青春死体! 続けば?


 丑三つ時の墓場。


「肝試しじゃー!」


 やたらテンションの高い吸血鬼。


「私等が墓場とか合ってるわね」

「いやあってねーよ純和風だぞ」

「うーあー」

「ふっ、懐かしい地獄の匂いが」

「おいルシフィル。墓場で罰当たりな事言うな」

「神に逆らう事こそ我が往く王道!」


 そんな訳でやって墓場に来た五人。

 超常現象よりも超常現象な存在である五人に対して(つーか一人ゾンビだし)幽霊など驚くに値するのだろうか。


「出てこーい幽霊ー」

「うーあー」

「おうおう、お前じゃない」

「うーあー……」

「よしよし、悪かった」


 吸血鬼がゾンビを撫でる。

 魔女がその光景を見て。


「なにいちゃついてんだ」

「お? 嫉妬か?」

「殺すか」


 相変わらずのバチバチ。

 その時だった。

 辺りの空気が冷えていく、生気が失われていくような感覚。不老不死という生気に満ち満ちている五人だからこそより感じ取れる『死』の気配。

 『それ』は近づいてくる。確実に。的確に。絶対に。

 草木が揺れる、墓石ががたがたと揺れる。月光が雲に隠れて辺りが暗くなる。

 そして――


『うーらーめーしーやー』


 五人はバッと振り返る。そこに居たのは白装束に三角のあの例のアレを付けた幽霊の姿が。


「「「「地縛霊ちゃん!」」」」


 白装束の女の子は照れた。


「えへへ、お久しぶりです」


 黒髪ロングの純日本人。THE幽霊と言った風な美人。


「えー! 久しぶりじゃん! 何年振り!?」

「えへへ、百年振りくらいですかね。お世話になりました。おかげで今は浮遊霊やらせてもらってます」

「そっかそっか、そうだよね! 私等が未練を解いてあげたんだもんね! ……ん? じゃあなんで現世いんの?」

「いやー、それがまだちょこっと未練ありまして……」


 そこでルシフェルが手をあげる。


「あの誰ですか?」

「あーそっかルシフェルは知らないか、あのね地縛霊改め浮遊霊ちゃん。昔、不老不死老人ホームに住んでたの、ていうか第一号住人。未練吹っ切って出てっちゃった訳だけど。まさかこんなとこで会えるなんてね」

「第一号住人?」

「そーそー、あの屋敷自体、浮遊霊ちゃんの実家だったんだよな」


 不老不死老人ホームの全員(ルシフェル除く)が過去を懐かしむ。


『ここが噂の幽霊屋敷ね!』

『此処の幽霊祓ったらタダで一生住めるってマジなのか魔女?』

『うーあー』

『私もちょっと不安ー』


 魔女はチッチッチッと指を振る。


『この契約は絶対よ! 末代まで繋がれた魂の契約、解かれる事はないわ!』

『何、簡単に人呪ってんだ』

『うーあー』

『んまー、でもそれなら大丈夫かなー』


 そんな訳で屋敷突入。

 

『恨めしや……恨めしや……』


 そこに居た地縛霊を。


『仙術開放! 術式〇転!』


 おい、その頃、連載されてないだろ。百年前だぞ考えろ。


『うっさい千里眼よ千里眼』


 千里眼ってそういうスキルだったか……?


『F〇teじゃそういう扱いだった』

 

 おい。さらに他作品を混ぜるなややこしい。

 その時だった。


『ひっ!? なんか超常存在が居る!?』

幽霊あんたに言われたくないわね』

『は、祓わないで下さい! 何でもしますから!』

『じゃあ成仏してもらおうか』

『会話が成立しない!? ええいこうなったら呪い殺して――』

『私等不老不死だけど?』

『詰んだ!?』


 そんな訳で話し合いのターン。


『わたし、まだやり残した事があるんです』

『なになに言ってみ?』

『タカシ君に思いを伝えてなくて……』

『タカシ君?』

『赤紙が来て――』

『おk、把握』


 不老不死会議開始。


『私が仙術で魂を呼び出す』


 不老不死会議終了。


『一つ積んでは母の為――』

『それイタコだろ?』

『もう何でもいいーー』

『うーあー』


 現れるタカシ君の霊。


『タカシ君! 私! ずっとあなたの事!』

『ごめん、俺、他に好きな人が居るんだ』

『そっか……』

『おい振られたぞ』


 どうすんだ、この空気と言った所。


『おいタカシ、地獄に送られたくなければ「はい」と言え』


 魔女の脅し。


『ごめんやっぱ俺も好きだった!』


 手のひら返し。


『タカシ君!』


 ハグする二人、涙を流す二人。喜び、片や結ばれた嬉しさ。片や地獄送りを免れた嬉しさ。

 そうして天に召された――


『ん?』

『未練は晴れました!』


 まだいる地縛霊。


『じゃあお前も天に逝け?』

『私! 実家じゃないと落ち着かないタイプなので!』


 そう言って地縛霊ちゃんは居座った。

 家の権利は結局、魔女が魔法でもぎ取った。

 その後、ヒキニートという言葉が未来で流行るらしいと尸解仙から聞いた地縛霊ちゃんは実家を出る事を決意する事それが百年前。


「ちょっと待て時代考証合わねーぞ作者。赤紙とか言ったろ」


 うるせー尸解仙、雰囲気で感じ取れー。

 そんなこんなで現在に至るのだった。

 ちなみに『』内が過去の会話である。


「読みづらかったわ、しかも、雑に流しやがって」

「懐かしいし写真撮ろうぜ写真! 浮遊霊ちゃん入れたら心霊写真じゃん!」


 吸血鬼が取り出したのは写ル〇です。


「古っ」

「逆に新しいんじゃボケェ。あ、ルシフェル撮って」

「……はいはい、集まってー、撮りますよー、はい、チーズ」


 パシャ。


「んじゃまたなー浮遊霊ちゃーん」

「ええ、またー!」


 こうして墓場を去る五人。

 後日。


「現像出来たぞー、浮遊霊ちゃんよく撮れてる。この右の』


 そこに居る恐ろしい形相のナニカ。


「いや私、真ん中ですけど」


 不老不死老人ホームに絶叫が轟いた。

 理由は二つ、一つは写真の幽霊、もう一つは何故かいる浮遊霊ちゃん。


「世の中自粛ムードなので帰って来る事にしました! 仕事もリモートワークで!」

「……あっはい、そうですか」


 こうして不老不死老人ホームに新たなメンバーが加わったのだった!

 呪いの写真と共に!


 ※後日、お焚き上げに行きました。

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