試しは空しく

 試しに頬をつねったが痛い。俺と隣で寝てる由美と俺が素っ裸なのは夢ではないということになる。俺と由美は典型的な幼馴染だ。お互い仲良しで家を行き来していて、恋とか愛とか保留のまま、お互い社会人になっても縁があったわけだけど。そして俺は、言えなかっただけでずっと由美が好きだったわけだけど。


 部屋に転がる酒の空き缶。久しぶりに由美が遊びに来て、飲もうという話になったのも、由美が酒に潤んだ瞳と頬で「幼稚園の頃からずーっと好きだよ、ヒロ君」と言ったのも覚えている。


 その後の記憶がない。責任は取るけどもっと段階を踏んでこうなりたかった。


 酒は飲んでも飲まれるな。ベタな教訓を胸に、俺は由美が目覚めるのを待っている。


  Twitter300字ss第三十九回お題……「試す」(本文300字)

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