第9話 納豆とうどん

 あったかいうどんと納豆は合うか、これは私の中での永遠の課題である。

「そもそも、納豆嫌いなんですが」という人は申し訳ない。納豆がそれなりに好きで、うどんの可能性を突き詰めたい1人の人間の話を、よかったら聞いていってほしい。


 熱々の茹で上がったうどんを、白い器に乗せる。つるんと麺は滑ってふんわりと湯気をたてる。パキッと音を立てて納豆のパックの蓋を開く。トレーの中で納豆の粒がつゆ・カラシと絡まっていく。程よく混ざったら、ゆっくりと、最後の一粒が一本の線を引き終わって麺の上へと落ちる。

ズルルっと、麺を勢いよく一口啜る。つゆ・カラシはうどんとよく合う。程よい刺激味が箸を進める。

美味しい、はず。なのにこのお手製納豆うどんを食べ終わった後はどうしても満たされない。2玉食べて、お腹は一杯なはずなのに。

なんだか違和感を感じる。この感覚はどこから来るのだろうか。


 あったかい納豆うどん。ここでの最大の障害は、器の底に残ったぬるい納豆の粒である。茹でたてうどんの切りきれない水分もあってか、残った粒たちは粘り気が薄くなって、つゆ・カラシの味も限りなく薄まっている。粒ひとつひとつの存在感が増している。これが最大の課題点だ。納豆の粒とうどんとを一緒に食べ切れることが理想なのだろう。しかし粒はどうしても器の底に十数粒残ってしまう。

 素直にホカホカの白飯に納豆を乗せて食べれば済む話かもしれない。確かに、それもいいだろう。しかし、私の主食はうどんである。これを変えるわけにはいかないのだ。


「うどんを冷たくして、サラダうどんみたいににするのは?」

確かにそれは有りだ。サラダうどんは美味しい。この前も某レストランのサラダうどんを食べたんですが、ドレッシングと野菜のシャキシャキ感が最高にうどんのもちもち感とマッチしていてね……。

けれど今は、あったかいうどんと食べたいの!だって納豆は、熱々のご飯に乗せて食べるものでしょ!?


「もう、別々に食べたらいいのに……」

いや、だってこの納豆とうどん、今日が消費期限だからさ、どうせなら一緒に食べちゃったほうが早いかなって……。それに、納豆うどんが美味しくないわけじゃないの!なんか物足りないというか……もうちょっと美味しく出来そうな気がする……伸び代を感じるんです!



 これまで訪れたお店でも、「納豆うどん」をメニューで見たことはない。インターネットで調べてみると、それなりに「納豆+うどん」のレシピが出てきた。そこでふと、一枚の写真を見つけた。うどんと納豆が陶器のお皿に盛り付けられている。そしてその上に、生卵が乗っかっている。黄身がツヤツヤと輝いてその存在感を示していた。やはり卵は全てを解決するのか……!そういえば納豆卵ご飯は作ったことあったけれど、うどんではまだだったじゃないか!なんたる盲点!!!

すぐさま冷蔵庫へ走り、扉を開ける。

視線を少し下げて、冷蔵スペースの一番下を見る。ひんやりと冷気が漏れ出る。卵ケースは、空っぽだ。……次の卵の特売日まで、お預けだなぁ。



 あったかいうどんと納豆は、如何にして合うか。

この論点について、未だ私の中で決着はついていない。納豆卵うどんについては、後日の検証が待たれている。

あったかいうどんと納豆を美味しく一緒に食べるいい方法があったら、ぜひ教えてください。

出来たら、お手軽なもので……。

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