第17話 暗黒闘気

あのシャンタルがそこまでに恐れる暗黒闘気というものに興味が湧いたが、どうやらその力が強大なので近づけば検知できるから情報屋の話は途中でも良かったということであろう。


「とにかく、その暗黒闘気を持っているのと持っていないとでは雲泥の差がある。奴1人で2万の兵の力を持っていると思っても差し支えはないだろう!」

「それほどまでだと言うのか?」

「ママが言っていることは間違いないことですわ」


今まで一言もしゃべらなかったフランが横から話しかけてきた。


「フラン!まだしゃべるな!」

「いいのよママ。いつの日かしゃべる日が来るのだから」

「・・・・」


話の内容には興味があったが、とにかく一旦この小屋から離れることを提案した。

これにはシャンタルもそのことに気づかないほどその話に集中していたため、本人も驚いて提案に即時に対応した。


「話は歩きながらかどこか安全な場所に着いてからにしよう」

「賛成だ」

「うん」


皆が賛成して小屋を出発しようとドアを開けた。

そこには3人の黒づくめの鎧を身に纏った剣士がいた。


「ちっ!遅かったか」


シャンタルの言葉でこいつらが何者かがすぐに理解できた。

帝国の斥候であるのは間違いないようである。


「ふふふふふ!本当にブタ野郎がいるじゃねぇか!」

「ひひひひひ!こいつを殺さずに連れていけば大将軍様からご褒美がもらえるらしいぜ!」

「ほほほほほ!では私がその手柄最初にいただきましょうか?」


その中でも一番背の高い男が俺に向かって襲い掛かってきた。

その男は長身に見合った刀を使い攻撃を仕掛けてきた。

その速さはその図体とは程遠くかなり早い。

ただの斥候かと思いきや只者ではない。

それだけ大将軍が俺を捕えようとしているということか?


「ここでやられるわけにはいかない!」

「ここ一週間の成果を試してみるか!」


そう言って俺は、細身の剣を抜き向かっていった。

相手もかなりの腕前ではあったが、防げないほどではなかった。

何合か打ち合う間に徐々にではあるが、こちらが押してき始めていた。


「ふふふふふ!大丈夫ですか?」

「ひひひひひ!手伝ってやろうか?」


残りの二人は日和見を決め込んでいる。ひとまず1対3よりはかなりマシな状況であるといえる。

今のうちにこの長身を一気に片付け・・・。


「ほほほほほ!お前らの目は節穴か?私はこれっぽっちも押されてなどいませんよ」

「!?」


俺は最初、負け惜しみで放った言葉であると思っていたが、実際は違っていた。

今度は逆に俺の方が押され始めたのである。


「ほほほほほ!今までの威勢はどこへ行ったのですか?このままではうっかり殺してしまいますよ!」

「くっ!」


この細身で重量の鎧を身に着けこれだけの速い攻撃をしかけて息が上がっていない。

あり得なかった。通常の人間であればこんなことはありえない!

すると、シャンタルが横からその男を吹き飛ばした。


「ほほほほほ!横やりをするとはあなたも随分と無粋な女性ですね?」

「何を言ってやがる。てめぇら黒の騎士団ダイタロスだな?」


ダイタロス?いったい何のことやら全くわからなかった。


「黒の騎士団は大将軍直々の隊の名称ですわ」

「彼らの強さは暗黒闘気を多少なりとも使えるところにあります」


じゃあ、この男が最初のうち押されたふりをして俺の実力を見計らっていたと言うことになるのか?

それとも途中から押された時から暗黒闘気とやらを使用した?

とにかく、シャンタルの冷や汗を見るに相当ヤバイ状態であるのは事実なのであろう!!


「では我らがダイタロスだとわかってどうなされるおつもりですか?」

「まさか、俺たちにお前たち3人がかりで何とかなるとでも思っているのであればおめでたいやつらだな」

「まあ、とにかくブタ野郎は捕獲。人間の女は傷つけるな。他のは殺せと言われているのでそのまま我らは忠実にことを成すだけだけどな」

「もし、降伏して頂けたらこちらもありがたいのですがね。楽なので」

「ふふふふふ!」

「ひひひひひ!」

「ほほほほほ!」


こいつらの不敵な笑みがさらに俺の怒りを助長させていた。

しかし、こいつらのこの余裕は奴らとの力の差であることは明白だ。

おそらくシャンタルが本気を出しても太刀打ちできないほどの強さを秘めているのであろう。


しかし、疑問なのは何故俺を捕獲しようとしているかだ!大将軍というやつには一回も絡んでいないのは間違いないし、覚えもない。

前世の記憶でもそのような者はいない。

そんなことを対峙しながら相手のことを考えていると、フランが耳打ちしてきた。


「私が一瞬だけスキをつくります。その時に全力で逃げてください」

「なんか自分だけ残るような言い方だな?」

「あの人は私のことはおそらく傷つけることはありません!降伏さえすれば」

「特にフランを担いで逃げることは容易いが」

「残念ながらそれは無理だと思います」

「・・・・」


今までにない神妙な顔つきに言い返す言葉もなく、いい打開策も浮かんできていないこの状況ではフランの言うことを聞くしかないのか?


「ママ、元気でね」


シャンタルは何も言い返すことができず、苦虫を2、3匹かみ砕くような苦痛の表情を見せるだけだった。


(第18話につづく)

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