第5話 盗賊があらわれた

 村長のモーリさんに色々聞いた。他には、


 *この村の周りは弱い魔物が多く狩は楽だったが急にシルバーウルフが増えて、弱い魔物が居なくなった。


 *アキールの町には冒険者ギルドがある。金を稼ぐには手っ取り早いが命の危険もある。


 *この国はラモス国、他には東のマルス国、南の国ドロス公国、北の国サンドラ帝国、そして中央のナッツピー合衆国がある。


 *この5つの国は勇者の仲間が作ったと言われており、その子孫が国を治めている。ナッツピー合衆国だけは選挙で王が決められるが、立候補できるのはその血を引く者だけだという。


 *アキールの町長はラモス国王の末の弟だ。民の事を考える優しいお方だから会えたら事情を話すと良い。助けになってくれるかも知れん。


 *お金は金貨、銀貨、銅貨があり、その上の白金貨もあるらしいが見た事はないらしい。銅貨一枚は大体10円くらいのようだ。銀貨一枚で千円、金貨一枚で十万円だね。


 てな感じだった。いよいよ異世界らしくなってきたぞ。宴たけなわですが、急に眠くなってきたので家に戻ることにした。リコは既に寝ていたのでおぶって歩いた。うーん、背中にあたるのは何かな?ホント妹じゃなきゃあんなこともこんなこともってまあ考えるだけ変態になるので、家についたらさっさと寝ようと思ったら、うん、水着なのか下着なのか、ビキニスタイルのリリイが待っていた。


 まさか本当にご奉仕タイムなのか。延べ100年以上生きてきて初めてのウハハイベント発生!転生最高!


「カツヨリ、上半身裸になってからそこにうつ伏せになって寝てくれる?」


 はいはい、何でも言うこと聞きますよ。




 はいはいただのマッサージでした。村の特産だというラベンダー風の香りがするオイルを使ったマッサージですこぶる気持ちが良かった。リコとは違うボリューミーな膨らみが背中を滑り、『んんーん、マーベラス』。追加料金支払ったらもっと凄いのがなんて考えていたら、疲れと酔いもあってそのまま寝てしまった。


 翌朝、起きるとリリイとリコが朝食を作ってくれていた。二人ともすこぶる機嫌が悪い。


「おはよう、リリイ」


「おはよう、ヘタレ。役立たず」


 えええっ、もしかしてあそこで寝なければムフフだったのかしん?据え膳喰わなかったのかおいらは。


「おはよう、リコ」


「お兄ちゃんのスケベ」


 俺がいったい何をしたというのだ。どうやらソファーで目が覚めた時、リリィの絶賛マッサージ中だったらしい。そこでふと気づいた。そういえば反応しなかったなマイサン。どうしたのだマイサン、飲んでたからかな?



 朝食後、リリイと村長の家に行き馬車に乗った。アキール町までは馬車で一時間、街道になっていて魔物はほとんど出ないと言っていた。確かに魔物は出なかった。その代わり盗賊が出た。


 急に馬車が止まった。馬車には護衛役のゲンゾーも乗っていて、何事かと飛び出した。いつのまにか馬車はいかつい男共に囲まれていた。人数は20人、弓や剣を持っている者もいるが大半が杖を持っている。


「男はこのまま消えろ、そうすれば命だけはたすけてやる。女と荷物は俺らの物だ」


 貫禄のある盗賊のボスらしき男がゲンゾーに話しかけた。それを聞いたカツヨリが馬車から降りて、


「ゲンゾーさん。こいつら何?」


「最近ここらを荒らしている盗賊だ。もしやと思って護衛にとついてきたがこりゃ参った、人数が多すぎる。手伝ってくれないか?リリィ、お前も戦えるだろう、頼む」


 馬車から降りたリリィを見た盗賊達は、


「ヒャッハー、いい女じゃねえか」


「俺が一番な」


「いやいやお前の後は勘弁」


 などと鼻の下を伸ばしながら好き勝手な事を言っている。リリィは、盗賊に向かっていきなり風魔法を使った。


「ウィンドカッター」


 盗賊の右腕が飛んだ。ギャー、痛えと喚く男を見た周りの盗賊達は、


「このアマー」


 と言いながら魔法を使おうとした。そこをボスらしき男が、


「待て、女は傷つけるな、もったいねえ」


 と言いながら腕を投げ縄を投げる時のポーズのようにクルクルと回した。


「拘束魔法、シバール」


 リリィの身体が見えない縄で縛られたようになり、両手が塞がれた。目隠しと猿轡もされているようだ、目には見えないけど。


 カツヨリはへえー、こんな魔法もあるんだ。魔法っていいなあと思いながら俺にもできんじゃね?と念じてみた。


「ファイヤーボール 、あれ?」


 盗賊は火の魔法が飛んでくると身構えたが何も起きない。何だこの小僧、見せかけか?カツヨリはめげずに


「サンダードロップ 、あれ?」


 何で?何も起きないじゃん!盗賊は舐めやがってと言いながらカツヨリに向かって魔法を使おうとした。その時カツヨリには見えた、そう盗賊の身体を巡る魔力が。身体が赤いオーラのような物に包まれ、手のほうへ動いていく。赤い色をしたその魔力からは、


「ファイヤーボール」


 と、火が飛び出した。カツヨリは火を簡単に避け、魔法を飛ばした男の首をナイフで切った。次々と魔法が飛んでくる。青い魔力は水魔法、黄色い魔力は雷魔法、緑の魔法は風魔法だった。なんだろう、魔力の流れを見ていると不思議と魔法が飛んでくる軌跡が見えた。それを避け、次々と盗賊の首を狩っていった。


 ゲンゾーは弓使いを魔法で倒していた。次に盗賊の頭を狙おうとして逆に拘束魔法をくらい動けなくなってしまった。その時カツヨリは剣士と向き合っていた。


「剣を使う人を初めて見たよ。強いのかな?」


「お前、何者だ。なんでそんなナイフで首が飛ぶように切れる?まあいい、俺は雑魚共とは違うぞ」


 剣士が喋り終わった瞬間、カツヨリの姿が急にぼやけた。


「奥義 陽炎」


 カツヨリは剣士の横をすり抜けざまナイフを振るった。スパン!と剣士の首が飛んだ。カツヨリは落ちていた剣士の剣を取って振ってみた。なんかいい感じの剣だね、なんて言ってたら魔法が飛んできた。リリィ、ゲンゾーを動けなくした拘束魔法だ。


「反空牙」


 カツヨリは無意識に剣を魔法に向けて降っていた。魔法は跳ね返され盗賊のボスが自分の拘束魔法で拘束されてしまった。

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