俺が夢の中だけ美少女転生した件について~とりま頑張って生きていこうと思います~

プロローグ なんか女子になってた

瞼をゆっくりと開く。


しばらくの間、何も考えることもできずにボーっと上を向いたままだった。

それは、目の中に入ってくる光景があまりにも現実離れしたものであり、

俺自身の理解力が追い付いていなかったからだ。


世界が白一色で染まる。

それは、他の色が入る余地を許さないかのように塗りつぶされた空間。



「ん…」



しばらくして、俺はようやく体を起こした。

ええと……。


どこだここ。

……夢でも見ているのか。

ああ、ただの明晰夢か。

でも明晰夢って確か頭いい人が見るものだとか、ネットに書いてあった気がする。

ネットの情報の正誤がどうだこうだとかこの際どうでもいいけど、

俺は頭悪いからその可能性はないことにしておこう。


頭の中がボヤっとしていて、思考回路が働かない。

あ、これも頭が悪いからか。



いや、身体の調子がおかしい。



とりあえず俺は立ち上がり、この無機質な白い場所から外に出ようと考えた。

この真っ白な世界がどうも自分には眩しすぎる。

それに加え、この世界を認識するほど頭がズキズキと痛くなり、謎に身体が火照るのだ。

まるで自分の身体がこの場所を拒絶しているかのように。


身体の調子はどんどん悪化していく。

まるで酷い風邪をひいたときのように。

上手く呼吸ができない。過呼吸。

口をハアハアと犬のように開けながら、前かがみで歩く。

視線は虚ろ。

口を開けすぎているせいで、涎が溢れ出し、ただれ落ちる。

もし俺が超絶美少女だったら、一部の変態が喜びそうな光景だろう。

残念だな、俺は男だ。

汚ない、とも頭の片隅では考えることはできても、垂れる液体を啜る気力もなく、

どうしようもできない。


それでも、俺は歩き続けた。

本能的に、この場所から逃げようとしていたのだろう。

でも、その空間は永遠に続くのだ。

ただ、白で埋め尽くされるのみ。



案の定、力尽きた。

前の方に頭から思いっきり倒れたのだが、特に痛さを感じることはなかった。

身体が麻痺しているのか。

それに加え、全身が腫れている気がする。特に胸あたりが。

自分の身体の変調を、目で見て実際に確認しようと思ったのだが、

そんなことすらできないほど俺は疲弊していたのだった。



-------------



数分か、数時間か。


時間の感覚も狂っていた俺にはどれくらい経過したのかが分からなかった。


気づけば上向きで寝ていた俺は、やはりボーっとしたまま虚空を見つめる。

そして、少しずつ目を動かすのだが、今度は白い天井(という言い方が正しいのかは分からないが)ではなく、男性の顔が映った。

若く見えるが、ガタイがしっかりしており、屈強な男。

だが、そこそこ派手なアクセサリーなどを身に着けている。

うん、これは多分オネエキャラだ。うん。

人は見た目で判断するなとはよく言われるものだが、感覚でそう判断してしまった自分がなんだか嫌だ。


彼は俺が起きたことに気づくと、ニッコリと微笑む。



「おはよう、体調は大丈夫かしら」



その声はとてもやさしく、艶やかだった。

彼は謎にウィンクをし俺の方を見つめる。

うん、見た目通りのオネエキャラでした。


が。


今自分の体勢から俺自身がどういう状況に置かれているか、直ぐに理解できた。

このオネエサンに膝枕をされている。

その現実を理解した瞬間、何かが冷めていくのを感じた。

悪いが男同士の膝枕は字面だけでNGだ。

俺は今にも逃げ出したい気持ちでいっぱいだったのだが、身体が硬直してしまい立ち上がることすらできない。

それに加えて、彼に右手をがっしり掴まれてしまっていて、とても逃げ出せるような状況ではなかった。

試しに、右手をグイグイ引っ張ってみても微動だにしなかった。



「あら、もしかして怖がってる?ごめんなさいね。

よくこの身体のせいで怖がられちゃうのよね、でも安心してちょうだい。

あとちょっとで終わるからね」



俺は彼がなんと言っていたかすらちゃんと聞いていないほど狼狽えていた。

そうだ、力勝負で勝てないなら口で交渉しよう……

でも自分の口は、金魚がえさを食べようとする時にように、パクパクと動くだけ。


はい。

落ち着け俺。

落ち着きたいときは、ひっひっふー、だ。

いや、それなんか違う気がするんですが。

自分でボケてツッコミ入れるとかなんか悲しいやつだな、俺……。


うん、とりあえず落ち着け。


今更だが、俺は気づいた。

この現状に動転しすぎて気づいていなかったのだが、

先ほど、この場所を認識し体調を悪くして倒れこんだ時より、身体が相当楽になっている。

まだ、多少の気怠さは残るものの、今すぐにでも立ち上がって歩ける程には気分がよくなっていた。

そう、彼につかまれている右手から、何かが身体の中に入っていき充満していく感じ。

結構、気持ちがいい。

何だろう、この不可抗力。

見知らぬ場所で見知らぬ男に膝枕をされているという現実を忘れ、俺はその気持ちいい快感に身を委ねた(何故だろう、字面が最悪に見える)。


ボヤーっとして何も話せないでいる俺を傍らに、彼は神妙な顔をしながら独り言を始めた。

そして、虚空を見つめている俺の目をじっと見る。




「……へぇ、珍しいわね。私と同じなのに、違う……何なのかしらね?」



彼は俺を見て優しく微笑む。

とりあえず、愛想笑いをしておきやり過ごす。

多分うまく笑えずに、酷い顔になっているだろう。



「さ、もうすぐ時間のようね。もしあなたが私と同じなら、また直ぐに会えると思うから、

その時にまたちゃんと話しましょうね」



膝枕の終わりの合図だ、というかのように俺の肩をポンと優しくたたき、右手を開放する。

俺はゆっくり立ち上がるが、まだ先ほどの気持ちよさが残っており、虚空を見つめながらぼんやりと幸せな気分を味わっていたのだった。

俺はまじまじと、握られていた右手を見るのだった。


こんなに指が細かったっけ……



「じゃあね、可愛いお嬢さん」



そんな声がし、彼の姿を探そうと思い振り返ったときにはもう彼はいなかった。

360度見渡してもいない。

一瞬で消えた。


そんなことより気になったのが。



(ん、あれ……『お嬢さん』ってどういうこと……?)



反射的に、股間に手が伸びていた。

そして、何かを理解すると直ぐに胸に手が伸びた。


この場所に来た時から、謎に胸が腫れていると思っていた。

倒れる時だって、胸辺りに謎の感触があった。




閃いた。





先ずは右手は右へ、左手は左へと腕を運び、か細い指を使ってそれぞれを包み込む。

服の上からでもわかる、そこそこ大きいマシュマロは包み込もうとする指を抵抗虚しく、

少しずつ、少しずつ受け入れようとする。

俺はこのマシュマロにまるでマリア像のような包容力があることに打ちひしがれてしまう。

ああ、この2対を神として崇めようか。

日本には八百万神という言葉があるが、それは自然に存在するものに神が宿っていると考えることから、その言葉が生まれたらしい。

ならば。

俺はこの2対を信仰して崇め奉ろう。


そして今、俺は手首を動かして2対の神を捻ろうとしている。

ああ、神様を捩じるなんてなんて罰当たりな。

だが、未知には抗えない人間的本能。

知ることが人間の存在意義。

手首を、くいっと少し回転すれば、マシュマロは全く抵抗することなく、

共に回転する。

もっと回転させてみる。

ああ。

その感触は身体全身にすぐさまに伝わり、頭の中で何かがドバドバ出ているように思えた。


快感、だ。


そして閉じていた口は自然と開き艶やかな吐息が漏れる。

抗えない涎がツー、っと自由落下する。



俺の世界、始まったな。



ああ、我が息子よ。

父親は新たな境地に辿り着いてしまったのだよ。

無限ピストン運動はもう終わりだ。

息子、お前はよく快楽のために働いてくれた。

あの日のこと、覚えているぞ。

一日にできる自家発電の限界数に挑戦しようとしたら、5回目終わったときに股間が痛くてずっと悶絶していたあの日のことを。

災難だったな……



だが、お前はもう自由だ。

ありがとう、そして、さようなら。




俺、何言ってるんだろう。




「って、なんだよこれ!!!!!女になってるじゃあああんん!!!」




俺は、甲高い女子のような絶叫を出すと共に、目の前が真っ暗に暗転していくのを見ていた。




--------------



その部屋は薄暗く、端子が円を描くように大量に接続してあった。

真ん中には、一人の男が鎮座している。

彼の手が空中で素早く動くと、彼の目の前には大量のスクリーンが出現した。

そこには、彼が知っている世界のすべてが映し出された。


「役者は揃った。この世界を崇高なる世界へと導く計画。


世界は始まった。さあ、全てを変えよう」


————-

はじめまして。

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よろしくお願いします。

よく書き直しするのでごめんなさい。

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