第十三話

                第十三話  令和ダイナマイト打線

 拙者は十勇士達に話した。

「今より打線の話をする」

「はい、どういったものでしょうか」

「打線は投手陣及び守備陣と共にチームの柱ですが」

「そこはどうされていますか」

「その守備と共に話す、まずはその打線を実際に述べる。

 拙者は飲みつつ打線のオーダーを話した。

一番 ショート  猿飛佐助 背番号1

二番 セカンド  穴山小助 背番号7

三番 センター  霧隠才蔵 背番号6

四番 ファースト 根津甚八 背番号9

五番 キャッチャー三好清海 背番号22

六番 レフト   筧十藏  背番号5

七番 サード   由利鎌之助背番号31

八番 ライト   海野六郎 背番号16

 基本的な打線を話した。ここに控えのキャッチャーとして

三好伊佐 背番号24

 控えの内野と外野全てを守れる者として

望月六朗 背番号8

 そして控えにこの場にはおられぬが十勇士達に話した。

キャッチャー 岩崎弥太郎 背番号27

内野     グラバー  背番号44

外野     山本琢磨  背番号30

 どのお歴々も攻守走共に見事なものである、だが十勇士の者達が最も能力が高いのでやはりレギュラーにしていく。守備はどの者も打球反応にグラブ捌き、足、肩、全てが超一流であり連携も完璧だ。阪神史上最強の守備陣と言っていい。十二球団でもここまで守備がいいチームはあのソフトバンク位ではなかろうか。

 走塁も打率も勝負強さも然り、だが。

 織田家の精鋭が揃った中日、幕末の長州藩が揃った広島、あの三河武士から成るヤクルト、北条家と今川家の連合である横浜と比べてどうか。

 中日には柴田殿や佐久間殿、前田殿、滝川殿とスラッガーが揃っている。羽柴殿も小柄ながら長打力がある。奇兵隊のお歴々を擁する広島も恐ろしい。ヤクルトの主砲本多殿も脅威であるし横浜の北条綱成殿も侮れない。 

 チーム打率二割、ホームラン数六十一、盗塁数二十、得点は十二球団最低しかもエラー数は二百五十に達する巨人なぞ問題ではない、だが中日や広島に比べて阪神はパワーは明らかに見劣りするのだ。ソフトバンクの様にチーム打率三割ホームラン数二百六十盗塁数二百五十得点は十二球団最高というあのチームとは歴然たる差がある。

 グラバー殿はパワーがある、だがファーストは甚八がいる。指名打者になって頂きその場合は五番となるが今のセリーグでは指名打者制度は基本ない。代打になるであろうか。

 どうしてもパワーが劣る、それで拙者は考えた。ホームランではなくヒットと走塁そして連打で得点を取ると。だからこの打線なのだ。

 拙者は十勇士達に酒を飲むのを一時中断して全て話した、すると十藏、面長で思慮深そうな顔で細い目のこの者が言ってきた。

「連打と走塁、知略が必要ですな」

「左様、作戦次第でこの打線はとてつもない力を発揮する」

 拙者はその十藏に答えた。

「だからお主達を打線の軸に置くのじゃ」

「我等前世では生きるも死ぬも同じと誓った仲」

 鎌之助が言ってきた、鋭い目に薄い唇と浅黒い顎の先が尖った顔である。十藏とこの者は共に背が一八〇程であり痩せている。

「連携は出来ていますな」

「野球においてもな」

「戦の場では常に共に戦ってきた故に」

「そこに拙者が策を出していく」

「そして殿が采配が執れぬ時は坂本殿ですな」

 六郎が言ってきた、童顔の太い眉に尖った髪に一八〇を超えるすらりとした長身、腕の長さがその強肩を支えている。

「あの方が采配を執ってくれますな」

「あの方はヘッドコーチでもあられるしな」

「左様でありますな」

「殿、では我等十人これからも常に力を合わせ」 

 伊佐は思慮深く穏やかな顔立ちである、清海と同じ丸坊主であるがよく似合っている。清海と同じく一九〇を超える長身であるがこの者は昔から穏やかだ、だが怒らせると手がつけられなくなる。キャッチャーは清海とこの伊佐の二人を併用していく。

「打ってもいきまする」

「そうしてもらうぞ」

「我等十人ここでも同じ釜で飯を食っていますし」

 六朗も言ってきた、十勇士の中で一番均整が取れている体格で岩の様な顔であるが目の光は優しい。ピッチャー以外の全てのポジションを守れるこの者は重要なバイプレーヤーである。

「さすれば」

「野球でも我等生きるも死ぬも同じ、友であり義兄弟であり続けるぞ」

「左様でありますな」

「死ぬ時と場所は同じである」

 十一人全員で誓ったことだ、それ故に我等は大坂の陣でも戦い抜き皆助け合い生き残った。ただ死んだ場所は皆薩摩であったが死ぬ時は同じでなかったのが心残りである。

 だがそれでもこの世では野球をしている、今は死ぬ時と場所はまずは考えないことにした。戦があるわけでもなく拙者達は自衛官でもないから考えてみれば当然である。そして野球のことに話を移すと。

 これで打線と守備は決めた、この者達なら打率はかなりいいし勝負強い。チーム打率も二割九分を超え得点もかなりのものになる、だが兎角パワーが他のチームに比べて劣る。一発長打を狙えるのは清海と伊佐それにグラバー殿だけだがポジションの関係で打線に出せるのは一人それも清海と伊佐はキャッチャーなので二人は外せない。そしてグラバー殿は長打力はあるが打率と足が同じファーストの甚八より劣る。総合力で言うとやはり甚八を使いたい。

 それでだ、拙者は長打を考えずヒットの連続と機動力そして拙者の策で攻めていくことにした。十勇士にそれを伝えたうえで拙者はこの者達自身に働きを期待すると告げた。打線はその様にしていき軸を定めた。だがプロ野球はベンチ全体ひいては二軍やフロントも含めて行っていくもの、拙者の打線及び守備についての戦略は続いた。



第十三話   完



                    2021・6・8

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