第26話 応援要請

 僕は団員を集めた。

 そして全員が集まったところで僕は声を上げた。


「応援要請を受けた為我々第三は第六の救助及び敵の討伐を行う。一分後に出撃する!各部隊長は時間になったら部隊毎に南西方向に出撃せよ!それでは行動開始!」


 僕がそう言うと、彼らは一斉に行動を開始した。

 僕も準備の為にバララと一緒に部屋に戻り、ローブを着て杖を腰に付けて、飛行魔術が付与されたバッジを胸につけて部屋を出た。

 バララもいつもとは違い真剣な表情をし、急ぎながらも準備はしっかりとしていた。


「バララ、行くぞ」


「了解」


 僕らは第八から言われたところへと向かっていった。



 ***



「団長!なんで来たんすか!?こいつは危険っすよ!」


「うるせえ!どうせあいつは応援要請してんだから別にいいだろ!それに俺がこいつを殺すだけだからな!」


 第六兵団団長のゴランは満身創痍な団員たちのところに行き、それを目にした。


 から溢れる禍々しい魔力がオーラとなって自分自身を包んでいた。

 姿は他と同じような悪魔のようなもの。しかしただ一つ違うとすれば、それは理性や思考力がない事だろう。


 シンたちが暮らしている世界では、魔物が自然発生する。だがこの悪魔が住む世界では、人間や悪魔など生きとし生けるものが放つの負のオーラによって悪魔が生まれる。それらは理性や考える力がないことから下級悪魔と呼ばれ、魔物に分類されていた。普通の悪魔は自然発生しない。ちゃんと人間と同じように生まれる。故に思考力があり、こうして国を築くことだって出来る。それだけが唯一無二の違いだった。


 しかし、今ゴランの目の前にいるこの悪魔は魔物の範疇を超えていた。

 約5000年に一度発生すると言われる下級悪魔を超えた存在。

 魔物や下級悪魔はそれぞれ強さでランクに分類されるが、目の前の悪魔はそれを超えている。そのようなものをこう呼ぶ。



 混沌カオス級と。



 発生しただけでこの世に混沌をもたらす。歴史の変わり目にはいつもこの混沌カオス級の魔物が生まれてきた。


「こりゃあ、やばいな」


 流石のゴランも冷や汗をかいた。まるで勝てる気がしなかったのだ。その悪魔からは隙が見当たらない。理性も、思考力もないはずなのに。隙が全く見当たらなかった。


「普通、隙があるもんだろ。なのに何故……チッ、考えてる場合じゃねえな。ここでこいつは殺さねえと後がやばい」


 ゴランはここで覚悟を決めた。いつ死んでもいいようにと。そして彼の顔から迷いがなくなった。


「うおおおお!やってやるぜえ!!!」


 大声を出し、自分に気合を入れた彼はその悪魔に向かって走り出し、持っていた武器のバトルアックスで脳天目掛けて振り下ろした。

 しかしその悪魔は避けることをせず、ただ片腕でその攻撃をガードした。


「っ!?」


 金属がぶつかり合う音がしたことにゴランは驚いていた。

 そして悪魔はその隙を見逃さなかった。

 悪魔は防いでいた片腕で押し返し、彼の腹に鋭い蹴りを入れた。


「ガハッ!?」


 肺から全ての空気が出て、そして木を薙ぎ倒して行き、3本目の木でようやくその勢いが収まった。

 彼は呼吸を整えるので精一杯だった。しかし悪魔の攻撃は続く。

 すぐに飛んでいった彼の元へと向かい、次は顔に向かって鋭いパンチを入れようとした。

 しかしゴランはすぐに呼吸を整え、その攻撃を避けた。

 それと同時に右に避けた後、もう一度悪魔に向かって突っ込んだ。


「『我が体にその力を授けたまえ!身体強化!』」


 走りながら詠唱をし、自分に身体強化をかけてさっきとは比べられないほどのスピードを出して悪魔に斬りかかった。

 流石にまずいと思ったのか、悪魔は両腕に自らの魔力を纏い、両腕でクロスをするようにその斬撃を防いだ。


「武器スキル!『貫通』!」


 ゴランは斬ると同時に武器に込められていたスキル、貫通を使った。

 武器はたまにスキルが身につくことがある。

 しかし、スキルを持つ武器は少なく、持っている人が限られてくる。

 大体は貴族の自衛用か団長ぐらいしか持っていない、かなり珍しいものだ。


 貫通を使った攻撃は防御を貫通し、体に直接ダメージを入れた。

 左斜め上から右斜め下まで続く斬撃の跡がその悪魔の体に出来上がった。


「がああああああああああ!!!!!」


 悪魔はあまりの痛さに大声を上げた。


「うおっ!?」


 その声の衝撃によってゴランは少し吹き飛ばされてしまった。

 そして顔を上げたとき、信じられないものを見た。

 与えた傷が無くなっていたのだ。


「……っ!?マジかよ……自動回復まであるなんて、マジでやべえやつじゃねえか」


(それに俺の体力もあと僅か……このままでは俺が先にくたばっちまう……それだけは駄目だ。あいつらを守るんだ。そのためにも目の前のやつを殺さねえと……)


 ここで彼は一か八かの賭けに出た。


「『限界突破!!!!』」


 次の瞬間、彼からとてつもない威圧感がその悪魔に向けて放たれた。

 そしてゴランのステータスは2倍に上がった。


『限界突破』は文字通り自分の限界を超える、アビリティの斧術師のスキルである。使えば爆圧的にステータスが上昇するが、3分経つとステータスが全て1になる、いわば諸刃の剣だ。


「うおおおおおお!!!!!」


 身体強化に限界突破をかけた彼の速さはものすごいものになっていた。

 そして彼自身の攻撃力も上がっている為、少しずつ悪魔を追い詰めることに成功していた。

 しかし、途中でその悪魔はさっき以上の大声で叫んだ。


「がああああああああああああああ!!!!!」


 しかしゴランは怯まなかった。悪魔が叫んでいようが関係なかった。

 そして彼は活動時間が残り10秒で最後の力を振り絞って怒涛の攻撃をその悪魔に加えていった。


「うおおおおおおおお!!!これで!終わり、だああああああ!!!!」


 そして彼が最後の一振りをしようとしたところで、その悪魔に変化が起きた。


「がああああああああ!!!!」


 なんと、一瞬で全ての傷を治したのだ。


「何っ!?」


 その驚きで動きが止まった。

 悪魔はその隙を見逃さず、思いっきりゴランの腹に殴った。


「がはっ!?」


 彼は口から血を吐きながら吹き飛ばされた。

 そして丁度限界突破の有効時間が切れ、彼は立ち上がれなくなった。


「……く、くそ……ま、だ……だ」


 彼は立ち上がろうとするもうまく立ち上がれなくなっていた。

 そして彼のそばに悪魔がやってきた。


 静かに拳が上がっていく。

 どうやら悪魔はここでゴランを殺そうとしていたらしい。


 だがその寸前、悪魔が吹き飛んだ。


 第三兵団団長、シンが到着したのだ。



 ────────────────────────────────────


 遅くなってすみません。

 試験勉強が忙しくてなかなかできませんでした。


 おそらく次の更新は来週になりそうなのでよろしくお願いします。

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