第4話 スキー場

「てか、なんでずっとここにいんの?」




この丘?を降りようとした際にアナリスはそう聞いてきた。




「え、危ないかなぁって」




「それじゃあ一生森の中にいたと思うよ」




彼女はそう返す。本来なら今日降りるつもりだったのだが。




「まぁ、いいや、それじゃあ降りようか。よし、準備して」




準備?行く準備ならもうできてるはずだが。




そう言うとアナリスはこちらに手をかざす。


すると、黄緑色に光るものが手の中に浮かぶ。




「え?何それ…?」




「ん?魔法、身体強化の」




彼女はぶっきらぼうに返すとそれを俺にぶつけてくる。




ぶつけられた瞬間、突如体が軽くなるような浮遊感と共に、全身の筋肉が熱くなったような気がした。




「どう?効くでしょ?」




アナリスはそう言うと、自身にもそれを胸に当てる。




「よし、降りるよ」




アナリスはそう言いながら、すさまじい速さで木々の間を抜けていく。




「ちょっ!?まって!」




俺もあわてて追いかけようとする。


到底追いつけない速さだと思ったが、足を前に出した途端に強力なエネルギーを足に感じたかと思うと、一気に体が前へと進む。




そのまま勢い余って木にぶつかりそうになったが、あわてて体を左へと寄せ、木への衝突を避ける。




「遅いよ!速く!」




アナリスの声が遠くから聞こえる。それを聞いて急いで足を踏み出す。今度はぶつからないようにしないと。




アナリスの跡を追いかけながら考える。


この魔法は確か中位魔法だ。[身体強化]とか言う。


それにアナリスという名前。賢者。彼女がホンモノならば、1人でドラゴンを相手に余裕で倒すことのできる超強い冒険者…ということになる。


そしてその冒険者の特徴は紫色の髪。だとしたら心強い。




アナリスの跡を追っていると不意に森の木々がなくなる。


どうやら平原に出たらしい。だが、奥のほうには、なにやら変な物がある。


椅子のように見えるが、それはフックみたいなので宙に浮いている状態だ。


そのフックは高い位置にある黒い紐のようなものにかけられている。




あれが何かを考えている時、奥のほうにアナリスの姿が見えた。


追いついて話しかける。




「あれは何…?魔物?」




「ん?あぁ、あれ?あれゲレンデっていうらしいよ。簡単に言えばこの丘を上がったり下ったりが楽になる道具」




ゲレンデ?この世界の機械みたいな物か?ういえば魔物で思い出したが、アナリスに会う前に、なんか変な魔物に出会ったはずだ。




「あと、なんか変な魔物見かけたんだけど、なんか鼻の回りが大きくて…」




俺が特徴を言い終える前に彼女が答える。




「あぁ、それ多分イノシシだよ。イノシシ。この世界、まぁこの国の森とか山とかによく生息してるらしいよ。あとあれ魔物じゃないから大丈夫だよ、まぁ、動物的な立ち位置?あとこの世界で魔力を持った野生の魔物はまだ見てないからいないよ、多分」




動物か。そういえば俺の世界には、あまりいなかった。ほとんどが人間に対して害のある魔物というやつらばかりだから。だけど、この世界にはいないらしい。多分らしいけど。




「んー、やっぱこの時期だと人いないか~、ここ人気のスキー場ってあったんだけどな」




また知らない単語スキーがでてきた。スキーが何かを聞く前に




「あ、スキーってのは雪が降ってる時にいたみたいなのに乗って雪山を滑る遊びね、あれなんで私達の世界になかったんだろ…」




俺の心が読めるのかな…?アナリスは俺が疑問に思ってたことを答えてくれた。




「人、この辺じゃいなそう?」




「多分ね、今7月10日だから。今2時半で人を見かけないってことはこの辺にはいなそうだね」




アナリスはそう答えたあと、奥のほうを見て




「とりあえずあそこ座らない?」




と言う




「だって君まだこの世界について全くといっていいほど無知でしょ?立ち話ってもなんだしね。あと…私が話すこと全てに質問してきそうな気がするから、立って話すのめんどくさい」




だって分かんないから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る