第2話 にゃにゃタロの洗礼
私は一台のマシンにふらふらと近づいていく。
マシン内の後ろの壁一面には私がまだ見たことのないにゃにゃタロのぬいぐるみが並んでいる。
にゃにゃタロは公式には猫のキャラクターである。二本足で立っているし、服も着ているが猫である。にゃにゃタロは着物や浴衣を着ていることが多い。左目には傷を負って開かない設定で傷跡が残っている。なのに、モフモフ。
ラッパーのような出で立ちをしているのは、弟のにゃにゃジロ。軽い感じが受けているらしいが、モフモフ度がにゃにゃタロより若干劣るように感じられる。(注:キャラクターのモフモフ度は二匹とも同じです。主人公クリフの主観が多いに入っています。)こちらは隣のマシンに並んでいる。
クレーンゲームのマシンを筐体とも呼ぶのだが、この話ではマシンと呼ぶことにする。筐体って書かれても、クレーンゲームになじみのない人にはわかりにくいよね。
さて、にゃにゃタロのマシンには後ろの壁一面に最新のぬいぐるみが並んでおり、マシンの床部分には一体のにゃにゃタロのぬいぐるみ、その下にはカラフルなボールが引き詰められている。
クレーンの爪が三本。
あの爪で挟んで持ち上げて、あの穴までもっていくことができれば、あのにゃにゃタロは私のモノ、ニマリ、としか思わなかった。
百円玉に手を伸ばす。電子マネーでも支払えるようだが、とりあえず百円玉をマシンに入れてみた。
レバーを動かし三本の爪をにゃにゃタロの上に移動させる。
一応マシンの横からも覗いて位置を確認する。
完璧。
フッ、これでにゃにゃタロは私のモノ。ニタリ。ボタンを押す。
三本の爪はにゃにゃタロをしっかりとつかむ。
にゃにゃタロを持ち上げ、ゆっくりと穴の方へ、、、進むと同時に放しやがった。
ん?
私の見間違いだろうか?
私のこの素晴らしい動体視力で見間違う?そんなことあるだろうか。
いや、近頃パソコンでのレポート作成で目を酷使し続けていた。
疲れていた、きっとそうだ。
もう一度。
百円玉に手を伸ばした。
もう一度。。
両替。
エンドレス。。。
いったいどれくらいやったのだろうか。
ぬいぐるみが百円で取れるわけないよね。
ゲームセンターも商売なんだから。
気づくのが遅いって思うわ。にゃにゃタロの魅力のせいで冷静な判断ができなかった。
絶望。
私は操作ボタンがある出っ張り部分に腕を置き、頭をのせていた。
「爪が届かない位置になっているので、直しますね」
ゲームセンターのスタッフさんがマシンの窓を開け、にゃにゃタロを穴のそばへ。
貴方は神ですか!
歓喜とともにいた私にスタッフさんは笑いかけた。
「ここを爪で狙ってくださいね」
ありがたいアドバイスまで。
ありがとう。
このご恩は忘れない。
百円玉を元気に握る。
私は無事に愛する最新にゃにゃタロと共に家路につくことができた。
ゲームセンターを出るときに。
涙ぐんでいた大人たちがいた。
「あんな子供にまであんな大金を使わせて」
「半泣きしていたよ。見ていて可哀想だったよ」
「はやくアシストしてやればいいのに」
「あんな飴を大事そうに持っている子供が、五千円以上使い込むなんて」
「数、かぞえていたのかよ。でも、とれて良かった」
「もう少しでお兄さんが取ってあげるよ、って言うところだった」
「あの子にしちゃ、お前はお兄さんじゃなくオジサンだろ」
「はは、違いない」
という会話をしていた。ハイエルフは耳もいいのだ。ここは子供だけでもゲームセンターで遊んでいられる平和な世界。私はこのゲームセンターに子供が来ていないと思っていたけど、周りが見えないほどにゃにゃタロに夢中になっていたのかもね。
「クリフちゃん、あそこの三本爪やったんだ」
「あそこの確率機、えげつないよね。設定金額いくらなのーっ、って叫びたくなる」
「前、地獄だった」
「確率機?」
大学で、ペロペロキャンディーをくれた人物にクレーンゲームのことを聞いた。周囲にいた人たちも話に盛り上がる。
ぬいぐるみ等でよく使われている三本爪。
初心者でもやりやすいとは言われているが、初心者でもとりやすいとは言っていない。知っている人は知っている、三本爪のマシンは確率機と呼ばれるものである。ゲームセンター側が設定した金額を投入すると、アームパワーが強くなって景品が取れやすくなるというマシンである。強くなったそのときにつかめなかった場合、次の周期までアームパワーは弱くなるのか、しばらくはとれやすい強い状態のままでいるのかはそのマシン次第である。
実力でこの三本爪のマシンを攻略する人たちも存在するが、確率以外でとるには素人では偶然か、運の産物でしかない。
「確率機、、、」
今でこそ三本爪の確率機は知っているが、このときの私ことクリフは知らなかった。にゃにゃタロのグッズがクレーンゲームの
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