秋色蝶々

木々を縫ってくる湿った風

包むようなせせらぎに虫の歌

作業車のゆく音と子供の歓声

雑多な心地のいい空気


このちいさな東屋で

ぼくときみとのふたりきり

音や景色に沈み込む

異世界のように凪ぐ晩夏


ねぇ どこから来たの

羽を休めて小一時間

きみはぼくの向かいでのんびりしている

ぼくはこうして詩を書いている


とても気紛れな山のお天気は

煙のような雲を緑の肌に纏わせて

すっとだんまりしたかと思うと

強い陽射しの露光をかけるね


涼しい風が吹き込んだ

そっと伸びをして刻を動かす

徐にガジェットをバッグに詰めて

腰をあげるときみを見つめた


そろそろ行くよ

町へ戻っていかなきゃいけない

最初で最後の別れを告げる

胸でまた少し秋が深んだ





20210831

ココア共和国10月号用(ボツ)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る