ざまぁされるのが確実なヒロインに転生したので、地味に目立たず過ごそうと思います

真理亜

第1話

 目が覚めた時、見慣れぬ天井が目に入って来た。


 その瞬間、唐突に理解した。あぁ、私は転生したんだなと。頭の中には前世の記憶が怒涛の如く押し寄せてくる。そしてこの体に残っている記憶を参照する限り、どうやら私が転生したのは、前世でハマッていた乙女ゲーム『悪役令嬢だなんて呼ばないで』の中に登場する人物らしい。


 私は鏡で自分の姿を確認する。髪はビンクで瞳は碧。庇護欲を唆るような小動物的で可憐な容姿。紛うことなきヒロインの姿がそこにあった。


 詰んだ...私は絶望してその場に崩れ落ちた。



◇◇◇



 このゲーム、タイトルを見ても分かる通り、主役は悪役令嬢だ。ルートは全部で5つ。攻略対象は第2王子、宰相子息、騎士団長子息、大司教子息、大富豪子息となっている。そして全てのルートにおけるヒロインがこの私、平民出身のリリアナだ。


 そして全てのルートでざまぁされるのもこの私だ。このゲーム、謂われなき冤罪によって追い詰められる悪役令嬢が、断罪の場でヒロインとその攻略対象を返り討ちにして、見事にざまぁするというのが基本のストーリーになっている。


 そしてこれまた全てのルートにおいて、ヒロインの末路は首チョンパと決まっている。一つの例外もなくチョンパされる。理由はヒロインが平民だから。対して、ルート毎に変わる悪役令嬢は全て上位貴族だから。


 当然といえば当然なんだが、そこに制作サイドの悪意を感じずにはいられない。どんだけヒロイン嫌いなんだよ!  そしてどんだけ悪役令嬢が好きなんだよ!  ふざけんなよ! いっぺんお前らも転生してみろや! ハァハァ...いかん、取り乱した。


 気を取り直して...嘆いていても罵倒してもヒロインに転生した事実は変わらない。なら、ここは一つ、攻略対象にも悪役令嬢にも関わらず、地味に目立たずに過ごして行こう。生き延びるために!


 幸い、まだストーリーは開始前だ。やり込んだお陰で全てのストーリーは頭に入っている。フラグを悉くへし折り、どのルートにも入らないように細心の注意を払う。生き延びるために!!


 明日は王立学園の入学式だ。いきなり第2王子との出会いイベントがある。入学式に遅れそうになって慌てたヒロインが、王子にぶつかってしまうというベタなパターンだ。まずはそれを回避するために、学園へは入学式の1時間前に到着するよう早起きする。


 今日の時点で前世の記憶が蘇ったのは幸運だった。その幸運を今後も生かしていこう。


 生き延びるために!!!

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