人造人間〈ホムンクルス〉の身体と完全転生蘇生術

  魔王グランデウス討伐際死んだはずの私が目覚めたと思ったら、あれから60年経ったと思ったら、弟子のリアンナは大人な女性へと成長し、そして何故か私は子供の姿へと退化し……訳の分からない状況に困惑する私だったが、この状況を分かる人物は1人しかいない。私は目の前で嬉しそうに私に話しかけてほしいのを待ってるリアンナに尋ねた。


「おい。リアンナ。この身体はどういう事だ?」


私がそう尋ねたらリアンナは待ってましたと言わんばかりにスッと立ち上がり


「はい!師匠のその身体は、師匠の魂を繋ぐ肉体として、私が数十年もの歳月をかけて創り上げた人造人間ホムンクルスですッ!!」


  まるで褒めてと言わないばかりに、幻の尻尾をブンブンと振ってそう答えるリアンナ。

  いや、まぁ……なんとなく人造人間ホムンクルスだと分かっていた。私はあの時死んだはずなんだ。なのに肉体を持って目を覚ましている。1番考えられる可能性は別人に転生した可能性だが、それだけ以前の記憶は全て失われて転生する。それが世の理といわれている。

  

  が、今の私は生前の記憶を全て覚えている。となれば、考えられる可能性は人造人間ホムンクルスなどの肉体に、魂を定着させる完全転生蘇生術だ。

  まだ魔法の研究で引きこもっていた頃に、私はこの魔法術の理論を完成させたが、それを実行する事はなかった。この術を使えば生前の記憶を有したまま転生蘇生が可能だが、莫大な対価を必要とする上、人造人間ホムンクルスを錬金魔法で創造するのも難しい。

  人造人間ホムンクルスを創造する事自体は難しい作業ではないのだが、魂が定着するにはそれだけ魂に合う人造人間ホムンクルスを創造しなければならない。ほんの少しでも魂と定着しない肉体だと、それだけで魂の定着は失敗する。

  失敗すれば肉体が魂から弾かれるだけならいい方で、最悪の場合魂も記憶も失った化け物へと変貌してしまう事もある。しかも、魂を定着出来る程の人造人間ホムンクルスを創造出来たとしても、魂の定着が成功する確率は何億分の1の確率である上、代償とする対価も高くつく。

  私はそこまでしてまで転生蘇生させたい者はいなかったので、理論だけ完成させ実行する事はなかったのだが、まさかリアンナがその理論を実行するとは……


  色々と聞きたい事はあるが、とりあえず今はこの小さくなった身体について聞く事にした。


「で、何で私の身体が幼い姿に変わっているんだ?」


「はい!師匠の幼い姿が見たいと思い!全力で師匠の幼い姿を創造して創りました!!」


「って!?たったそれだけの理由!!?」


まさか、そんな理由で創った人造人間ホムンクルスが魂の定着に成功するとは……あまりにも馬鹿げた理由で人造人間ホムンクルスの創造に成功させた弟子に呆れるしかない。


「はぁ……まぁ、いい。それで……そろそろ1番肝心な事を聞くが、お前は私が理論だけ完成させた完全転生蘇生術を実行に移した。間違いないな?」


「はい!師匠の部屋を掃除していた時に偶然に見つけて!これしかないって!」


「……一応危険な術である事はしっかりと記載していたはずだが?」


「師匠を蘇らせる為ならどんな危険な作業でもやり遂げてみせます!!」


すごく目を輝かせてそう答えるリアンナに頭痛をして思わず額を抑える。

  両親を亡くした事もあってか、妙に私に執着しる気はあったが、まさか危険を承知の上で迷わず危険な術に挑もうとするとは……それだけ慕われるのは嬉しくもあるのだが、リアンナが危険な目にあってまで私を蘇らせてほしくはない。ここは一つそこをきちんと説教すべきなのだろうが、まだ私は肝心な部分を聞けてない。


「……それで、完全転生蘇生術には、莫大な対価という名の代償を必要とするはずだが……リアンナ。お前は一体何を失ったんだ?」


私が真剣な表情でそう尋ねると、リアンナは途端に表情を曇らせ


「はい……それはもう……大切な物を失ってしまいました……」

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