第5話【新しい仲間とそれぞれの反応】

 きっと今から生まれてくる『何か』は僕の新たな仲間になるのだと思う。


 そうすると『可愛い』か『格好いい』のどちらにすればいいんだろうか?


 やはり何時いつもそばにいるならば、癒されるマスコット系がいいか?


 いやいや、戦闘力のない僕を護れる格好いい生物の方が安心出来るかもしれないな。


「あーっ もう何がいいか分からないや!

 とにかく、可愛いくて、格好よくて、強くて、大き過ぎなくて、仲間になってくれるもの出てこい!!」


 何ともアバウトな願望を魔力に込めて僕は叫んだ。


『ピシッ!』


『ピシッピシッ!!』


 魔力が補充されると、卵の点滅が早まってきたと思ったらヒビが入り出し、再度真っ白な光に包まれた。


『生まれる!?』


 錬金釜の上に浮き上がった光の球体が、僕の手元に収まり徐々に光がおさまって生物の輪郭が現れてきた。


 精霊の皆と僕が見守る中、現れたものは『体長30㎝位の子供ドラゴン』だった。


 小さいながらも綺麗な銀色の体に確かな覇気はきまとった姿であった。


 なるほど、確かに『可愛いくて』『格好よくて』『強そうで』『大き過ぎない』生物だな。後は懐いてくれれば嬉しいんだが…。


 そんな事を考えていたその時


『まさか、ここまで小さくなるとは思わなかったわ!』


 目を覚ました子供ドラゴンは自分の身体を見回してあ然としていた。


『他の皆はどこに?』


「おおう…。このドラゴンしゃべるじゃないか」


『創造神様のお力で転生したものの、やはり完全体になるのは難しかったのね』


 どうやら創造神ガルサスの仕業らしいが、この子供ドラゴンは僕と同じく異世界からきた竜らしいな。


 僕は嫌な予感しかしないが、子供ドラゴンを地面に降ろして事の次第を聞いてみる事にした。


「君の名前は?何処からきたの?ここに来た経緯は?」


「私の名前はラクレア・ランドレス。

 ここではない別世界から創造神様のお力でこの世界に転生して来ました」


 ラクレアはそう言うとひとつひとつ思い出しながら話してくれた。


「私は竜族の王、黒竜王の娘です。

 私の世界では、千年に及ぶ魔族と竜族の戦いが繰り広げられていたのですが、魔族が人間達の王を操り従わせる形で竜族の国に攻め入ったせいで力の均衡が崩れてしまい、竜族軍は敗戦滅亡の道を歩む事となりました。

 いよいよ竜族軍が滅亡する事が現実味を帯びた時に竜王は一族の禁忌である神召還の儀式を行い、選ばれた生き残り数頭を転移させる術を行ったのです。

 術は上手く行って創造神様の協力を得る事が出来たのだけど、神の力をもっても転移させる時『竜族の質量が大きすぎて実体のまま転移出来ないから記憶は持ったまま卵状態にて自分の世界へ転生させる』事が精一杯だと言うものでした。

 さらに、孵化するには相応の魔力が必要であり、誰かの協力の元で強制孵化させるか数百年ゆっくりと自然の魔力を集めて孵化するかだけど『選ぶ事は出来ない、全ては私達の徳にある』と言われました」


 そこまで聞いて僕はある結論を導きだしていた。


(創造神ガルサスの言っていることは幾つか矛盾がある、おそらく質量の問題で移転は難しいと言うのは嘘だろう)


(竜族程度の移転が神の力で出来ないと言う事はあり得ないだろう。

 たぶん自分の世界に大きくて力の強い竜族を移転させるとそれこそパワーバランスを崩すことに繋がりかねないからそういった形にしたのだと推測出来る)


(さらに、僕の元に送り込んできた所をみると僕に面倒をみろと言ってるんだろうな。

 いかにもあの神ガルサスのやりそうな事だ)


 僕はそこまで考えをまとめるとラクレアに話しかけた。


「ラクレア、幾つか君に聞いておきたい事があるんだけど、君の世界では魔族と人間に竜族が滅亡させられたそうだけどやっぱり魔族や人間に恨みはあるかい?

 それと、現在この世界には竜族は存在していないんだけど、これからどうするつもりだい?」


 ラクレアは少し考えて僕に答えた。


「魔族は勿論、操られていたとはいえ、それに協力していた人間も許せないわ。ただ……」


「ただ?」


「あくまで私の居た世界の魔族や人間が許せないと言うだけよ。仮にも創造神様が薦めてくれたこの世界の人間が同じ事をするとは思えないし、私も竜族本来の力の1割も出せない状態だし、暫くは様子見になると思います。

 今の私の力じゃあどうにもならないし、他に行くあても無い。

 そして、直ぐに他の皆が見つかる可能性も低いから出来れば暫く泊めてくれると助かるわ。

 私達も別にこの世界で生き物の頂点に立ってやろうとかは考えてないの。

 ただ、仲間達と仲良く暮らせればと思うからある程度力が戻ったら他に転生された竜達を探しに行きたいと思います」


 ふむ、意外としっかりした考えをしている。

 感情に任せて暴れたり人々に危害を加える確率も低いかな。


「よし、なら一緒に行こうか」


「挨拶が遅れたね。僕の事はタクミと呼んでくれ錬金魔法士をやっている。

 僕は創造神ガルサスに仕事でスカウトをされた人間だよ。

 こっちに控えているのがミスド、セジュ、シールそしてミルフィだよ。

 皆は僕が錬金で召喚した精霊達でいろいろな事をサポートをしてくれているんだ」


「「「「よろしく」」」」


 精霊の皆がラクレアに挨拶をした。主人マスターが認めたなら自分達がどうこう言うつもりは無いらしい。


「よろしくお願いします」


 小さな体を器用に使ってラクレアがお辞儀をした。


「それじゃあ、これからよろしくな『ララ』」


「ララ?」


「ああ、ラクレア・ランドレスって言いにくいから『ララ』でいいかなーと思って」


「ララ……か、なかなかいい響きね。真名は竜族の仲間とだけ使う事にするわ」


 僕は少しホッとした。

 初対面の相手にいきなり愛称をつけたので反発されるかと思ったが気に入ってくれて良かったよ。


「ララ、今は依頼の最中だから直ぐには帰れないけど、工房に帰ったらいいものを作ってやるからな。

 よし、明日はさっさと依頼を片付けて工房へ帰るぞ!」


「「「「おー!!!」」」」


 新しい仲間を加えた僕達は明日の為に休むことにした。


 頭上に拡がる満天の星空はいつまでも煌きらめきながら僕たちを照らしていた。

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