っちゃうんですね。このアンネットとはまた一年後の朝に会うのですね…。絶対今度こそアンネットを悲しませないような朝になるよう僕は頑張りますから!」

 とヨニーは決意した。


「ヨニー…あの…こんな事を言うのはあれだけど…私のタンスの下着を見たら可愛いものがたくさん揃っていたわ……貴方のために集めたのかしら?ここ毎日私を愛してたんでしょう?なんだか自分に妬けちゃうわ…」

 と言うとヨニーは


「うっ…か、可愛い…アンネット…いつも可愛いけど今日は特別に可愛い!」

 と言われ私も照れる。


「ヨニー…きっと貴方と幸せになれるよう未来を変えてね?貴方に託すわ…」


「ええ、アンネット!もちろん!全力で頑張りましょう!闇落ちもしませんから安心して!」

 とヨニーが私を抱きしめる。やはり一年前と違い少しだけ成長してる。

 お互い初めての時みたいに赤くなり見つめ合いキスを交わす。


「アンネット…好きです。今日のアンネットは特別好き…」


「私もヨニーの事が大好きよ…。愛してるの…」

 ヨニーは15歳とは少し違い、迷いなく私を押し倒し…どっぷり愛してくれた。

 というか、流石…慣れてらっしゃりもうめちゃくちゃテクニシャンになっておる!!一年の成長凄いな!!

 キスだって上手いし、お風呂の時見たけど私の身体にはたくさんヨニーに愛された後もついてた。ニヨニヨしながら上がったけど。

 結果的に言うと最高な気分だった。ほんと上手い!嫌な所が見当たらない。


 情事が終わり眠くなる前にヨニーは名残惜しそうだった。私をしっかりと抱きしめている。


「続きは元の世界でまた…」

 と16歳のヨニーに最後にしっかりキスをして

 今度こそお願いだから幸せな朝来い!

 と願って私は眠りについたのだった。


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