第22話 プロポーズ

「あと3日ぐらいで、王都に到着する。そしたら俺の正体も知ることになるだろう。俺は、リムサフス王国の王子なんだ。国のために、各地を巡って秘宝を集めていた。これを使って国を富ませる。俺たちが秘宝を求めていた理由だ。王都に到着したら、周りの人間が王子として対応する。そうなったら君も、正体を知る。そうなる前に、君には知っておいてほしかった。俺がリムサフス王国の王子であることを」


 予想外な求婚に呆然としていた私に向けて、ヴァルタルが一気に喋った。伝えたい内容がまとまっていないまま、彼は話そうとしたのだろう。同じような内容を何度か繰り返していた。


 ただ、私に伝えたいことが何なのか、よく分かった。


「ヴァルタル様は、リムサフス王国の王子、なのですか」

「うん、そうなんだ。黙っていてゴメン」


 初めて知る事実である。おそらく高貴な人なんだろうと思っていたけれど、まさか王子だったとは。それも予想外だった。


 求婚に続いて予想外なことが連続して、私は何も言えなくなってしまった。それを見て、不安そうな表情を浮かべるヴァルタル。


「それで、ルエラ。君の答えを聞かせてくれないかな?」

「あ、えっと……」

「受け入れては、くれないか?」

「いえ! 私なんかで、よろしいのですか……?」

「もちろん! 君以外の女性を、俺は求めていない。君と結婚したいんだ」

「私はグレムーン王国の貴族で、クライブ王子に婚約破棄されたような女なんです。それでも?」

「問題ない。君と一緒に居た使用人のアネルたちに話は聞いている。とても酷い扱いを受けて、家から追い出されたと」

「あっ」


 話している間に、ギュッと手を握られた。この場からは逃さない、というように。というか、アネルたちは私の素性を彼に話していたのか。知らなかった。


「君の気持ちを教えてくれ」

「……私も、ヴァルタル様と結婚したいです」


 許されるなら、彼と一緒になりたい。そう答えた瞬間、彼の顔が接近してきた。


「よかった! 君も、そう思ってくれていたのか。嬉しいよ!」

「!?」


 キスされた。ヴァルタルは、とても嬉しそうだった。彼の表情を見て、私も嬉しくなった。そのまま、ギュッと身体を抱きしめられる。彼の体温を感じた。


「すまない」

「なにが、ですか?」


 抱きしめられたまま謝られる。彼の美しい顔が、とても近い。私は緊張しながら、何を謝っているのか聞き返した。


「最近、あまり話せてなかった。ルエラに、いつ話そうかタイミングを伺っていて。伝えるのも遅くなって、申し訳ない」

「いえ。ちゃんと伝えてくれたので、私は、とても嬉しいです」


 何だ、そんなことかと安心した。私はすぐに彼を許す。


 まさか、こんなことになるとは思っていなかった。別れを告げられると思っていたのに、結婚することになった。彼と出会ってから、私は幸せなことばかりだった。

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