閑話3 獅子王ハヤトのいちばん長い日

「せいやぁぁあッ!!!」


一撃必殺。

俺は【ファイナルアタック】をスキャン、ゼロクラッシャーを発動すると一蹴りで敵アームズを破壊。そのベルトのバックル部分に内蔵されたアームズコアを粉砕した。


敵の首領、リカオンアームズ・アルファの生み出したアームズには順列というものが存在することが最近分かってきたのだ。

順に【ボス】【ネームド】【改人】【兵隊】だ。


リカオンを【ボス】とするならば人間からアームズコアを打ち込まれ改造された、何らかの生物や非生物をモチーフとした連中は【改人】だ。ようは改造人間の略である。奴らは意志こそあれど脳まで乗っ取られているため救いようがなく、破壊衝動殺人衝動に身を委ねて襲いかかってくる。中には作戦など立てて子狡く立ち回る者もいるが所詮は人間崩れ、最後には衝動任せで直接襲いかかってくるのである。


そして【兵隊】。こいつらは人間ですらなく、ナノマシン群体がそのまま人の様な形に変化しているだけである。しかし一体二体ならまだしも五体以上増えるとピンチを悟り、合体して大型の兵隊となることもあるから厄介だ。一度数十体の兵隊が合体した上にビルの瓦礫なども取り込んでミサキの好きなアニメの巨大ロボめいた見た目に変化したことがあるがアレは酷く面倒だ、何故なら隊長格のヤツがアームズコアそのものにでもなったかのように意志を統括して暴れ、心臓部のそいつを倒すまで止まらなかったのである。


更に面倒なのは【ネームド】、つまり幹部クラスの改人だ。

奴らは数こそ少ないが俺と同等の力をリカオンから授かっており一体でもかなり強力である。頭を乗っ取られていない為か改人に比べれば幾分か理性的な連中ではあるが所詮はアームズ、人道など捨てている。

ネームドが改人と決定的に違うのは己のリミッターを破壊してより強力なアームズへと変貌する【オーバーロード】を使える点に限るだろう。


コレは時間制限で気絶してしまう諸刃の剣でもあるのだがタイムリミットまでは恐ろしく強化され、そうなったネームドアームズを撃破するにはこちらも相当な覚悟を持って挑む必要がある。

そんな一人がミサキだった。


「いたいた、あなた一人で突っ込んでいくのはさすがに無いと思うんだけどねぇ!?」


仮面レイダーナーガに変身した彼女が走り寄ってくる。


が、俺は振り返りざまに裏拳を胴体に叩き込むと怯んだソイツ目掛け再び【ファイナルアタック】を発動すると拳にエネルギーエフェクトを集中させたパンチ技、【レイダーナックル】で正確にバックルを打ち抜き貫通。やはり一撃でナーガを沈めた。


「な、なんで・・・わたしのカモフラージュは完璧だったハズ・・・。」

「知らなかったのか?ミサキは俺と二人っきりの時は

『ダーリン』って呼ぶんだよ。」

「クソがっ、お前らそういう関係だったのかよ・・・。」


そう呟いたアームズは爆発する。


「冗談だがな。」


本当は共鳴という名の識別信号で絶対に本物は間違えないようにしてあるのだ、実際にこうして不意を狙ってくる悪辣な奴も少なくはない。

と、どうやら本物が迎えに来たようだ。少なくとも色違いのゼロムストライカーまで模倣してくる奴はいない。


はあ・・・今日は一段と疲れる日だ。

襲撃が二回もあった上に潜伏した改人級がまだ街に数体残っている。

ミサキと二手に分かれてこうして各個撃破しているがこれも朝からずっとだ。頭部の変身だけ解除する。

俺は少し腰を縁石に下ろすとタブレット合成栄養剤の少しお高いやつを無造作に口に放り込んだ。


「あー、食事くらいちゃんとテーブルで取りなさいよ。昨日だってベッドに食べカスが落ちてたんだから。」

「お前は俺の母親か。」


いつの間にかミサキも同じくヘルメットのように外した頭部ユニットを小脇に抱えながらこちらを見降ろしていた。

まず一呼吸、そして甘味だ。これがなければ脳みそが動かない。

ビタミンB郡とブドウ糖は脳に必要不可欠な必須栄養素だ。よって、このタブレットは俺の灰色の脳細胞をフル回転させるためには決して欠かすことが出来ない。

味や栄養の確定しない合成食料など食うだけ無駄である。


「ほら、次のお客さんだ。ミサキは南ゲートへ、俺は天蓋のを叩く。」

「全くもう・・・早くトウベエさんの紅茶とお菓子が欲しーい!!」


【チャージ】

『チャージングペガサス!』


俺は無機質な音声と共にウィンドの強化形態でバイクで飛ぶゼロムウインガーを面倒がって自身の力で飛翔するとドームの上に取り付いた改人目掛け飛んで行った。


【ファイナルアタック】

『ゼロクラッシャー【剛風】!』



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【ソード】

『ゼロムスラッシャー!』

【ファイナルアタック】

『ゼロクラッシャー【両断】!』


やはり発生していた【融合兵隊】を斜めに一刀両断、血振りし鞘に納める。

そこでようやくドーム内からアームズの反応が消えたのだ。何時か知らないが真っ暗になってからも戦い続けたのだ、腹が減って仕方がない。

変身を解いてバイクで【アミーゴ】への帰り道を急いでいるとミサキも合流した。ちゃんと本物である。


「おやっさん今帰ったぞ。」

「トウベエさーん、お腹すいたぁ!」

「ふんっ、戦わなくてもそうやって帰ってくるだろ穀潰しがよ。」

「ひっどーい、明日はちゃんと資材発掘に付き合ってあげるから!美味しいのちょうだい?」

「お前さんはアニメ系の掘り出し物にしか興味無いくせによ、よく言うぜ。・・・ようハヤト、おつかれさん。」

「・・・ただいま。」


後に第一次トウキョウ・ドーム襲撃戦と呼ばれたその日は流石に研究業は明日回しにしていつも通りの少し硬いベッドで眠りについたのだった。

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