第8話【国宝製造機な錬金魔法士】
工房到着!
「ただいまーって皆一緒に帰ってきたのだけど何故か言ってしまいますね」
「やっぱり
直ぐに紅茶をいれますの」
「着いたんでしょ?早く
工房に着いた僕達はそれぞれ自分が一番リラックスできる場所へ向かった。
ララは袋からもぞもぞと這い出てきてぶつぶつ言いながらソファーの上に陣取った。
それを見てあることを思い付いた僕はララに向かってある提案をしてみた。
「ララ、いつ頃まで
「何よ?」
「お前がどう思おうとこの街で生活している
そりゃあ僕には精霊の皆が居るけどかなり特殊な事であるし、それでも見た目は人間とかわりない姿にしてるから街に出ても特に問題は起きないんだ。
つまり街ここで暮らす間は人の姿でいた方が色々と都合がいいんだよ」
「でも、私は人間の姿にはなれないわよ」
ララはそう言うとふいっとソッポを向いた。
まあ、当然そうなるよな。でも、僕の錬金魔法を甘く見ないで欲しい。
「『出来る』と言ったら?」
僕の言葉にララは驚いた顔で振り向いた。
「ララの居た世界では人間は魔族に操れて又は脅されて竜族を攻撃していたんだろ?
でもこの世界の人間は竜族を見たことも無いし、攻撃するといったことも無い。
大丈夫だ。強いて言えば珍しい生き物としてペットにされるか見せ物にされる可能性があるくらいだ」
「全然大丈夫じゃない気がするのだけど」
「まあ、いいじゃないか。で、どうする?」
「あまり乗り気じゃないけど捕まるのも自由が無いのも嫌だから仕方ないわね」
「よし。それじゃあ今から良いものを作ってあげよう」
僕はそう言うと工房の素材置場から幾つかの素材を取り出し始めた。
「えーと、これとこれとあとあれも必要か……。
よし、こんなものかな」
僕は素材の中から白い宝石をララの前に置いて、ララに言った。
「これからララを擬人化するアイテムを作成するんだけどその素材のうち、宝石これが核になるんだ。
それで、今からララにどんな姿になりたいかをその宝石へインストールして欲しいんだ」
「い、いんすとおる?って何よ?」
「ああ、悪い。簡単に言えばどんな姿になりたいかを思い描いて欲しいって事なんだ。
やり方は宝石の前で人間の姿になった自分を考えてイメージが固まったら宝石の上に手を置いてインストールと言えばいいんだ。
大変だけど出来るだけ詳しくイメージしたほうが再現性も上がるから頑張ってみてね」
僕はそう言うと他の素材を錬金釜に入れて調合を始めた。
「また、マスターも無茶振りをするわね。
ララちゃん、あなたはこの世界の人間をあまり見ていないから具体的にどのくらいが標準か分からないと思うけど、あまり目立ちたくないなら大人びた女性は止めた方がいいと思うわ。
あまり魅力的過ぎると何処に行っても男達から注目されるからね。
反対にあまり小さな子供も誘拐とかの犯罪に巻き込まれる可能性が高くなるからどうかと思うわ」
「年齢的にはシールより少し上くらいの15~16歳かな。
成人してると制約がかかりにくくなるから何かと都合がいいんじゃないかな。
後は見た目を活発系にするかおしとやか系にするかくらいだと思うわ。
私がアドバイス出来るのはそのくらいね」
僕とララのやり取りを聞いていたセジュがララにアドバイスをしていた。
それを素直に聞いていたララはゴニャゴニャと自分のイメージを呟きながら宝石の上に両手を乗せた。
白かった宝石がだんだん赤く染まって行き、ルビーのごとく深紅に染まった時淡く光出した。
「おっ、上手くインストールされたみたいだな」
僕はそう言うと深紅に染まった宝石を受け取りそっと内容を解析してみた。
* * *
【ステータス】
#名前:ララ
#年齢:15
#性別:女
#身長:150㎝
#体重:42kg
#職業:未指定
#頭髪:シルバーロング
#瞳色:朱色
#胸囲:ミルフィくらい
#属性:炎属性
ふむ、思ったよりもまともな内容に少し驚いたがおそらくセジュのアドバイスが良かったのだろう。
胸囲をミルフィくらいとする辺り見栄も一人前にあるようだ。
だがアンバランス過ぎるし、なんとなく僕のイメージが違うから却下するけどな(笑)
僕はその宝石を受け取ると作成途中の錬金釜へ投入した。
釜は青白く放っていた光を桜色に変えて輝き始めた。
僕は最後の仕上げにイメージの固定とセキュリティ対策を盛り込んでアイテムを完成させた。
「はい、ララ専用の擬人化アイテム【
そう言ってララの前に出されたのは竜の爪を模したペンダントだった。
「ネーミングセンスないね……」
「うるさいな……。まあいいや、使い方はララの首に掛けるだけでOKなんだ」
「大体3分くらいで変化すると思うぞ」
「ちなみにコイツには防犯効果を着けているからララ以外が使っても何にも起きないようにしているから大丈夫だ。
まあ、とりあえずテストも兼ねて使ってみ?」
「分かったわ」
ララはそう言うとちょこんと僕の前に座った。
「それじゃあいくぞ」
僕はそう言うとララの首にネックレスをかけた。直後からララの周りに桜色の光が渦巻き始め、数十秒後にはすっぽりララを包んでいた。
「どのような感じになる予定ですか?」
アドバイスをしたセジュは気になるようでララと僕を交互に見ながら不安そうに聞いてきた。
「基本的には核となる宝石の情報にそって体を形成するはずだからそんなに心配する事はないと思うよ。まあ、ララ自身の魔力が足りないとか体積が足りないとかちょっと無理のある部分は自動で修正されるけどね」
僕は少しイタズラっぽく笑うとララの光に目を向けた。
およそ3分が経過した頃、光の塊が大きくなり人影のシルエットがぼんやり現れてきた。
さらに数秒後、一瞬強く光ったかと思ったら人の姿をしたララが立っていた。
「うん、成功だな」
僕は満足そうにララを見て言った。
「ララちゃんどお?鏡を見てみる?」
セジュは目を輝かせながらいそいそと姿見を準備し始めた。
「これが人間の体・・・。
思ったよりも目線が低くない?あと、バランスが取りにくいし。
しかも、何この服?ヒラヒラが一杯付いてて動きにくそうなんだけど。なんか足元がスースーするし・・・」
「まあそう言うな。その服は魔素と魔糸を錬金して作った特別仕様なんだぞ。
見た目以上に防御力もあるから戦いの場でも重宝するぞ。
それに、大抵の場合はこう言った変身シーンは服を着ないで現れるお色気パターンがお約束なんだぞ」
「何よそれ!?冗談じゃないわ」
「いやいや、そもそもララはドラゴンじゃないか。ドラゴンは服なんて着てないよな」
「ぐっ!」
「マスター、その理論はおかしいと思いますよ」
セジュがすかさず突っ込みをいれた。
「マスター、エッチなのは駄目ですの」
ミルフィからも突っ込みを入れられた。
「マスターはエッチだったのだ?」
ついにシールからも言われ、女性陣全員からジト目をされてしまった。
ミスドは話には興味が無いのか工房の隅に腰を降ろして武器の手入れをしていた。
「ちょっとからかっただけだろ?」
僕は慌てて弁解したが、なかなかジト目が収まらないのでマズイと思って話題を変えることにした。
「およそララの希望に添って構成出来てると思うけど、魔力や体積の関係で一部再現出来なかった部分もあるんだが了承してくれな」
僕がそう言うと鏡を見ていたララが言った。
「そうね。髪も眼の色も属性も希望どおりなんだけど、身長が低すぎない?顔も何だか幼い感じがするし。
多分だけどこれって130㎝くらいしか無いんじゃあないの?」
「あと、む、む、む」
「む?」
「胸が無さ過ぎない?」
「ああ、それはわざとだ」
「何で!?」
「だから言ったろ?目立ち過ぎる設定はしないようにと。
いいか、暫しばらくララはこの工房に居候いそうろうする事になるだろ?と言う事はギルドやご近所さんにも紹介しないといけないし、関係も説明しなきゃならない。
まあ、身長が足りないのはララ自身の魔力と体積の不足が原因だったんだけどな。
だいたい、その身長で胸だけ大きかったら僕のギルドやご近所さんからの評価が【巨乳ロリ幼女好き錬金魔法士】となりかねないから却下させて貰ったんだ。悪いけど、僕はロリコンでは無いし、一応この街では『錬金魔法士様』で慕われているからマイナスイメージの噂を立てられると少々困るんだよ。
ララの位置付けは、知り合いの娘さんで錬金術士に憧れてて、僕の仕事の助手見習いをする事になったとするからな。
ちなみに設定年齢は10歳だからあまり無茶な事はするんじゃないぞ」
「10歳!?、あんた成人の15歳くらいにするって言ってなかった?」
「ああ、予定変更だ。いくら何でもその見た目で15歳は無理があるからな」
「これから外に出る時は、セジュかミルフィと一緒に出かけて貰うよ。
やっぱり一人で外出されるのは都合が悪・・いや、危ないからな。
あ、僕の事は仲間内の時は名前で呼んでもいいけど、表向きには【師匠】と呼ぶように」
「えー、何か面倒くさいんですけど・・・」
「じゃあ自分で自由に生活してみる?仲間のいない力不足の子供ドラゴンの末路かぁ。
大変そうだけど仕方ないよねー、うんうん」
「なっ!?」
「マスター、あまり意地悪な事しないであげてくださいね」
僕はセジュの言葉に軽く頷いてララに言った。
「まあ、色々と言ったけど僕達は君を歓迎するよ。
分からない事があったら精霊の皆に聞くといい。
戦闘関係ならミスドに、魔法関係と街の情報ならセジュに、食事や服とか生活面ならミルフィに遊びならシールに聞くといいだろう」
本来なら魔力消費が激しいから素材収集が終わったらミルフィ以外は休んで貰うんだけど小さい子供の相手は僕には難しいから皆には暫く居て貰おう。
食事は大変だけど皆僕の家族みたいなものだし少し頑張ってみるか。
「皆もよろしく頼むよ」
「「「「分かりましたマスター」」」」
「ララちゃんよろしくね。
当面は私が色々と教えてあげるからね。
さっそく街を案内するわね」
セジュはそう言うとララの手を引いて工房から出かけて行った。
「私達精霊の存在自体も国宝級だと思うけれど初めて出会った竜族を簡単に擬人化させるアイテムを作るとか相変わらずマスターの錬金スキルは普通じゃありませんの」
外出した二人を見送りながら紅茶を入れてくれたミルフィが微笑みながら呟いていた。
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