第15話「光輝く闇と燃え盛る氷のダンス」

嗚呼、人を殺したい…

嗚呼、人を殺したい…

嗚呼、理由わけもなく人を殺したい…


考えるではなく、思うでもなく、ふとそんな衝動が芽生えた朝の散歩道。

私は人を殺した。

通りすがりの若いカップルを一人ずつ順番に殺した。

手始めに男をくびり殺し、死んだ男のはらわたを爪の先でえぐり出してそれをごみを漁っているカラスに投げつけた。

その様子を見ていた女は叫びながらその場で立ち尽くしていた。

逃げようとしない女に私は男の体内から抉り出したはらわたを投げつけた。

女は叫び、その場で腰を抜かした。

私はその女の喉奥に手を捩じ込んだ。

手を奥へ捩じ込む程に女は静かになった。

中指の先端からゆっくりと指を挿し込み、てのひらから手首まで入った辺りで一気に前腕の中程まで捩じ込むと、女の歯が私の肉体からだを傷つけた。


嗚呼、私はいま生きている…

嗚呼、私はまだ生きている…

嗚呼、私は理由わけがあってここに生きている…


考えるではなく、思うのでもなく、そう感じた。

傍に転がる生々なまなましく止まった男のたいと、眼前にひざまずなまめかしく動いている女のたいが私に生きている理由わけを与えた。


嗚呼、理由わけあって人を殺させたい…

嗚呼、人を殺すという感覚を分けあうために人を殺させたい…


これは私の願いなのかも知れない。

これは誰かの願いなのかも知れない。

私は私自身と私以外の誰かの為に人を殺させてあげたい。

のではなく、


嗚呼、これは奉仕なのだ…

嗚呼、これは悲願なのだ…

嗚呼、これは愛なのだ…


私は指先に感じる女の体内のぬくもりが堪らなく愛おしくなり、ふとそんな言葉が頭に浮かんだ。

そして私は通りすがりの子供に殺された。


嗚呼、私は私を殺せてあげられた…

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