第22話 会議
「そうですね、これは宣戦布告と見てもいいでしょう。かの国に戦争を仕掛けても良いかと存じ上げます」
最初に発言したのは第二兵団団長のモルルという人物だ。
この国には八つの兵団がある。
兵団の番号は兵団全体の強さによって決まる。
モルルはこの国のガイルの次に強いとされている人物なので有名であり、指揮官の格で言えば、この国で一番とされている。
「なるほど。モルル団長の意見も一理ありますね。他には?」
アリシアが他に意見を求めた。すると、別の方から手が上がった。
「私は一旦魔王会議の結果を見てから決めた方がいいと考えます。他の魔王と連携して宣戦布告をあの国にすればいいと思います」
そう言ったのは第五兵団団長のカナンだ。
カナンは女性でありながら団長になった、凄い人物だ。
彼女は男顔負けの筋力と剣術で、敵を圧倒する戦い方をしている。
「なるほど。確かにその方が良さそうですね。今はまだ、急ぐ必要はないでしょう。カナン団長の意見を採用します。一旦他の魔王に協力を仰ぎ、その結果で戦争する時期を決めましょう」
取り敢えず、戦争をする方向で決まったようだ。魔王会議までの間に兵士を鍛える必要がありそうだ。
「それでは次です。今後正式に第三兵団の団長はこのシュレインで決定です。そして、ガレリーバは三次元世界での潜入調査を命じています。そのことについて、異議はない、と見てもいいですね?」
その言葉にここにいるみんなは肯定の意を示した。
「ちょっとよろしいですか?」
すると、ゴーレインが手を挙げた。
「国民に対する発表はどうするのでしょうか?ガレリーバは国民に対してかなり名が知られています。不安を煽りかねませんが……」
「それについては考えがあります。彼は先日の勇者との戦いで大きな傷を負い、今後一兵士として戦闘を行うのは困難となり、当時副長だったシュレインを団長に引き上げ、彼は治療のため隠居した、と発表します」
「しかし、それでは国民は勇者に不安を覚えてしまうのでは?」
「それは戦争をする、ということを追加で発表をします。さらに勇者は元々手負いだったガレリーバを追撃した卑怯者だという噂をその後に流します。そうすることで、勇者の強さが大した物ではないということを世間に浸透させます」
「わかりました。ではその方向で調整してまいります」
「お願いします」
これで勇者に対することは粗方話終わった。これ以降は基本僕には関係ないだろう。
「勇者の対策はこのくらいでいいでしょう。それでは各領土の報告を」
それから、この国、クラウス魔王国にある領地に現状などを話し合い、会議は終わった。
***
会議が終わった後、僕は部屋に戻って一休みしていた。
「お疲れ様、シンくん」
僕がベッドで横になっていると、部屋のドアが開けられイリスが入ってきた。
そして彼女は紅茶を淹れて、僕のところに持ってきてくれた。
「ありがとう、イリス」
そして僕らは紅茶を飲みながら休憩がてら話していると、ドアをノックする音が聞こえた。
僕が入っていいと指示すると、そこにいたのはメイドだった。
「失礼します。シュレイン様、魔王様がお呼びでございます。すぐに執務室に向かうよう、お願い申し上げます」
「了解。ありがとう」
「それでは私はこれで」
そう言って、彼女は部屋を出て行った。
「何だろう?」
「取り敢えず行ってみたら?」
「分かった。部屋の管理、お願いね。イリス」
「分かったわ」
僕はそう彼女に言い残し、部屋を出て、アリシアがいる執務室に向かった。
***
「失礼します」
執務室の前に着いた後、僕はドアをノックして、部屋の中に入った。
「わざわざありがとうございます。こちらに座って下さい」
「いいえ、自分はこのままで」
「今は誰もいませんよ?口調も戻してもらって構いません」
「あ、そう?だったらお言葉に甘えて」
僕は言われた通りに口調を戻し、彼女の前に座った。
「もう少し待って下さいね。もう1人呼んでますから」
「分かったよ」
それから持つこと約10分。ドアが開かれ、現れたのはガイルだった。
「遅くなってすまんな。ちょっと立て込んでて」
「いえ、構いませんよ。それでは再会を祝すのは今後にするとして、まずは情報のすり合わせ等、色々しましょうか」
ガイルが僕の目の前に座り、その後にアリシアが僕の隣に座った。
「まずは久しぶり、だな。シン」
「そうだね。まさか悪魔になってるとは思わなかったよ」
「それは、しょうがないだろ。まさか自分もなるとは思わなかったんだから」
「そうだね」
「取り敢えずアリシア。俺たちは何で呼ばれたんだ?まさかこれだけじゃないだろう?」
ガイルがアリシアにそう問いかけた。
「そうですね。まずは貴方に計画のことについて知ってもらうのと、それを踏まえて魔王会議の護衛として同伴していただきたいのですよ」
「へえ、やっと教えてもらえるのか。その計画とやらを」
アリシアはどうやら、過去に計画のことについて多少彼に話しているようだった。
「このことについて知っているのは私と発案者であるシン様だけです。まぁ、貴方のように軽く説明している人は何人かいますが……まぁいいでしょう。私たちの行動はこの計画に準じています。これを知ったからには貴方にも同じように行動してもらいますが、よろしいですか?」
「ああ、いいさ。教えてくれ」
そして、アリシアからの説明が始まった。
それから5分。
「…………成程な。まさか生前に立てていたとはな。まぁお前らがやりたい事は分かった。いいぜ。出来る限り手は貸してやる。もとよりそのつもりだったしな」
こうして僕達は新しい協力者を手に入れたのだった。
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