第17話 初めての外国
「わぁ! ここが、メーウブ帝国なんですね! ずっと先まで見える。すごい!」
初めて訪れた外国。グレムーン王国とは見える景色が全然違った。ずーっと先まで続く草原は、生まれて初めて見る光景だった。私が生まれ育ったグレムーン王国は、森や山が多い。こんなに先まで見渡せるような開けた場所というのを、今までに見たことがなかった。
「ルエラ、馬車から落ちないように気をつけるんだよ」
「あ! も、申し訳ありません。ご忠告を感謝します、ヴァルタル様」
初めて見る光景に興奮して、いつの間にか私は馬車から身を乗り出していた。彼の言う通り、落ちると危ないだろう。ヴァルタルに従って、しっかりと座り直す。
「フフッ。いや、良いんだよ。楽しそうで可愛いじゃないか」
「う……、恥ずかしいです。あまり、笑わないでください……」
「ハハハ! ごめん、ごめん!」
はしゃいでいる姿をバッチリと見られてしまった。こんな子供っぽい反応を見て、呆れられたんじゃないだろうか。恥ずかしくて顔が熱くなる。ヴァルタルは、美しい顔で笑っている。ならば良いのかな、とも思えた。
グレムーン王国から別の国へ移動してきて、ようやく肩の力が抜けた感じがした。今まで無意識のうちに、私は緊張していたらしい。
クライブ王子と別れる最後、国から出て行けと言われていた。その言葉がずっと、脳裏に残っていた。ようやく彼の言う通り、王国から出ていくことが出来た。これで本当に、グレムーン王国の住人ではなくなった。ロウワルノール家の令嬢でもない。
ただの小娘であるルエラとして、新しく生まれ変わったような気分である。
この先、どうなるのか私には分からない。まさか私が、世界各地を巡って旅をするなんて考えたこともなかった。しかし今、想像していなかったような旅をしている。
だからこそ先もきっと、想像していないような何かが起こるだろう。そう考えて、色々なことに備えておかないといけないと思っている。
ただ、ヴァルタルが一緒に居てくれるから安心していた。彼は、とても頼りになる人だったから。
「ん? どうかしたのか?」
「あ、いえ、あの……」
ヴァルタルが、優しく微笑みながら聞いてくる。彼の顔を、チラッと見ていたのがバレてしまった。私は、慌てて答える。
「えっと、次の街に到着するまではあと、どれくらいでしょうか?」
「うーん。あと、もう少しで到着するはずだよ。昼前には街まで辿り着けるはずだ。そこには美味しいメーウブ料理を出す店があるんだ。楽しみにしていると良いよ」
「そうなのですか! それは楽しみです」
私の質問に、丁寧に答えてくれるヴァルタル。初めて外国に来て、メーウブ料理というのを食べるのも初めての経験である。とても楽しみだった。
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