第10話 前途多難※王子視点

 グレムーン王国の様々な問題に対処するため、クライブ王子は現状についての情報を集めるよう部下たちに指示した。集まった各地の状況について再確認する。


「やはり、各地の治安が著しく悪くなっているのか」

「そのようです。税の取り立てが厳しく、住民が悪事を働いています」

「領地を任せている貴族共は、一体何をやっているんだ……」


 部下から報告を受けるクライブ王子。王子は、地方にある領地の管理を任せている貴族たちに指導する手紙を送ったり、資金援助を行ったりしていた。それでも一向に改善しない現状に苛立ちを募らせていく。


「もう一度、各地の領地に立ち入り調査を行うことにする。前回、見落とした部分があるかもしれない。我々が手助けしてやらないと、貴族共は何も出来ないらしい」

「了解しました。スケジュールを組みます」


 実際に現地に赴き、クライブ王子が自ら領地の運営にも口出ししたことがあった。あまり効果は感じられなかったが。


 婚約者が居なくなり状況も変わったので、今なら新しい発見があるかも知れない。そう考えたクライブ王子は、再び各領地の立ち入り調査を行うことに決めた。


「反乱の方は? どうなっている?」

「あまり、よろしくないようです」


 各地の被害、王国軍の消耗、軍事費の浪費などがまとめられた資料の確認をする。被害は大きくなり、王国の資金がどんどん減っていることが分かる。


「軍を任せているヘルムート将軍は、何をやっている?」

「ヘルムート様は、お倒れになったようで……」

「倒れた? 将軍が?」

「はい。つい先日のことです」


 自分の身の回りに居る人たちが、どんどん体調不良を起こしているとクライブ王子は感じた。王だけでなく、将軍まで倒れるとは。


「具合はどうなんだ?」

「かなり悪いようです」

「ふむ」


 かなり悪いのか、と部下の報告を聞いして顎に手を当て考え込む王子。


 グレムーン王国の現状を考えると、体調が悪いからといって休んでいるような暇は無かった。特に将軍は、王国の兵士たちを指揮するという大事な役目を任せている。


 クライブ王子は、ヘルムート将軍をとても頼りにしていた。


「多少無理だったとしても彼に頼るしかないからな。彼の他に頼れる人間も居ない。グレムーン王国の状況もかなり悪いから、彼には頑張ってもらうしかないぞ」

「分かりました。その様に伝えます」

「うん。頼む」


 グレムーン王国をなんとか立て直そうと、クライブ王子は必死に努力する。王子の予想に反して、ルエラが身近に居なくなったことにより更に状況は悪化していった。王子は、その事に気づかないふりを続ける。この先は、きっと良くなると信じて。

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