ネトストのB

 私の大学時代の同級生『B君』の話。


 憶測の域を出ない部分もあるのだが、もし私の想像通りだとしたら少しゾッとする話である。


ーーーーーーーーーー


 2年ほど前。大学時代の同級生(女性)から連絡があり、私は数名の飲み会に参加することになった。当時の面子と飲むのは数年ぶりだ。


 誰が来るのか、何人来るのかなど具体的なことは知らされず、日時と場所だけ伝えられた。


 当日、集合場所に電車で向かっている時のこと。時刻は17時ごろ。ある駅に到着。


 乗り降りする人が多かったため、一旦車両を降り、乗り口にできた列の最後尾に並んだ。


 スマホを操作して乗車順を待っていると、私の顔とスマホの間に人の手がシュッと入ってきた。びっくりして顔を上げると目の前に『B君』がいた。


 B君と会うのは大学卒業して以来だったと思う。偶然の再会だったが、B君とは仲が良かったわけではないので、特別うれしいという感情は湧かなかった。B君は周りの人から好かれていたタイプでもない。


 そしてB君は左足を剥離骨折していた。


 B君は私と一緒に電車に乗り込むと、ずっとついてきた。乗り換える駅も同じ。私は「B君も飲み会に誘われていたのかもしれない」と思い、一緒に集合場所へ向かうことにした。


 B君は21時から別の飲み会があるとのことで、それまでいるつもりだと言っていた。左足を剥離骨折しているにも関わらず、妙にタフであった。


 この日は私とB君以外に5人が参加。同級生の男女4人、1年下の後輩の女子が1人。そのまま飲み会が始まった。


 飲み会の最中、B君がトイレに立った。その際に後輩が、


「なんでBさんを呼んだんですか?」


 と私に質問してきた。


 「えっ?」と疑問に思った。その場で確認したところ、誰もB君を誘っていなかったらしい。


 つまりB君はこの日、偶然にも私と会い、偶然にも飲み会が開催される日であり、偶然にも予定が空いていたということになる。


これほど偶然が重なるものだろうか。あるいは、B君は左足を剥離骨折したことで運を呼び寄せていたのだろうか。


 21時から飲み会と言っていたのに、17時ごろから出歩いていたのも気になるところだ(用事があったのかもしれないが)。


 しかも、21時を過ぎてもB君は「飲み相手はいつも遅刻してくるヤツだから」などと言って一向に帰ろうとしない。そのまま23時くらいまで居続けた。


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ここからは私の憶測になるが、B君は誰かのSNSか何かで飲み会のことを知ったのだろう。


 その上で飲み会の当日、開催しそうな場所付近を徘徊していたのではないだろうか。


 私は飲み会についてSNSに投稿していない。しかしB君に遭遇したのは私であるため、何らかの方法で私の行動を把握していた可能性が高い。


 そして偶然を装い遭遇した。


 本当はB君に「21時から飲み会」なんて予定はなかったのではないだろうか。「それまでの時間つぶしのため」という嘘の口実を作り、飲み会に参加したのではないだろうか。


 B君は誘われていなかったけれど、どうしても会いたい人がいたのだろう。あの日参加した人の誰かに。


 いわゆるネットストーカー。B君は「ネトストのB」になってしまったのかもしれない。

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