第8話 意地悪な青年と純情な少女。

 下校中、俺は、カナタに意地悪をする。


 「なぁ、カナタ」


 どうせ、罰ゲームの告白だ。


 好きにやらせてもらおう。


 最近ではため口で話してくれるようになった。


 「なに?」


 「前にも聞いたが俺のどこが好きなんだ?」


 「ひうっ!?」


 「どうした、顔を真っ赤にして」


 「うぅうううううううううう」とうなる。


 風邪でもひいているのだろうか。

 

 「どうした、熱でもあるのか?」


 俺は彼女の額に手をやる。


 「ひゃあ!?」


 「だ、だいじょうぶです!」


 「それで、俺のどこが好きなんだ?」


 優しく問いかける。


 「じゃあソウタは?」


 「全部」


 俺は即答した。


 当然である。


 「~~~~~~っ」


 声にならない声をあげて、うずくまる彼女。

 

 「お、おいどうした」


 「わ、私も……ぜ……ぜんぶ」


 「いや、無理するな」


 「無理してないもん」


 「そうか」


 「もう、いきなりなんなのよ」


 「カナタは可愛いなぁ」


 「ふぇ!?」


 俺は彼女の頭を撫でる。


 「な……何を……」


 なでなでなで。


 「うぅ」


 ナデナデナデ。


 「~~~~~っ」


 ナデナデナデナデナデ。


 「子ども扱いしないでぇ!」


 「わかった、わかったごめんごめん」


 しばらく口をきいてくれなかったが、やがて黙って俺の手を握るカナタ。


 俺が彼女の横顔を見ると、彼女はふいっと視線をそらした。


 彼女の耳だけが赤かった。

 

 うひひひひ、体は正直じゃのう、うひひひ。

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