第21話色々と出来る事から

石神井城に戻り何故か側室が3人に増えた翌日、鎧櫃の謎を解く為に朝一で蓋を開け中を確認する。


「うわ~、一日経つと中に入ってた物が補充されるんだ…、便利と言えば便利だけど、衣服と饅頭に最中、そしてキャリーバッグとリュック型ビジネスバッグ、を量産されてもな…パソコンとスマホは補充されてないし、何が基準か分からん!」

朝起きて自分しかいない部屋で鎧櫃の中を見ながらそう呟く。


この時代に中古のキャリーバッグやビジネスバッグを流通させても流行るとは思えないし、衣類は…まあ裕福な人以外はかなり質素な身なりだったから売れるか。

饅頭と最中は好評だから色々と役に立ちそうだけど毎日同じ服を洗濯させられる人が可哀そうになってくるあ…。


そう思いながらも庭にある井戸へ向かい、水を汲んで顔を洗う。

さて今日からは宗泰君に頼んでおいた農機具の試作状況の確認をしよう。


朝食の後、宗泰君が持って来た農具を確認する。

鉄を使った千歯扱に馬鍬まぐわと田植え綱は出来ていたけど、唐箕とうみと手押し除草機、人力刈取機、牛に引かせる耕運機はまだ出来ていなかった。

どうやら複雑な構造の物は暫く時間がかかりそうとの事だった。

ですよね~、この時代には無いものだし…。


そして農機具とは別に宗泰君に頼んでおいた豊嶋家直轄地の農家へ新しい稲作の導入という事で、ネットで調べた塩水選をし、苗を作った後で田んぼに田植え綱を使用して正条植えの導入状況を聞くと、農村の有力者の人が手間がかかると言って難色を示していたものの収穫量が減ったらその分税は下げる事を伝えたら渋々了承したとの事で、現在殆どの農家は塩水選してから育てた苗を植えている状況とのことだった。

また、糞尿は直接田畑に撒かず堆肥にして使用するよう堆肥の作り方もちゃんと伝えてくれたとの事だった。


それにしても一門衆の白子さんが新しい稲作に興味を持っていて自身の領地でも導入するって言って宗泰君に色々と聞いてきたらしい。

白子さんって戦いより内政向きなのかな?

もしそうだとしたら今後、農政改革を担って貰おう。


また、飢饉対策としては米以外で主食となる物の導入だけど、今の所は蕎麦と麦の作付けをおこなう事にした。

麦や粟、稗はそこそこ育ててるみたいだけど蕎麦はあまり育てて居ないみたいなので積極的に栽培をするようにしよう。

あとは菜の花を育てたいけど、これは意図的に栽培をするよりも川辺に種を撒いて自生させよう。

油はこの時代高級品みたいだし菜種油が安定的に確保出来たら収入源になるし。

そうだ、椿も沢山植えて椿油の生産もしよう!!


それにしても、日本だと見渡す限り住宅街だった場所も、この時代は雑木林だったり丘陵になってたりとある意味手つかずの状態だから、開墾して農地を増やして収穫量を増やさないとな。

うん、意外と人は居るんだよね。

食生活の影響か、子供の死亡率が高いけど、殆どの農家は結構大家族だったりする。

開墾して農地を増やせば次男や三男など家を継げない人に与えれば人手不足にはならないし、あぶれた人も足軽として雇用すれば一石二鳥だったりする。


その為には開墾をする為の道具と農作業を軽減する道具を作って広めないとな…。


「因みに、雌馬集めは進んでる」

「はい、わが家が管理する馬に加え一門衆の方々からも黒帝に種付けさせるならと多くの雌馬が集まっております」


「やっぱり黒帝と他の馬をかけ合わせれば黒帝と同じとはいかなくても普通の馬より優秀な馬が産まれると期待してるってとこかな?」

「左様でございます。 それに名馬を持つのは武士の誉れでもございますので」


「まあそうだよね。 良い馬に乗ってたら拍が付くもんね。 それで養鶏用のニワトリはどうなった?」

「それにつきまして数はまだ揃っておりませんが順次増やすように手配をしております。 それにしてもニワトリを食すとは…」


「いや宗泰君も狩った野鳥を食べるでしょ? それと同じだよ。 ただ狩に行かなくても食べれるようになるし、卵も栄養豊富だし、肉も燻製とかにしておけば保存食にもなるから重要だよ。 鶏糞に手を加えればいずれ必要になる物も生産できるし」


うん、大規模に養鶏をすれば大量の鶏糞が出る。

肥料として使用も出来るけど、発酵と熟成をさせて硝石を抽出すれば黒色火薬の原料になるし。

早く鉄砲生産出来ないかな…。


無理だな…。

まずは農業改革が先だし、そもそも農機具を作るのに鉄が必要だから鉄砲作る余裕が無い。

てか鍛冶職人さんも農機具作りで忙しいだろうし。

手書きの設計図を渡して数人の鍛冶師さんに鉄砲制作を始めて貰ってるけど完成には時間かかるだろうな…。


ただ養鶏が軌道に乗れば食用にした鳥の羽を集めて羽毛布団が出来る。

絶対に冬は寒そうだし、布団も普通に布切れだけの時代だもんね。

綿花も栽培したいな…。


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※補足

正条植えが導入されたのは明治時代からで、それまでは種籾を直接田んぼに撒いていたり、苗を育てても乱雑に植えていたそうです。

しかし正条植えが導入されると風通しや日当たりなどが良くなり、また雑草除去などの手間が減り収穫量が飛躍的に増えました。

尚、肥料も堆肥などでは無く、糞尿を直接畑にまいていた為に根腐れを起こしたりする弊害もあったそうです。


綿花

綿花の栽培が本格化したのは江戸時代初期頃からと言われていおり、それまでは一部地域で栽培されてはいたものの大半は輸入に頼っていた為、綿は高級品の一つでした。

何で需要があるのに国内で大規模栽培をしなかったのでしょうか…。

疑問です。

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