すみません

 休日の昼間。

 自宅のリビングで寝ていると、「すみません」という男の声で起こされた。

 テーブルへ視線を向けると、見知らぬ若い男女が席に坐っていた。

 家族の知人かと思い、ふたりに近づくと、女が言った。

「注文いいですか? ホットコーヒーをふたつお願いします」

 女の言っていることの意味が分からず、私はとまどった。

 民家で飲食店を開いている人もいるが、我が家はそんなことをしてない。

 何の不自然さもなく、私に注文をした女が、無言でこちらを見つめている。

 急に奇妙な状況へ置かれ混乱した私は、「お待ちください」と頭を下げて、キッチンへ向かった。

 どうしたものかと思案をしている私の背中越しに男が言った。

 「雰囲気のいい店だね」と。

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