第5話


しばらくあって、僕は白シャツ管長を訪ねて行った。

灰色さんの事が気になっていたからだ。

2階に上がると、怜ちゃんが部屋の掃除をしていた。

「怜ちゃんに会いたくなったから、来ちゃったよ。」

「あ、ドリームさん。そやろ、そやろ、その気持ち解るわ。こんな可愛い女の子の顔1日に1回は見ないと、発狂しそうになるやろ。みんなそう言うてるわ。」

「はあ、そうなん。」

「それで、管長は?」

「今、自分の部屋にいてるけど、呼んで来よか。」

「うん、頼むわ。その前に、あの灰色さんはどうなった?」

「それがな、大変やったみたいやねん。あれから内には来てなかったんやけど、人に聞いたらな。やっぱり旦那さん、ガンやってん。それで、ビックリしたんやけど、検査の結果出た3日後に死んでしもてん。もう末期やったらしいわ。灰色さん可哀想に。みんなでお葬式には行ってんけど、可哀想で見てられへんかったわ。」

「そうか、それは可哀想やな。でも、管長は、落ち込んでへんかったか。」

「3日ぐらい、しょんぼりしてたわ。葬式の時に、灰色さんお父ちゃんにお礼言ってたけど、間違っててもガン違うって言ってくれて、ありがとうって。」

「そうか。灰色さん、そんなん言ってたか。そんでも、管長も辛かったやろなあ。」

「可哀想やったわ。でも、お父ちゃんは、こんなお寺みたいなんやってるから、しょうないわ。」

そう言った怜ちゃんも、どことなくしんみりとした雰囲気で、掃除機をあてている。

僕は白シャツ管長を喫茶店に連れだした。

少し気分転換でもした方がいいだろうと思ったからだ。

先日の喫茶店は、意外にも普段はお客さんが入っていて、お姉さんもコーヒーを出したり、ランチを作ったりと、忙しそうである。

「ドリーム君。僕のやったこと間違ってると思うか。」

「いえ、管長のやったことは、間違ってはいないと思います。事実、灰色さんも管長にお礼を言っていたそうですね。」

「うん、それはそうやけど。」

「この前、管長が言ったように、その日は、ゆっくり眠れたと思うし、管長だって、誰だって、人の病を治すことなんかできないですもん。」

しばらく、何度も無言で小さく頷いていたが、こう言った。

「でもな、僕は、一応はお寺みたいなところの管長やねん。宗教っていう範囲で僕の会を括っていいのかどうか分らないけど、一応は宗教的な団体やろ。それはやっぱり人を救う事を目的としなきゃアカンと思うねん。でも、僕は人を救うなんてことをやったことがない。やったことが、ないんや。僕は管長なんて偉そうな肩書つけてるけど、何もでけへん管長や。そんなん存在意味がないわ。」

「管長、そうとう凹んでますね。でも、灰色さんも一瞬は救われてますよ。それでいいんじゃないですか。そんなん永遠に救われるなんてことは、考えられませんよ。」

「そやけど、まだ1人も救ってないんや。1人もや。」

「でも、みんな管長さんが好きでやってきてるじゃないですか。お母さんも怜ちゃんもお父さんが大好きやし。ということは、みんな管長さんに少しは救ってもらってると感じてるんじゃないですか。そんな大げさな救いじゃなくて、ほんのちょっと生きるのが楽になるような、そんな救いを貰ってるんだと思います。」

「ありがとうな、ドリーム君。でも、オケケ様にシンクロしてなんて言ってるけど、本当にシンクロしたと思えたこともないねん。何となく、何となく自分でシンクロしたと納得してるだけなんかもしれへんのや。そしたらどうや、僕のお寺のようなものの教義自体が崩れてしまうわ。それにこの世で救われるんじゃなくて、来世でモテモテの金持ちになれるなんて、そんなん頼りない救いやろ。今、みんな苦しんでるのにさ。僕は管長には向いてないんやろな。ほんま。」

「何を言ってるんですか、管長も前に言ってたじゃないですか、今の教義も管長の成長と同じで、管長のレベルがあがると教義のレベルも上がって行くんだって。だから、これから管長さんも教義もどんどんレベルアップしていけばいいだけの話じゃないですか。それに、来世で救われるなんて教義も、そんでいいんじゃないですか。親鸞聖人だって、南無阿弥陀仏と唱えようと信心を起こしたら、死んだ後に阿弥陀様に救ってもらえるってことを言ってるんでしょ。親鸞聖人でも死んだ後なんだから、管長も死んだ後に来世でモテモテの金持ちになるっていう教えでもいいんじゃないですか。」

「うんうん。ありがとうな。」

そう言いながら、何度も頭を小刻みに振る。

管長もいろいろ悩みがあるのだろう、その悩みが今回の灰色さんの出来事で一気に噴き出したのだろう。

いつもはミルクを入れないコーヒーを飲んでいた白シャツ管長がミルクを入れて角砂糖を3個入れたコーヒーをチビリチビリと啜った。

「管長、コーヒーの趣味変わったんですか。」

「いや、こうするとな缶コーヒーみたいで美味しいことに気が付いたんや。それにな、こうやって濃い味のコーヒーを飲んだらな、その後に飲む水がさっぱりとして美味いんや。」

「はあ。水がですか。」

「しかし、水ちゅうのは、すごいな。」

「はあ。すごいですか。」

「朝起きるやろ。そしたら喉が渇いてるやん。それでキッチンの水道の栓を回したら、水がジャーって流れてくるやろ。あれ、すごいな。」

「はあ。」

「なんで、あんなにジャーって流れるんやろと思うわ。僕なんか何もしてないねんで、そやのに、他の誰か知らん人が、水がジャーって流れるようにしてくれはったんや。有難いなあ。そう思わへんか。」

「確かに、飲用できる水がいつでも飲める国っていうのは、少ないかもしれないですね。」

「そやろ。それやのに、僕はいつも朝起きて顔を洗う時に、どうしたらいいか分らなくなるんや。」

「どうしたらって、水で顔を洗ったらいいじゃないですか。」

「そら洗うよ。でも、石鹸や。石鹸で洗うやろ。歯も歯磨き粉で磨く。朝にシャワーなんてする人もおるやろ。シャンプーとかつけて。台所でも洗剤で食器を洗ってる。怖いと思もわへんか。」

「はあ、怖いような、、、。」

「うちでもシャンプーは年に何本かは使ってるよ。何本ぐらいかな3本ぐらいか。それが排水管を通って川に流れるんや、そんで海にたどり着く。うちだけやないで、それが大阪全体やったらどうや。めちゃくちゃ多いで。どのくらいや、、、トンやな、1トンか、いやそんな少ないことはないわな、そしたら10トンか、いや、もっとか。トンでええのかな、リットルでいうのかな、リットルやったら、どうや、、、、。ドリーム君解るか。」

「いや、それは想像できないですけれど、兎に角多いってことを言いたいんですよね。」

「そうや、兎に角多い。そんなシャンプーを海にドボドボと捨てているイメージが取れないんや。顔を洗ってる時も、シャンプーしてるときも、ドボドボの映像が目に見えてくるんや。どうしたらええ。」

「いや、どうしたらええって、どうしようもないですよ。仕方ないですもん。それより、管長最近ちょっと疲れてるんとちゃいます。そやから、そんなイメージが取れないんですよ。ちょっとゆっくり奥さんと温泉でも行って来たらどうですか。」

「そうかなあ。そういえば温泉なんて、いつ行ったやろ。そやけど、うちのお寺みたいなやつも結構経営が苦しいからなあ。怜ちゃんもアルバイトでもして助けたろかって言ってくれてさ。嬉しいやら悲しいやらで複雑やわ。」

「そうなんですか。結構この業界も厳しいんですね。」

「お守りでも売ったろかな。」

「いやいや、それは止めてください。管長さんの信念に反しますやん。」

「そうやなあ。お守りはやっぱり売ったらあかんなあ。」

「そしたらストラップはどうや。」

「それはええと思うんですけど、誰か買う人いますか。」

「そうか、買わんか。そしたらビジネス街やし、昼間に弁当でも売るか。祈祷済み弁当ってコピーなんかもつけてさ。」

「それはええんとちゃいますか。そやけど最近の弁当は単価安いですよ。まあ上限がワンコインですわな。」

「ワンコインって500円かいな。それはまた厳しいな。ご飯の質は落としたくないしな。

ということは、おかずを安く上げて、、、玉子焼きと、あと何や、何がいる。」

「それも1種類じゃなくて、何パターンか用意してお客さんに選んでもらえるようにした方がいいですわ。」

「そうかいな。そしたら、玉子焼きやろ、、、、そんでハンバーグか。いやハンバーグは高そうや。でも、見た目も大切やしな、、、。あかん1パターンも出来へんわ。」

「そういうことは、奥さんとか怜ちゃんの方が詳しいんちゃいますか、管長より。」

「そうやな、ええこと思いついたわ。そしたら僕は帰って弁当の内容考えるわ。今日はありがとうな。」

そういうと、喫茶店を出て行った。

お寺のようのものも、結構厳しいんだ。

そう思うと奥さんや怜ちゃんが管長を助けて手伝っているのが解る。

来たときは、やや元気がないように思えたけれども、弁当の話で少しは元気がでたようだ。

その弁当が爆発的に売れるとは思えないけれども、幾ばくかの日銭は稼いでくれるとは思う。

ビジネス街だから平日の食堂は混んでいるからね、弁当で済まそうという人も多いだろう。

少しは管長の気も晴れたというより、僕の気が晴れた。

まだ知り合ってからそれほどの時間も経っていないのだけれど、どうも心を許せる雰囲気が管長の家族にはある。

宗教という看板を上げている団体にしては、勧誘や束縛もない。

常識をもってきちんと生活をしている奥さんと、明るくて思いやりのある怜ちゃん、それに面白い考え方のする白シャツ管長。

白シャツ管長の面白い考え方も、それは何か新しいものを探し出して皆に伝えようとする探究心から発しているものだ。

みんなに道を説く指導者でもあり、道を求める冒険家でもある。

そんな管長を優しく見守る家族。

いつしか僕も結婚するなら、こんな家庭を気づきたいと願うようになっているのかもしれない。

管長が出て行った後に、僕もお店を出た。


それから、3、4日経ったころだろうか。

土曜日のお昼過ぎにお寺のようなところに行った。

道場から何やら変な声が聞えてくる。

どうやら歌のようである。

「トゥーナーイ、トゥーナーイ、、、」

管長の歌が聞こえる。

これは僕でも知っているウエストサイドストーリーだ。

白シャツ管長と奥さんと怜ちゃん、それにシマウマ柄さんだ。

「あ、兄ちゃん、こっちこっち。あんたも一緒にやらなあかんで。」

「いや。これは何なんですか。」

「ドリーム君。今のどうやった。」管長が大声で僕に言った。

「どうやったって、これは何なんですか。」

「何なんですかって、ウエストサイドストーリーやん。」

怜ちゃんが横から、汗をぬぐいながら、これまた大きな声で言う。

「いや、それは何となく解るんですけれど、何でこんなことをしてるんですか。」

「そうか、まだ君には説明してなかったな。じつはあれから弁当を昼間に販売してるんや。」

「へえ、そうなんですか。それで売れてるんですか弁当は。」

「まあまあやな。思ってたよりは売れてるけどな。薄利多売ってことや。」

「そんで、このウエストサイドストーリーは、何の関係があるんですか。」

「はは。君にも解らんか。そうか、そうか。実はな、これは僕の発案なんや。ここ本町にはぎょうさんご飯食べさすお店があるやろ。でも、弁当を買う人も多いんや。何でか解るか。」

「それはお店も多いけど、人も多いですからね。短いお昼時間にわざわざ並んでお店に入って食べなきゃいけないでしょ。だからお弁当を買って公園とか会社に帰って食べるんじゃないですか。」

「まさにそうや。それ解ってて、このウエストストーリーが解らんか。」

「はい。解りません。」

「そうか。じゃ説明しよう。お弁当を買ったは、食べるところが公園やった場合はどうや。晴れてたらええで、これが、もし雨やったらどうする。まさか傘さして食べへんやろ。そしたら、弁当買って会社に戻って食べる場合はどうや。折角の昼の休みに、仕事の延長みたいな机でお昼を食べやなあかん。それに電話なんか掛かってきたら、食べてる暇ないわ。そしたら、食べるところがあったら、そこで食べようと思うやろ。僕のところで弁当を買ったら道場でお弁当を食べることが出来るちゅうサービスを考えたんや。これやったら雨でも食べられるし、会社の落ち着かへん机で食べることもないちゅう訳や。どうや。」

「なるほど、それはいいですね。さすが管長も良いところをつきましたね。」

「そうやろ。」

「そんで、そのトゥナーイは、どんな関係があるんですか。」

「ここが僕のサービス精神の旺盛なところや。お昼の休憩時間は大体1時間やろ。お弁当なんて15分あったら食べてしまうわな。そしたら後の45分はどうするのよ。ぼんやり道場で座ってるぐらいしかすることないわな。そこで、このトゥナーイや。休憩している間にミュージカルを楽しんで貰おうっていう算段なわけだよ。だからこうやって練習してるんや。」

「そやから、兄ちゃんも一緒に練習しよ。」

シマウマ柄さんが僕に促す。

「いや。僕は仕事があるし、それは参加できないです。」

「そうか、うち折角マリア役やのに。」

それを聞いて僕は立っていることが出来ないぐらい笑った。

まさかシマウマ柄さんがマリア役とは、そんなマリアは誰が見たいのだろうか。

怜ちゃんなら、まだ男性サラリーマンも楽しめるのかもしれないけれど。

僕があまりにも笑い続けるものだから、シマウマ柄さんも笑い出した。

「可笑しいと思てるんやろ。うちも可笑しいと思うわ。そやけど管長さんのためやと思ってやってんねん。」

「でも、管長。お弁当を買ってくれる人は、ひょっとしたら毎日買いに来る人もいるんじゃないですか。それで毎日ウエストサイドストーリーやったら飽きませんか。聴いている人も。」

「そこや。そう思って、ミュージカルと時代劇と歌謡ショウとマジックとかさ、いろいろ考えてる訳なんや。」

「でも、それって出来ますか。毎日違った出し物するなんて。」

「そやから僕の知り合いとかに頼んで色々やってもらおうと思ってるねん。僕の担当はミュージカルや。他にも学生時代の友人とか、近所の老人ホームなんかに出張している人に声かけて来てもらう計画や。」

「そうなんですか。それはいいかもしれないですね。やりたい人がやるんだったら。やりたい人って結構多いのかもしれないですね。」

「じゃ。練習を続けるからね。」

そう言って皆は道場の端っこに黄色いビニールテープの貼られたステージらしきところに集まって歌の練習を再開した。

中央で白シャツ管長とシマウマ柄さんが両手を握り合って歌う。

「トゥーナーイ、トゥーナーイ、、、、」

これは吉本新喜劇以上にある意味面白いかもしれないぞ。

そしてその両脇で怜ちゃんと奥さんが、タコ踊りのように腰をクネクネさせて、トゥーナーイに合わせて踊っている。

トゥナーイにタコ踊りのクネクネは合っているのだろうか。

真剣な表情でトゥナーイ、クネクネとやっているので、また可笑しくて倒れそうになる。

怜ちゃんも真剣だ。汗を肩にかけたタオルでぬぐうと、上気した赤い頬に色気が差す。

みんな真剣に汗だくだ。

シマウマ柄さんは、柄が横に伸びて、伸びきったまま汗でピッタリとシマウマ柄のシャツが体に張り付いている。

「こんなマリア見たい人いるかな。」

こころの中で呟いた。

弁当の事など聞きたかったが、そのまま帰ることにした。

それにしても、弁当も全く売れないという事はないだろう。

場所的にも平日はビジネスマンで溢れている街だ。

それに、管長の言うように、お弁当を食べる場所を提供してくれるというのは、有難いサービスかもしれないだろう。

ただ、ミュージカルだか何だかの、サービスは疑問が残るところではある。

白シャツ管長も、これで少しは生計も楽になるといいのになと思う。

金銭的な理由で白シャツ管長の家族が揉めたりするのは見たくはない。


3日後、やはり気になるので、仕事の合間に管長の元を訪ねた。

道場のビルの1階の階段のところに1メーターばかりの長さの板の上に弁当を並べて、怜ちゃんが声を出して売っていた。

見ていると次から次へと弁当は売れている。

そして買った人の半分は2階の道場へ上がって行った。

「怜ちゃん、弁当売れてるみたいやね。」

「ドリームさん、様子見に来てくれたんや。ありがとう。」

「そうや、管長にいろいろ言ったけどさ、心配になってな。折角やからお昼ここで食べていこうかな。」

「ありがとう、わざわざ仕事やのに。」

板の上に並べらられている弁当を見ると、結構な種類がある。

少しずつ中のおかずの組み合わせを変えて種類を増やしているのである。

なかなか本格的に弁当屋をやってるようだ。

それに、普通の弁当屋であれば、ハンバーグやフライものなどは冷凍などの仕入れ商品を使う場合が多い。メインは手作りでも添えてあるマカロニサラダや野菜の煮物などは、ほぼ業務用のものを使っているのが普通である。

でも、怜ちゃんの弁当は、一見どれも手作りしているように見える。

「怜ちゃん、これって手作りなんか。」

「そうやで、解った。一応これが管長のこだわりなんや。でも、大変やで作るの。今日も朝から仕込で疲れたわ。」

「そうやろうな。手作りはすごいな。他の弁当屋とは違うわ。管長も本気やね。」

「そうそう、お父ちゃんは、何でも本気やで。そやから、弁当も悩んで考えてたわ。」

これなら売れる、そう感じた。

何故なら見た目が素人っぽく、かなりのボリュームがある。

そこにコンビニ弁当や他の弁当屋さんとの違いがある。

同じ食べるのなら、温かみのある味がいい。

それにワンコインなら高くはない。

食堂で食べることを考えたら、安いだろう。

そう思いながら弁当を選んでいると、1番左端の列には一風変わった弁当が並んでいる。

そして手書きのPOPに、「怜ちゃんスペシャル」と書かれていた。

「怜ちゃんスペシャル、、、。これ管長のアイデアやな。」

「誰でも解るわな。うちのお父ちゃん知ってる人は。男のお客さん向けに作ったんや。そやけど、うちみたいな可愛ない女の子の弁当食べたいかなと思うかなあ。」

「いや、怜ちゃんは可愛いよ。そんで売れてるの、怜ちゃんスペシャルは。」

「それが売れてるねん。作戦も効いてるんやろか。」

「作戦って。」

「作戦いうたらあれやん。お色気作戦やん。ドリームさん、気いつけへん。」

「そういえば、今日は何か可愛いな。女の子っぽい。」

「そやから、作戦やん。ミニスカートはいてるやん。うち足短いからミニは嫌やねんけどお色気作戦やいうて、はかされてるねん。彼氏も見つかるかもしれへん言われて。」

そういえば、いつもはスエットとかジーパンをはいている。

でも、今日は膝上10センチぐらいだろうかミニスカートである。

「似合ってるよミニスカート。じゃ、怜ちゃんスペシャル貰おうかな。」

「お色気作戦成功!」

ガッツポーズをして弁当を渡してくれた。

2階へ上がると道場には長いテーブルとパイプ椅子が並べられていて、7割ぐらいの席が埋まっていた。

その端っこに座る。

辺りを見回すと、弁当を食べている人、食べ終わって休憩の時間調整をしている人など、管長の思惑通りの状況だ。

白シャツ管長は、テーブルの上のお茶の入ったやかんをチェックしたり、食べ終わった弁当の容器を片づけたりと忙しそうだ。

「ドリーム君、来てくれたんだね。」

「ええ、あれから管長のことが気になりまして。それに弁当屋のことも、どんな具合かなと思って。」

「そうか、ありがとう。それが思った以上に売れてるんや。1日に80個は完売や。」

「へえ、80個ですか。それじゃ1個500円やから4万円じゃないですか。それが20日間やから月に80万円ですか。すごいですね。」

「そうやろ、僕もビックリしてるねん。まあコスト結構掛かってるからな、儲けは少ないけど、だいぶん助かるわ。やっぱりお金ってええなあ。最後はやっぱりお金やな。」

「はあ。まあそれは良かったですね。」

「そうなんや。良かったわ。ほんまにお金ってええもんやなあ。」

「はあ。この後はオケケ寺の集会ですか。」

「そうや、今はすごい忙しいわ。いっそオケケ寺やめて弁当屋にしたろかな。夜はスナックや、怜ちゃんのお色気作戦で独身のサラリーマン来るんちゃうやろか。」

「管長、それはアカンでしょう。」

「冗談やがな。そやけど、ええ考えやけどなあ。」

そう言いながら、お茶のやかんを持ってテーブルを回りに行った。

「あ、そうや。今日焼肉行くから帰りに寄らへんか。」

管長がテーブルを回りながら言った。

「行けたら電話します。」そう答えた。


さて、怜ちゃんスペシャルでも食べますか。

プラスチックの弁当箱にはメモが輪ゴムで挟んである。

「今日もお仕事ご苦労さま。ガンバッテネ。」と怜ちゃんの丸文字で書かれていた。

面白いね、これはちょっと響くね。

怜ちゃんが流れ作業で書いたことは想像できても、何となく嬉しい。

僕がメモを手に取って見ていると、隣にいたサラリーマンが声を掛けてきた。

弁当を食べた後の噴き出た首筋の汗を拭きながら少し僕の方に体を傾けて、「あなたも、あの女の子のファンですか。」と聞いた。

「ファンですか。いや、ファンという感じではないのですが、このメモが少し嬉しかったので。」

「そうでしょ。私もこのメモが嬉しいんですよ。私の会社にも、あの女の子のファンがいて、みんなでファンクラブを作ろうかなんて話をしているんですよ。」

「ファンクラブですか。怜ちゃんの。」

「あ、怜ちゃんっていうんですか。私らそれも知らないんですけど、みんなのマドンナ的な存在なんですわ。あなたその怜ちゃんの関係者なんですか。」

「いや、関係者というか、家族的に知り合いなんです。」

「へえ、いいですね。」

サラリーマンは、僕が怜ちゃんと知り合いだと解ると、少し寂しそうな、先を越されたような表情で、それ以上僕に話しかけはしなかった。

お色気作戦も功を奏しているのか、怜ちゃんのファンも出来ているということは、それは解る気がする。

僕でも可愛いと感じるし、このメモがなにより作戦として上手い。

さて、弁当だ。

透明なプラスチックの蓋の上から中が見える。

一面に薄焼きにしてある玉子焼きが乗っかっている。

ご飯の上に薄焼き玉子か、下はあるいはオムライスのようにケチャップ味のご飯だろうか。

そして、何より最初に目に留まるのが、薄焼き卵の上にケチャップで書かれたハートマークだ。

白シャツ管長も、よっぽどベタな演出が好きだね。

例え他の人が考えたとはいえ、これを怜ちゃんが売ってたら、隣のサラリーマンのように、ちょっとは嬉しくなるというものだろう。

僕も少しばかり嬉しい。

そう思うと、少しばかり笑えた。

蓋を開けて、そっと薄焼き玉子を箸で割いてみると、下には白いご飯とハンバーグや野菜の煮物や厚揚げの甘辛く炊いたもの、漬物などが敷き詰められていた。

つまりは普通のハンバーグ弁当の上に、更に薄焼き玉子を1枚乗せた仕掛けになっている。

これは中々面白いアイデアだ。

薄焼き玉子を割ると下から出てくるおかずに驚くという仕掛けも今までにない面白さがあるし、薄焼き玉子自体に砂糖と塩で味付けをしてあるので、その玉子そのものもおかずとして白ご飯に合う。

これだったら、お弁当屋さんとして本格的にやっても商売としてなりたつだろう。

スナックをやるという管長の冗談も、案外にいけるかもしれない。

「怜ちゃん、あの弁当中々良かったわ。あれ管長が考えたんやろ。」

帰りに声を掛けると、「ありがとう。でも、あれうちが考えたんやで。あのメモとかどうやった。こころにズキュンと来た?」

「ズッキューン。もう僕のこころもイチコロや。」

「そうやろ。それにあれオムライスと思ったやろ。でも、ちゃうねん。あれもうちが考えたんやで。」

「へえ、怜ちゃん中々やるねえ。」

「そうやろ、色々悩んで作ってん。でも、彼氏は出来へんねん。何でやろ。」

「そうやなあ。この辺はサラリーマン多いしなあ。どこか大学の近くとかで弁当売ったらどうや。若い男の子ぎょうさんおるやろ。」

「あ、そうか。お父ちゃんに相談しよ。そしたら、ドリームさん、お仕事ガンバッテネ。」

悪戯な目でからかっているのだろうけれど、少しばかりいいものである。


その夜、僕は管長の誘いに乗って焼肉屋にいた。

前に行った焼肉屋ではなく、チェーン店の食べ放題のお店だ。

「いやあ。やっぱり食べ放題はいいものだね。」

管長がいつになくハイテンションでアメリカ産だかオーストラリア産だかの肉を網に乗せる。

「昔僕の友人が、食べ放題というのは、食べる自由も、食べない自由もあるから、それが気楽なんだと言ったことがあるが、うちでは違うぞ。思いっきり食べるんやで。」

「制限時間120分やしね。ドリームさん時間計っといてね。いざ、勝負!」

「いざ、勝負、勝負!」お母さんも、今日は楽しそうである。

「まずは、ビールで乾杯!」

斜め向かいのテーブルにお母さんと幼稚園ぐらいの女の子と小学生低学年の男の子が座った。

お父さんは仕事なのだろうか。

こういう日はチェーン店の焼肉屋も選択肢の上位に占めるのは、どうも焼肉屋も安くなったものだ。

昔は焼肉と言うと特別な御馳走だったんだけれどね。

それが最近は、子供は半額だとか、無料だとかで小さい子供を連れた家族には、持ってこいの外食だとか。

するとお母さんが子供たちに言った。

「はい、頂きますしますよ。頂きまーす。お父さん、ありがとう。牛さん、ありがとう。」

男の子と女の子が可愛い声で一緒に頂きますをした。

「可愛いね。」怜ちゃんが言った。

「最近は、頂きますもしない子供が多いけど、あの家族は立派やね。」お母さんも目を細めて子供たちを見た。

すると今までハイテンションだった白シャツ管長が、背中を丸くしてヒソヒソ話をするように言った。

「危険や。あれは危険な発想やと思わへんか。」

「いや、危険て、何が危険なんですか。」

「危険て、頂きますや。というか、牛さんありがとうや。」

「はあ。でも、どうしてそんな内緒話するみたいに声小さいんですか。」

「いや、声大きかったら、あの家族に聞こえるやろ。」

「はあ。でも自分の考えがあるんやったら別に聞こえてもええんちゃいますか。」

「いや、あの幸せそうな家族見てたら、そんなん、よう言われへんやろ。」

「じゃ、言わなければいいですやん。」

「いや、言わしてほしいねん。」

白シャツ管長は、おしぼりをカーテンのようにして口の前に広げて、喋っていることを隠しているつもりらしい。

「お父ちゃん、そんなん余計に不自然やし。」

「そうか、そしたらこっち向いて話すわ。」と壁の方に向かって喋りだした。

「それも、可笑しいですけど。」僕が言ったが話し続ける。

「焼肉をやな、牛に感謝して食べるなんてことは、こんな考え広がったら危険や。」

「そやけど、感謝して食べるんは、ええことちゃうの。」怜ちゃんも壁に向かってしゃべる。

だから、壁に向かって喋るのは可笑しいですけど。

「あのね、一見牛に感謝して焼肉を食べるちゅうのは正しいように思うやろ。何も考えてない人は、何となくそれが正しいと思ってるねん。」

「感謝したら、あかんということですか。」

「そうや。感謝して食べたらアカン。」

「そやけど、牛さんにも尊厳があるじゃない。その牛さんに敬意を表して感謝して食べるのは可笑しないと思うわ。」お母さんが反論するように壁に喋った。

「尊厳ゆうんやったら、牛を殺したらアカンやん。牛かて殺されたくなかったんやで。そやのに殺されて、切り刻まれて、そんで食べられるんやから堪ったもんちゃうで。」

さらに声をひそめて壁に向かって喋る。

「この前な、ネットで誰かが書いた絵本を紹介しててんけど、牛を食べることを、命を頂くことやとかなんとか書いてたわ。だから感謝して食べやないけませんなんてさ、あれは、アカン。不遜な考えやと思うんや。」

「そうかなあ。」怜ちゃんもお母さんも、納得がいかないようである。

「牛さんも豚さんも、本当は食べられたくなかったんや。それでも、人間に食べられるんや。食べられるちゅうことは、どういうことかというと、殺されるということや。つまりは、誰か知らない人に殺してもらって、それを食べてるということは、食べてる人も同罪やと思うねん。牛1頭殺した罪というのは、どのくらいやろう。数値とか比較では、中々言えへんけど、えらいことやで。それをやな、綺麗なテーブルの前に座って、『頂きます。ありがとう。』なんて言ったぐらいで帳消しになるやろうか。僕はなれへんと思う。焼肉に行く朝から5分おきに土下座して『ありがとう。』って何千回も言うんと、ちゃうねんで。

テーブルの前で1回だけ『感謝します。』っていうだけやで。それが1頭殺すんと、つろくするか。」

「そやけど、牛も食べやんと人間も生きていかれへんやん。」

お母さんも壁に向かってヒソヒソと反論した。

「いや、それは違う。世界中にベジタリアンという人がおるやろう。あの人たちは、ベジタリアンになってから、すぐに死んだかというと死んでないやろ。ベジタリアンになっても何十年も生きている。つまりは、牛や豚を食べなくても、この人間の身体を維持して行けると言う訳や。つまりは、人間は、牛も豚も殺さなくても生きて行けるんや。それでも、殺して食べる。何でか解るか。」

「さあ。そやけど、お父ちゃんも焼肉喜んで食べてるやん。」

「そうや、喜んで食べてる。そこが答えや。何で喜んで食べてるか。それは、美味いからや。牛も豚も美味いから食べるんや。もっというたら、牛も豚も殺さなくても人間は生きていけるけど、美味しいから、わざわざ嫌がるのを殺して食べてるんや。それって、ものすごいエゴちゃうか。ものすごい欲やで。究極の欲。それを、ちょっと感謝したぐらいで、ええ人ぶって、そんなんズルいと思うんや。感謝したから食べても許されるなんて、無意識の内に自分を納得させてるだけや。自分への言い訳。それだけならまだしも、その行為を人に要求するなんてことは、物事の本質なんてどうでもいいから、善人ぶって生きろって教えているようなもので、悪いことを勧める宗教家と同じや。」

「お父ちゃんは、ええ宗教家なん。そやけど、どうなんやろ、ドリームさんはどう思う。」

怜ちゃんが僕に振った。

「管長さんのいう事は、理屈は通ってるように思うけど。そしたら、感謝しないで、どういう気持ちで食べるんですか。」

「しっ。ドリーム君、壁に向かってしゃべらんと聞こえてしまうがな。それはな、人間の欲で食べるんや。だから、その欲を丸出しにして食べることや。思いっきり欲を出したらいい。お前は美味いから食うんや、ザマーミロって言いながらね。何なら、牛と決闘してもいい。その方が、納得もできるやろ。お前が負けたから食うんやぞって牛に言える。」

「管長さん、牛に勝てますか。」

「そうやな。大人の牛やったら、負けそうやから、子牛にしてほしいけどな。」

「子牛でも、向かってきたら怖いですよ。」

「ほんまやな。僕も素手では無理や。そやから、ナイフかピストルが欲しいな。」

「はあ。かなりのハンデキャップですね。」

「いや、ナイフでもアカンな。汗でナイフの柄がベトベトなって、うっかりしたら差すときに手が滑って、逆にやられてしまう。」

「それは、仕方ないですやん。決闘なんですもん。」

「いや、そうやけど、負けたないねん。負けるちゅうことは死ぬってことやからな。そうや、ピストルや。ピストルが欲しいわ。そのピストルで、パンって打つんや。そして言うね。お前を食べるぞってね。お前は美味いから食べるんやぞってね。すると牛は悔しそうに僕を見るだろうね。でも、僕も欲丸出しだからね、牛もまだ納得がいくだろう。

殺しておいて感謝は、牛だってバカヤローって言いたくなるものね。」

「でも、お父ちゃん、血怖いんやろ。ピストルでも打ったら血出るよ。」

「あ、アカン。血みたらアカンねん。やっぱり誰かに殺してもらおう。僕は、殺すのも怖いわ。魚ぐらいやったらできるけど。牛はアカン。情けないけどな。そやから、怜ちゃん、殺してくれるか。」

「何で私が殺さなアカンのよ。」

「じゃ、ドリーム君、やってくれるか。」

「いや、僕はもともと牛と決闘なんてする気持ちないですから。」

3人のヒソヒソ話に、いつもは冷静なお母さんが興奮気味に言い放った。

「もう、ええ加減にしてよ。折角の焼肉が、そんな話聞いたら食べにくいわ。もうお父さんは決闘でもなんでも、余所でしてきてください。」

そういって、ジョッキに残ったビールを飲み干して、店員を呼ぶベルを押した。


「じゃ、気を取り直して飲みましょうか。ヒソヒソ話は疲れますから。」

そういって、僕は皆に乾杯を促した。

勿論、焼肉は美味しかったけれど、どこかお尻のこそばゆい気持ちで座っていた。

それにしても、白シャツ管長の意見は、ある意味もっともな話ではある。

理屈は通っているのだから。

決闘はどうだか知らないけれどね。

ただ、焼肉を食べながら、牛を殺すだのなんだのという話は、女性2人の前では、多少デリカシーに欠けるか。

それが、白シャツ先生の面白いところでもあるんだけれど。

人と違った発想が出来る。

というか、先入観を取っ払って、物事を真っ白な目で見つめることが出来る。

そこに僕は惹かれてこうやって、この家族と付き合っているのかもしれない。

「もう、話ばっかりしてたら焼肉食べられへんやん。時間制限120分なんやで。お父ちゃんもドリームさんも、ビール思いっきり飲まなあかんよ。」そう言って怜ちゃんがまた注文のベルを押した。


しかし、焼肉と言う食べ物も、厄介な食べ物である。

僕は、焼肉は、お腹が空いている時に、白いご飯と一緒に食べるのが1番美味しいと常々思っている。

それも薄い肉がいい。

とはいうものの、晩御飯に焼肉屋に行ったなら、まず最初はビールだろう。

これは外せない。

空きっ腹に冷えたビールを流し込むことがなければ、どんなにか寂しい夕食になることか。

なので、まずは1杯。

なのであるが、この1杯と言うのが、また僕の精神の強弱の試金石でありまして、この1杯でビールを終えることが出来る人は、たぶん自分の人生を謳歌できる人なのだろう。

であるけれども、僕は精神が弱いので、また1杯となる。

そして、その1杯が、また1杯となり、ついには最後までビールで焼肉を食べるという事になるのである。

それで、さて最後に白いご飯で焼肉と言う僕の1番美味しいとおもう組み合わせになる訳だけれど、その時には既にお腹がいっぱいで、本来は美味い美味いと感嘆しながら食べる筈の焼肉と白ご飯を、まあこんなものかなという気持ちで食べることになる。

さらには、食べ放題のお店にはクッパやビビンバというメニューもあり、気の迷いでそんなものを注文して仕舞うことにもなる。

折角、焼肉屋に入ったのに、自分が1番美味しいと言う食べ方をせずに、いつもこれで良かったのかという自問を抱えながら店を出ることになるというのは、何とも贅沢な話ではあるけれども、しっくりとこないのである。

白シャツ管長も、怜ちゃんもお母さんも、ひたすら肉を焼いては口に運ぶ。

まさしく正しい焼肉の食べ放題の食べ方だ。


隣のテーブルに大学生ぐらいだろうか、ひょろっと背の高い男の子と、ショートカットのボーイッシュな女の子が座った。

男の子は、薄くテーブルの表面に残った油をおしぼりで何度も拭きながら、女の子と話をしている。

学生のカップルが焼肉屋とは羨ましい。

そう思いながら横目で見ていると、白ご飯の大盛りと肉が運ばれてきた。

「あ、それはアカン。食べ放題やで。何でご飯の大盛り頼むかな。肉食べやんと、肉を。白ご飯なんて食べたら、お腹膨れるやん。」

怜ちゃんも隣のテーブルを見ていて、僕たちだけに聞こえるように言った。

食べ放題だから、高そうなものを、お腹いっぱい食べる。

何とも素直な考えであることか。

でも、僕は隣の学生が羨ましかった。

僕も実はこれがしたいのである。

白ご飯の大盛りに焼肉。

でも、ビールを頼んでしまうのだ。

その点、この若者は自分の欲求に実に素直に従っている。

見習わなければいけないのは僕の方だろう。

とはいうものの、今回も僕はビールを何度もお分かりをした。

今の若者は、一体に彼のように食べ放題にこだわりはないのだろうか。

おそらく元を取ろうなんてことは、考えてないだろうね。

白シャツ管長の弁当屋の盛況のお祝いは、やや食欲のなくなる話もあったが、それでも少しは生計の楽になるだろう推測が出来るようになったことで、和やかな、どこか安心した雰囲気の中、食べ放題の時間終了となった。

帰り際に怜ちゃんが、僕に小さな薬の袋をくれた。

「明日も、仕事頑張ってくださいね。」

貰った小さな薬の袋をみると胃薬だった。

また、ズキュンときたね。

僕と怜ちゃんの年の差が20歳ぐらいあることを恨んだ。

その夜、僕は怜ちゃんの胃薬を飲んで眠った。

やっぱり食べ放題の後は消化薬が必要なまで食べてしまうというのが、正常な考え方なんだよね。

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