第4話 ひゃい。という返事


「着いたなー、ここが商業の国、イヴァルかぁ。」

「暗くてあまり見えないけど、建物も立派だし、商業国家だけあって儲かってるんだろうね。」

レイは伸びをするウィルドを見て笑いつつも、目の前の立派な建築物の数々に遠目ながらも感動を禁じ得ないでいた。

「そんなにじろじろと他国家を見てないで、私たちの目的はイヴァルで発生する影の排除。そのためにはイヴァルの王様、イヴァル・エルドに会って情報をもらわなきゃ。ほら、行くわよ。」

レイたち三人はアルマ王城を出てから、飛空艇に戻り、支度を整えてすぐにイヴァルへと転移した。人目のない夜のうちにイヴァル国内に入るためである。

レイとウィルドはレリアに引っ張られるような形で城門へと歩いていく。3人はおそろいの黒いローブを着ており、はたから見ると誰が誰を引っ張っているのかは皆目見当もつかない。

レイたちはそのまま城門前へと歩いていくと、城門前で二人の若い男の兵が二人で話しているのが見えた。

レイたちは緊張で出てくる唾を飲み込みながらそれらを無視し、城門をくぐる。

3人は城門をくぐると、すぐに路地裏の方へと走っていった。

「ぷはーっ、ほんっとこの認識疎外の術式が付与してあるローブすっごいよな!」

「見えてないって分かってても緊張するけどね。」

「2人とも静かに、まだ城門から近いんだからあんま声出さないで。ばれちゃうじゃない。」

(ガキンッ!)

3人が呼吸を整え、王城の方へ向かおうとすると明らかに刃物のような金属同士がぶつかるような音が3人の耳に届いた。

3人は目を合わせると音の方へと走り出した。

  


「ふっ、はあっ!」 

「グルグル...」

なんだ、この黒い影のようなものは。いきなり現れたかと思えば腕を刃物のような形に変形して襲い掛かってきて...くっ、果物ナイフでは相手にならんな。

暗闇の中,影と刃を交えているのは、黒の髪を腰あたりまで伸ばし、髪と同色の眼を睨ませ影の斬撃を見事に果物ナイフでいなしているメイド服を着た女性。

「グルァ!」

「ぐっ!しまっ」

影の連撃に果物ナイフをはじかれてしまった彼女は、次に来る衝撃に備え目をつむる。

だが、予想していていた衝撃はいつまでたっても自分のもとへはやってこない。

彼女が恐る恐る目を開けると、そこには頭を翡翠色の太刀で貫通された影の姿、そしてその背後にいる夜には似合わない神秘的な白髪と碧眼の少年が両手で太刀をにぎっている姿があった。

「お怪我はありませんか?」

黒のローブの下から自分に向けられた少年の笑顔に顔を赤くした彼女は、ただこう答える他無かった。

「ひゃ、ひゃい。」 

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