矢島健の憂鬱2

 予鈴がなり、1限の数学が始まった。

ノートを取っているが、先生の話し方が独特過ぎる。


 御年60歳のメガネをかけたてっぺんはげのベテラン先生らしいが、

いいですか~↑皆さん~↑、って伸ばしながら語尾をあげるな、

聞きづらいな。


 それに、自分語りアンド数学の雑学がやたら長い。

なんだよ、その公式、教科書に書いてないでしょうが。


 先生的に数学は素晴らしい学問で語りたくなるのはわかる。

これはあれだ、ヲタクが自分の好きな話をする時同じように自分の

世界ザ・ワールドの発動している時に近い。そんな時間の世界に

入門できるのは同じスタンドのタイプなだけみたいな展開は

要らないの。


 なので大半の生徒的には退屈な時間なのだ。

俺の席は後ろの扉の近くから2つ目の席なのでその状況がよくわかる。


 見ていると内職しているやつや友達同士で会話しているやつらもいる。

俺は適当に聞いていようかな。


 それにしても模試があるなんて、私聞いてないよ。いや、学校の掲示板を

見てないだけか。


 俺がそもそもこの学校を選んだのは家から近いからだ。高校でとくに

やりたいことがなかった俺は家から自転車で15分くらいのこの

学校を受けようと考えていた。


 2限の現国はそつなくこなし昼休み、中庭の段差に座りながら一人

ぼっち飯をしている。皆さん、ぼっち飯は迷信じゃありません、

実在していますよ。


 この学校は上から見下ろすとH型になっていて、丁度すきまのところが中庭に

なっている。日陰になっているので休むには最適だ。


 以前、学食で食事をしていたら俺の周りだけ人がいなかった。おいおい、

心の壁張っていないのになんだよこれ。でもはじめからこうだったわけではない。


 ある4月の時、俺は寝坊してしまい、急いで着替えをして

駅についてからはこれでもかと猛ダッシュして学校まで向かった。

慌てて勢い良く教室の扉を開けると目がくすんだ息の荒いゾンビが

いたらしい。


 それで授業をしていた女の先生をビビらせしまった。

これはきっかけにすぎないのだが、特に俺の目とぼっとした髪の

毛が悪いで合っていため、何度か周りをビビらせことがあった。


 結果、俺の周りにあまり人がよって来なくなった。

なんだかいたたまれないので、ぼっち飯をするようになった。


 きょうはたまごサンドと雪印のコーヒー牛乳だ。

コーヒー牛乳は疲れた頭に最適な飲みだな。

ずずー、コーヒー牛乳を飲む音だけがこだまする。端的にいってわびしいが、

こんな時間も悪くない。


 そんなことを考えて矢先、どん、頭にいいのをもらった。


「おっす矢島!!」


 痛った、甲高い声が俺の頭上からを聞こえる。後ろには団子結びの女子生徒が

立っていた。髪の毛は桜色、胸はふくよか。人当たりがよく、クラスの中心

メンバーにいることが多い。身長は俺より少し小さい。表情が百面相のように

ころころ変わるやつだ。


 こいつは同じクラスの佐々木幸ささきさち。俺より頭がおバカなやつだ。

どれくらいバカというなんでこんな進学校に入れたの疑問になるレベルだ。

クラスでは「人当たりのいい愛すべきおバカ」で通っている。


 入試のときは鉛筆をコロコロとアテ感、ヤマカンを駆使したらしい。

それを聞いてときは桜井はあ然としていたのが思い出せる。


 そして、こいつのせいであいつに俺の数学の点数を知られてしまった。

何もあんなあからさまにリアクションアンド「私よりひどいよ!!!」は


 まじで余計な一言だ。

 

 このせいで俺はやつにわりと長い間いじられるはめになることは

当時の俺は知るよしはなかった。

 

「なにひとりでぼっち飯してるの?」首を傾げながら質問してきた。

 

「ここの方が落ち着くからだよ」短めに答える。


 実際ここには日陰になっていて、教室のようなけんそうもないので休むには

ベストプレイスだ。


「ふぅん、そっか」


 そういって俺の横に佐々木は座った。


「お前はどうしたんだよ」

 

「美奈子とさっきまでご飯たべてんだよね。それでね、

 じゃんけんをして負けた方が飲みもの買いにくやつやっての」

 

 そんなことを楽しげに話す佐々木。あれか、知人や内輪同士で戯れる遊びか。

やったことないから知らんけど。


「はじめは乗る気がなかったんだけど、『負けるの怖いの?』って聞いたら

  即効やる気になったんだ」


「あいつちょろいな」


 桜井はテストやゲーム、スポーツなど勝負事で勝ちにこだわるのだ。

この前もおれ小テストの話をすると「あなたにしては、頑張った方ね」

とか上から言われたこともあったな。


「そして勝ったときに小さくガッツポーズ取ってのそれがもう可愛いくて」

 

「えっなにそれ」


 あいつそんなことするの。へぇ~可愛いところあるじゃないか。

 

「はじめて楽しいと思ったんだよねこの遊び」


 大切もの噛みしめるように話していた。


 「それはよかったな」

 

 こいつが今、友達やっていたのは楽しくなかったのか。周りと合わせる

ことがうまい佐々木ならありそうことだ。そんな余計なことを

考えてしまう。


 「そういえば、聞いたよ、あやましい本を貸したって」


  話題は今朝のことに変わった。肩がびくんとなってしまった。

あいつ、あのことをこいつにもいったのかよ。

 

「なんか、こんな風に怒り半分、呆れ半分みたいに表情してたよ」

 

  佐々木は桜井の表情を真似をした。

 まぁ愛嬌のあるいい顔ではあるが、それにしても似てないな。

 

「まじか、あとであやまっておこう」

  

  俺はぶっきらぼうにそう言った。そうしないと何言われるかわかんからな。

  

 くすりと笑いながらゆっくりと彼女は立ち上がり

「そろそろ私教室戻るね」と言った。

 

「あぁ、わかった」俺は立ち上がる彼女にそう言った。


彼女が中庭から遠のくを見送る。よし、パン食べて俺も戻るか。

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