第43話 ガレスちゃんと幽霊屋敷7

「さあ、アドニス。目の前の連中を殺しなさい。伝染病によって理不尽に自分の命と、最愛の娘を失った怨嗟をもつ魂と、かつてBランクの冒険者だった魔術師の遺骨を使ったデミリッチよ。あなた達の手におえるかしら」

「セインさん、目の前の敵があきらかにやばいんですが……」

「違う魂と違う肉体を混ぜ合わせる事も出来るのかよ!?」



 できるんだろうな、あいつの『死者のささやき』ならば……デミリッチとなったレイスの恨みを俺達を対象に誘導したのだ。だけど、しかし、異なる肉体のスキルを使用することはできるのだろうか? その質問の解答はデミリッチの魔術によって解決された。



『Uuuuuuuuuuuuuuuuu!!!!!』

「きゃあ!!」

「うおおおおお」



 リッチの手から炎の玉が飛んできて俺達は咄嗟に物陰に隠れる。ルフェイのそれよりずっと強力な魔力で作られた火が爆音をたてた。



「うーん、失敗ね……あんたらへの恨みが強くなりすぎて、スキルを使っても意思疎通が難しいわ。でもまあ、あなた達の相手は十分でしょう。さあ、アドニス、そいつらを殺せばあなたの大事なロザリーに会えるわよ」

「待て、ルフェイ!!どこへいくつもりだ」

「巻き込まれたら困るもの……じゃあね、短い再会だったわね」



 俺の質問ににやりと嫌味な笑みを残して彼女は屋敷の奥へと進んでいった。追いかけようにも、リッチの魔術が飛んできやがる。他のアンデット達が巻き込まれているうえに屋敷に火が燃え移っているがお構いなしの様だ。



「セインさんどうしましょう? これじゃあ近づけないです……しかも、火が回ってきて……」

「何とか隙を作らないとまずいな……」



 俺は必死にどうしようか考える。大きな隙ができれば影縛りで動きを止める事ができそうなんだが……姿を隠している家具も燃え盛っており、そろそろ限界だ。かといって正面突破できるような相手ではないだろう。それにしてもアドニスもロザリーもどこかで聞いたことのある名前なんだよな。



「アドニスってさっきの絵に書いてあった名前ですよね、それにロザリーも……」

「そうだな……おそらく、ルフェイはここにいたアドニスのレイスをそそのかしてああしたんだろうな」



 生への憎しみか……伝染病で死んだ彼の気持ちなんて俺にはわからない。だけど、家族を失った気持ちならわかる。だったら……



「卑怯な手だけど思いついたぞ、ガレスちゃん、ついてきてくれ」

「え? はい。わかりました」



 俺は石を投げ一瞬デミリッチの視線がいった隙に物陰から出ると同時に来た道を戻る。まだ彼に自我があるならきっと……

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