第5話
「破滅はお断りです…」
弱々しく呟いた。
前世でも碌な死に方をしなかったのに今世も碌な死に方をしないというのはかなり嫌だ。というか死にたくない。
こうなったら破滅を全力で回避するしかないのだ。
「あれ?でも、ちょっと待って」
先程お母様はルードルフの婚約者選びを行うと言っていた。今のクラウディアはまだルードルフと婚約をしていないのだ。
確かゲームのクラウディアは両親の力を使って無理やりルードルフの婚約者になったと表記があった。
どうやら一目惚れだったらしい。
婚約しなければ破滅回避になるのでは?
つまり婚約を未然に防ぎ、ヒロインが彼のルートや逆ハーレムを選んでも苛めないようにすれば良いだけ。
「破滅回避、案外簡単かも?」
安心したのか頬が緩んだ。
良かった。これで今世は長く生きられる。
「って部屋に閉じこもっている場合じゃないわ!」
おそらくクラウディアがルードルフと出会い惹かれるのは先程お母様が言っていた王妃様主催のお茶会という事になるだろう。
それなら回避は簡単だ。
そもそもお茶会に行かなければ良いだけ。ルードルフが他のご令嬢と婚約してくれたら良いのだ。もし婚約者になる人が見つからなくても彼はいずれヒロインと出会い惹かれるのだから問題はない。
私はお茶会に参加しないようにしましょう。
しかしそれを許してくれる両親ではなかった。
「お茶会、もちろん出席よね」
「ああ、出席すると王妃には言ってある」
両親のところに向かったところで聞こえてきた会話だった。
終わったわ。
お茶会に参加しないという選択肢をあっさりと潰してくれた両親。悪気がないも、大貴族として参加するべきなのも分かってる。それでもちょっとくらい恨みたくなった気持ちを許して欲しいところだ。
「もしかしたらディアが婚約者に選ばれるかもね」
「え…」
笑顔で言うお父様に表情が固まった。
婚約者に選ばれる?
そんな破滅フラグまっしぐらな展開は遠慮したいのですが。
そう思っていても期待の目を向けてくる両親を失望させるような真似はしたくないのが子供心というものだ。
「もしもディアが婚約者に選ばれたら幸せね」
お母様、それは一般論です。
私にとっては不幸のどん底に突き落とされるという事ですけどね。
破滅フラグに一歩近づいてしまった事実に泣きそうになりながら笑顔を作った。
「楽しみだな」
「ディアの新しいドレス作りましょうね」
出来れば目立ちたくないのですけど!
階段に座り込みながら心の中で叫び声を上げた。
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