第28話  御伽噺術式

 俺は二人を引き連れ、骨董店の地下へ下りた。


『おおお、これは・・・』


 光が驚きの声を上げた。


『ここはいうなればワシの武器庫だ』


 地下室にはズラリと木製の棚が設置され、それぞれの段には、様々な武器や呪具などが並べられている。


『トキジク、君は本当にただの探偵なのか?』


 光が訝し気にいった。


『ワシがいつ“ただの探偵”などといった? これからは第六天魔王と呼べ』

『ちょ、ちょっと玄女さん。あいつとうとう頭のネジが』

『いやいや、頭のネジなんか最初から取れてたぞ?』

『おい! さっきからなにをコソコソ! それよりこいつを広げるのを手伝え!』


 巻かれた大きな絨毯を床に置いて、三人で広げた。


『うん、見事なペルシャ絨毯だな』


 玄女は大きく頷いた。

 絨毯には、文字とも模様ともつかない柄が細部に渡って織り込まれていた。


『実に美しい代物だが、これがいったいなんなのだ?』


 光がいった。


『これは俗にいう、空飛ぶ絨毯だ』

『な、なんだって⁉ これがあの物語に出てくる、アレなのか⁉』


 光は意外なほど驚いてみせた。

 なに? こういうの好きなのか?

 だがしかし、残念。


『それは飽くまでおとぎ話でのこと。実際は、思いの場所へ一瞬で移動出来る、絨毯型の術式なのだ』

『それでも十分凄いじゃないか』


 玄女は感心して頷いた。


『さぁこの絨毯の上に乗れ。急ぐぞ』


 俺は二人を即した。


『さて、後は目的地を意識するのに、春日の髪の毛をこの手に』


 俺は春日の髪の毛を握り締めた。


『え、なんでそんな物を常備しているんだ?』

『黙れ、邪魔するな』


 茶々を入れてくる光をいなす。


『では、行くぞ! 皆のもの、気を引き締めて、いざ、殺戮の宴へ!』

『カスガ君はどうなった』


 光がすかさず突っ込みを入れてきた。

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