第41話 ガレスちゃんと幽霊屋敷5
俺達は屋敷へと入り警戒しながら前へ進む。しかし、ガレスちゃんがムチャクチャ震えながら俺を盾にするように進んでいるのだが、大丈夫だろうか?
先ほど不気味な叫び声を聞いたせいかわからないが、屋敷全体が不気味な雰囲気に包まれている気がする。薄暗い中を進んでいくと浮浪者だろうか? 誰かが倒れているのが見える。
「大丈夫ですか?」
「待った、ガレスちゃん!!」
「え?」
俺の制止が間に合ったおかげか、ガレスちゃんは足を止めると同時に倒れていた人間がガレスちゃんに襲い掛かってきた。起き上がった人物の体は半分以上が腐敗している。ゾンビだ。
一瞬息をのむガレスちゃんだったが、即座に反撃にうつると流れるような動作でゾンビを貫いた。ゾンビ自体は、動きは遅く不意さえうたれなければそこまで厄介な敵ではないのだ。貫かれたゾンビはそのまま傷口から湯気をだして、見る見るうちに浄化されていく。あれ? 俺はガレスちゃんの槍に聖水をかけてたっけ? なんで浄化されているんだろうか?
「初めて見ましたがびっくりしました、あんなふうに消えるんですね」
「いや……普通は浄化しないとああはならないんだが……ガレスちゃん槍に聖水をかけた?」
「いえ、結構聖水って高いですし、セインさんのアドバイス通りレイスが襲ってきた時用にとっておいてありますが……」
俺の言葉にきょとんとした表情で返事をする。うーん、一体どうしたのだろうか、彼女の持っている槍も普通の槍っぽいしな。まあいい、それよりもだ。問題はここにゾンビがいた事である。依頼内容ではレイスがいるかもしれないとのことだったのだが……あの浮浪者がレイスに殺されたとしてもアンデットモンスターになったりはしないんだよな。そうなると、死霊魔術を使える奴がいるかもしれない。
ちなみに死霊魔術を使う冒険者や研究者はちょいちょいいたりする。言い方はあれだが死体を使う研究は容認されているので、どこかを拠点として研究をしているやつもいるし、ダンジョンで倒した魔物をアンデットとして使役したりする冒険者もいる。
とはいえ、そういうやつらはも、死霊魔術をメインをサポートスキルとして使っているだけなので、人のいないこの屋敷にいるんは研究をしている死霊魔術士がだろう。となるとただのレイス退治ではなくなりそうだ。
「ガレスちゃん、この屋敷思ったよりもやばいかもしれない。もう少し進んでみるが、危険を感じたらすぐに逃げるぞ」
「わかりました……でも、それだと依頼は……」
「ゾンビがいたって言う報告だけでも十分だよ。とりあえず奥に行ってみるか」
そして俺達は屋敷の奥へ入っていく。いくつか部屋を開けてみたが、盗賊か何かに荒らされたているため特に目ぼしいものはなかった。腐りかけた木製の家具が放置されているくらいだ。
「ここにも住んでいた人はいたんですよね……」
「ああ、流行り病でなくなったみたいだな」
荒らされた部屋の中に飾ってある肖像画を見ながらガレスちゃんが悲しそうに言った。家族なのだろう肖像画の中では親子らしき、きっちりした格好の男と、可愛らしいドレスを着た幼女が微笑んでいた。アドニスとロザリーと書いてある。二人の名前だろうか?
「私にも兄がいるんですよ。城で騎士をやっているんです。立派な人なんですが結構頑固な方でして……私が冒険者になりたいって言った時もすごい反対されちゃいまして、お前みたいなやつは戦いに向いていないって言われてカチンときて喧嘩別れをしてそれっきりなんですよね……」
「じゃあ、ガレスちゃんはお兄さんを見返すために意地でも冒険者になろうとしたのか?」
「それもあります……でも、きっかけは三年ほど前でしょうか、私たちの居住区に封印されていたゴーレムが現れたんです。私達家族はちょうど近くにいて、ああ、殺されるって思ったんですよ。だけど、そのゴーレムを倒してくれた冒険者がいて、その人にあこがれたんです。私もいつの日か誰かを救いたいなったいなって……じっさいはレイスにすらビビっている有様ですけどね」
そう言って彼女は照れくさそうに笑った。だけど、その時の憧れを追い続けている彼女を俺はかっこ悪いなんて思わなかった。むしろ尊敬に値すると思う。
「ガレスちゃんの憧れの人にいつか会えるといいな」
「いえ……実はもう会ってるんですよ。でも、思ったより普通の人でした。そして思った以上に優しい人でした」
「それってまさか……」
「はい、エレインさんです。だからあの人が頑張れって応援してくれてすごい嬉しかったんです。私の事は覚えていませんでしたが……」
その言葉に俺とガレスちゃんは笑いあう。エレインさんらしいと思う。そんな和やかな雰囲気を壊すかのように再び、不気味な叫び声が響いた。
『Uuuuuuuuuuuuuuuuu!!!!!』
「きゃああああああ」
俺とガレスちゃんは顔を見合わせて、声の聞こえてきた部屋へ向かい中を覗く。そこには一体のレイスと一人の魔術師がいた。
「ええ、あなたが私の命令を聞いてくれれば、娘もレイスにしてあげる。そうすればずっと一緒にいれるわよ」
「ルフェイ……なんでこんなところに……」
魔術師の正体に俺は驚きを隠せなかった。かつて仲間だった人物なのだから……
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