夢物語を超えてやる


「なんの為に夢見たのさ」


 過去の私の声がする


 今の私にしかわからないことがあるように

 過去の私にしかわからないことがあるんだろう


 時間が交差する

 いびつな空間で

 歪な考え廻らせて


 過去と今 どっちが正しいか

 議論し合う時間が続いた

 途中で気付いた

 馬鹿馬鹿しい

 単に状況が変わっただけではないか



 ただ今日の過去は強気だった


「綺麗事を忘れたあんたになんの魅力があるというの」


 大切にしていたものを思い出させる

 守りたくて守りたくて

 仕方がなかったものを


 過去の声はやがて今と重なる


『実現不可能なものを想像できる訳ないだろ』


 夢物語なんかじゃないと思わせてくる

 例えそれが今じゃなくてもいつかはと思わせてくる

 私はもう大人なのに参ったね

 どこまで熱くなれるかもわからないよ



「突然向こう側が見えた?」


「馬鹿だね」


「それはあんたが登っていたからだろう」



 消えかかっていく声に

 遠ざかっていく声に

 ちくしょうと呟いてから立ち上がった



 綺麗事で結構

 笑いたきゃ笑え


 私は何度でも壁を登る

 夢物語を超えてやる

 叶わない夢を見たつもりはないからね

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