第7話 使ってみる

それから1時間くらい

私たちは、話をしていた


会話は、いつも通り

昨日見たテレビの話しや

受験の話し

いたって普通

友達トーク


だけど


さっきのキスが

まだ唇に残っていて

たまに合う視線は照れくさくて

でもちょっと見つめたりして

その度に

照れ笑いを浮かべて

少しだけ

ほんの少しだけ

肩をぶつけたりして触れたりしながら

誰の目も無いこの部屋だから

今まで以上に

恋人のような時間を過ごしている


「何これ?」


真田が私のポケットから出てきた

袋を拾った

私はぎょっとした


コンドーム


真田も

すぐにそれが何なのか分かったようで固まる


私は赤面し固まる


真田はそれをジーっと見て

しばらく何かを考えている


・・・ ・・・


どうしよう

恥ずかしい

こんなものポケットに入れてる

変な奴だって思ったかな?

どう思ってるんだろう?


すると

真田はこちらを見て


「使ったことあるの?」


真っすぐに見て言った


それって

冗談で言ってるの?


私は首を何度も横に振る

すると

真田は、にこりと笑って


「使ってみる?

俺と・・・」


えっ?

何言ってるの?

理解できない


でも、真顔

冗談だよね


私は、困ったような顔をしてたんだと思う

真田は笑いだして


「嘘」


そう言って

それを私の膝に置いた

彼がこういう風に”嘘”と言う時は

なぜだろう?

”嘘じゃないよ”

って言われているように聞こえてしまう


私はまたポケットにそれを入れて

彼の方を見て言った


「これね

由香ちゃんがくれたの

別に、深い意味なんてないんだけどね

お守りとして・・・」


真田はこちらを見ないで

困った表情で言う


「結城(由香ちゃんの名字)ってなんかそういう所あるよな

あいつ

妙にませてるって言うか・・・」


そう言って笑った


「そうなの

由香ちゃんってそうなの」


私は何かを言い訳しているような気分で

後ろめたかった


真田・・・それから心ここにあらず


何を思っていたんだろう

不実な私には、良い想像は出来なかった

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