第15話太田道灌が家臣になった

「我ら一同、鳳凰院宗麟様の旗下に加わりお仕えさせて頂きます」

太田道灌さんをはじめ上杉朝昌さん、三浦高救さん、そしてその重臣の人達が一斉に平伏する。


昨晩は3人とその重臣8名で夜遅くまで話し合ったらしく、今朝主殿に来た時には皆さん目の下にクマが出来ていた。

見張りの兵の話だと空が白みだす頃まで議論していたらしい。


そして、道灌さん達は朝、江戸城の主殿で挨拶もそこそこに幾つかの条件を提示し、特に問題は無いのでOKしたら家臣になるとの事だった。


まあ条件って言っても、道灌さんに関しては家臣とその家族を一旦弟の太田資忠さんが居る川越城に避難させる為に暫くは囚われの身と言う扱いにして欲しいとの事、元服し既に城主となっている息子さんをはじめ一門衆達の助命、道灌さんからは自分の家臣に加わるよう秘密裏に書状を書いて送ってくけど、拒否をした場合でも極力殺さないで欲しいとの事だった。


上杉朝昌さんが出した条件は、上杉定正が従わない場合は当主の座から下ろし、自分を扇谷上杉家の当主として欲しいとの事。

本来なら領土の問題などあるけど、所領は直臣を養う分を除き自分に割譲しその後関東が落ち着いたら何処かに相応の所領を貰えれば良いとの事だったので、これも問題ないのでOKした。


因みに三浦高救さんに関しては、少し厄介だったけど何とかなりそうだからOKした。

三浦さん、実は養子で三浦家の当主ではあるものの、実権は義父で相模守護、三浦時高が握っている為、暫くは自分の家臣になったことを伏せ、義父を説得したいとの事、あとは相模の国主にして欲しいとの事だった。

相模の国主って…、まあ一応関東を平定したらとの事だし、その為には三浦氏が総力を挙げて戦うって言うから、これも特に問題は無いからOKした。


確か三浦時高ってネット情報だと扇谷上杉家に忠誠を誓ってて道灌さんが暗殺されて怒った三浦高救さんとその子、義同君を追放するぐらい扇谷上杉家側なんだよね…。

本人曰く、最悪義父には隠居して出家して貰うとの事だけど三浦家が辿る滅びの道が書かれたメモを見て三浦家を守る為、扇谷上杉家を見限ると言っていた。


相模国を確保しておかないと上野、下野の扇谷上杉家と相模の三浦家、大森家と挟撃される可能性が高く、相模は早めに抑えて後顧の憂いを絶つ為に、七沢城が居城の上杉さんと、三崎城が居城の三浦さんには相模にお帰り頂くことにした。


そして道灌さんとその家臣が臣下に加わったことで今回の江戸城攻略戦は完了したものの、いつまでも全軍がここに居るわけにもいかないので、江戸城には泰経さんが残り、宗泰君は石神井城へ、他の一門衆は赤塚さんを除きそれぞれの所領に戻り、赤塚さんは千葉さんを伴って赤塚城の受け取りに行った。


実の所、論功行賞では赤塚城を赤塚さんに与え、他の人は落ち着いてからと提案をしたら、絶対に赤塚さんだけ! と紛糾するかと思ってたけど、元々赤塚城が出来る前はあの一帯は赤塚家が治めて居た事もあって、現在本家から与えられている所領を返上し赤塚城に移るとよう伝えると、一門衆の人達は特に異議を挟まなかった。

実際問題として城持ちになって所領も今より増えるけど、ある意味、対扇谷上杉家最前線に近い城だしね…。


ただ、赤塚さんの件は問題なく皆さん納得してくれたけど、一門衆や戦功を挙げた人達に軍忠状を書く羽目になった…。

持って来たスマホで検索したら軍忠状ってのは、後日の恩賞のため、参陣や軍功の事実を証する文書らしく主人名にて発給する物との事、泰経さんに書いて貰うつもりだたのに、自分が書く物だと言われてしまった。

字が綺麗じゃないからあまり書きたくないんだよね…。

しかも筆で書かないといけないし、誰か代筆してくれないかな? っと思ってたら代筆してくれる人を泰経さんが連れてきてくれた。

どうやら自分は最後に署名と花押を書くだけでいいらしい。

花押なんて考えて無いから泰経さんに頼んで急いでハンコ作ってもらおう。


補足------------------

※補足

上杉朝昌

道灌の主君上杉定正の弟で七沢城(厚木市)の城主と言われています。


三浦高救

道灌の主君上杉定正の兄で相模国守護・三浦時高の養子となり三崎城の城主と言われています。

兄なのに上杉家の家督を継げなかったのは長男が家督を継ぐため有力な家臣である三浦家に養子として出された為、長男が討ち死に後も上杉家に復帰できず三浦家を継いだと言われています。

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