第1話 事件の予感! 俺はロリコンじゃねぇ!

■隆臣



『吸血鬼事件についての続報です。先月30日から都内で相次いでいる連続殺人事件ですが、今日も被害者が出ました。港区赤坂3丁目の住宅で、首元にアイスピックで刺されたような2つの刺傷がある遺体が発見されました。死因はこれまでと同様失血です。警視庁は目撃証言を募り、MMO――魔法管理機関と協力して犯人の特定に当たっています』


 これは吸血鬼事件と呼ばれる殺人事件で、ミンチ事件という惨殺事件と共に都民の不安をあおっている事件である。

 港区港南にあるタワーマンションの最上階の一室で、俺こと品川しながわ隆臣たかおみはそんなニュースをぼんやり眺めていた。



りんとジョーカー、やけに遅いな。エース、2人からLINEきたか?」


「ううん。まだだよ」



 俺の相棒のエースというロリっ子は首を横に振った。それに伴って紺色の髪の毛がふさふさと揺れる。瞳は夜空のように美しく見とれてしまうほどだ。目鼻立ちがはっきりしていてとてもかわいらしい顔をしている。絹のようにきめ細やかな肌はすべすべで気持ちいい。



「もう6時半過ぎてるのに……変な事件に巻き込まれてないよな?」


「ジョーカーがいるし、それは大丈夫だと思うんだけど、ちょっぴり心配だね」



 俺の疑問にエースはそう答えた。

 するとちょうど、俺のスマホに凛から電話がかかってきた。応答する。



「もしもし凛?」


『大変です!』



 かわいらしくも切羽詰まった声が聞こえてきた。それに混じって救急車のサイレン音も電話越しに聞こえてくる。



「まだ秋葉原か?」


『はい、神社なんですが……燃えてるんです?』


「ん? 萌えてる? ああ、ついに神社が萌えたのか! やるなぁ神田明神」


『何を言ってるんですか!? 大炎上なんですよ!』


「誰のツイッター?」


『ツイッターじゃありません! からかわないでください! こっちは真剣に言ってるんですっ!』



 電話の主――凛の高い声のせいで耳がキーンとする。



「いや、別にからかってるわけじゃ……」


『いいですか? もう一度言いますよ! 神田明神が炎上しているんです!』


「だから萌えてるんだろ? ……え? まさかそれ草冠くさかんむりの萌えるじゃなくて、まさか火偏ひへんの燃えるなのか!?」


『何と勘違いしていたんですか! バカなんですか? バカなんですね! もうっ!』



 凛はプンスカぷんぷんだ。



「バカで悪かったな! でも無事で本当によかった。連絡来なかったから心配してたんだよ」


『ごめんなさい。もう少し早く連絡できればよかったんですが……』


「大丈夫だよ。もうご飯できてるから早く帰っておいで」


『はい、今から帰りますっ!』



■凛



 雲1つない空に月光が降り注ぐ夜。普段なら神社で巫女装束から私服に着替えて帰宅するのですが、神社の本殿は全焼してしまいましたので、今日はこのまま帰らざるを得ません。

 隆臣に電話したあと、わたしとジョーカーは2人そろって巫女装束のまま秋葉原駅へ向かいます。ちょっと恥ずかしいです。

 隣を歩くのはジョーカー。わたしのたった2人の家族のうちの1人。



「ねぇ凛、さっきから視線が気持ち悪いんだけど」


「たしかにすごいジロジロ見られている気が……」



 ねっとりとまとわりつくような視線が向けられています! 嫌な感じがです!

 するとそのとき、



「きゃああ! ひったくりよ!」



 女性の声が聞こえてきました。声の方向を見てみると、おばあさんが自転車に乗った覆面男さんにカバンを奪われているところでした。



「行こう、ジョーカー!」


「ええ」



 秋葉原で引ったくり? 最近は物騒過ぎませんか?

 わたしとジョーカーは頷き合い、自転車で走り去る男の人を捕まえるべく駆け出しました。

 わたしとジョーカーは覆面男さんの目の前に立ちはだかり、



「先には行かせません! おばあさんにカバンを返してください!」



 手を横に大きく広げます。



「危ねぇ! そこをどけろ!」



 男の人はそう言いつつも自転車をこぎ続けます。わたしたちが避けるとでも思っているのでしょうか。ですがわたしたちは避けません。


「ジョーカー、よろしく」


「任せて」


 ジョーカーは1歩前へ踏み出します。そして覆面男さんに右手をかざすと、


「うわぁあああ!」


 突然仮面男さんが自転車ごと横転しました。自転車と男の人は滑ってわたしたちの前で止まります。

 覆面男さんは立ち上がろうとしますが、まるでとっても重たい何かにのしかかられたように立ち上がることができません。



「くッ! なんだこれ! お、お前らの仕業か!」



 覆面男さんは息苦しそうに言います。



「警察が来るまで大人しくしてなさい」



 ジョーカーはそう言って覆面男さんの背中に座りました。覆面男さんからしたら大変な屈辱です。ジョーカーは少し加虐嗜好サディストさんだと思います。




 しばらくして警察さんがやって来て、覆面男さんの身柄を留置場まで送ってくれました。

 わたしとジョーカーはとっても褒められました。とってもうれしいですっ!



 To be continued!⇒

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