12

 日は、淡々と過ぎた。

 寒空が続き、この冬一番の寒波が襲った。

 雪なんて降ってもパラパラ、積もっても夕方までには消えている程度の雪ならどうにかなったかもしれない。例年になく冷たい日が続いた影響もあり、今年は明らかに積雪がある。

 雪国ではこれが日常的な光景なのだろうなと、凌は思いながら、哲弥と肩を並べ家路を辿っていた。


「俺って、そんな冷たく見える?」


 白くなっていく景色を見つめながら、凌はボソリと呟いた。

 傘を傾げ、芝山が何を言うと驚いた顔で見上げてくる。


「昔よりは優しくなってるように見えるけど、基本は近寄りがたい系かな。君、ボクと違って強面だから」


 そう言って、芝山は傘を戻す。

 シャリシャリと雪を踏む音が、二人の間に大きく響く。


「じゃあ、レグルのときは? やっぱり冷たく見える?」


 歩道を歩く二人の横を、何台か車が通り過ぎてから、芝山は面倒くさそうに口を開いた。


「神様が感情の起伏ありまくりってのはナシだと思う。アレはアレで、威厳があって良いんじゃないかな。近寄りがたいくらいが丁度いい。……誰かに何か言われた?」


「ノエルに。お前、冷たいって。美桜を泣かす最低野郎だとか」


「あはは。彼は未だ子どもだからね。でも、そうか。美桜、泣いてたのか」


「……そう、らしい。俺の前では泣かないのに」


「泣かないんじゃなくて、泣けないんだよ。君のこと、好きだから心配させたくなくて。彼女のこと、一人の女の子として見てあげないと。しもべ竜じゃなくて、“君の彼女”なんだろ?」


 トンと、芝山が肘で両の腕を小突いた。

 傘を差す手がグラリと揺れ、薄く積もっていた雪が足元にバラバラと落ちた。


「……だな」


 凌は頬を緩めて、小さく呟いた。

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