case7 街を放浪する金髪JKの話 7

「K高校か‥」

星野が交番を後にした後、京太郎は何となく声に出して呟いていた。

「K高校がどうかした、京ちゃん?」

「いや、何でもないです。」

京太郎は答える。

K高校、この地区では有名な進学校。そこに在籍している生徒は、もうすでに国立の大学か有名私立の大学に入ることが決まっていると言っても過言ではない。

だが、街でK高校の生徒たちを見ると息がつまる思いがする。きっと勉強、勉強でのびのびとした青春など送れていないのだろう。街中で友達と喋っている時でさえ、彼らの纏っている空気はどことなく張り詰めているように感じる。何というか、側から見られる自分を意識しているというか。そんな中で今回のような事件に巻き込まれてしまった生徒は今後どうなってしまうのだろうか?

きっと学校内で噂が立つことは避けられない。まだ未遂で終わってよかったものの、それでも事件前と全く同じような生活というのは送れなくなってしまうかもしれない。

「京ちゃん、なんか難しい顔してる。」

「うわっ、先輩何ですか!?」

幸田が至近距離で顔を覗き込んでくるので、京太郎はびっくりして声をあげる。

「あんま考え込んでると幸せも逃げてっちゃうぞ!」

幸田はそう言うと、伸びをしながら、

「さぁて、張り切って今日もお仕事しますかぁ。」

と声を上げて机についた。

「先輩は何も考えてなさすぎですけどね。」

そう言いながら、京太郎も椅子に座った。

「そんな事ないよ!私もちゃんと考えて生きてるんだよ!」

「へぇ、例えばどんなことを?」

「‥少女漫画の続きの展開、どうなるのかなぁ、とか」

「‥やっぱ読んでたんですね。」

京太郎はため息をついた。

「ねぇ、今度実写映画化するらしいよ。一緒に観に行こうよー。」

「行きませんよ!」京太郎は即答する。

「えー、いいじゃん。行こうよー。主演は亀有達也と土田マオだよー。面白そうじゃん。」

幸田は机にぐだーっと体を突っ伏させて言う。張り切って仕事するんじゃなかったのか?

「友達と行ってきたらいいじゃないですか?」

「やだ!京ちゃんと行きたいの!」

「‥‥‥」

京太郎は返す言葉が見つからなくなってしまった。

「本気で言ってます?」

「本気で言ってる。」

「‥‥そこまで言うなら、別に行ってもいいですけど‥」

「ほんと!?」

京太郎の言葉に幸田はさっと上体を起こす。

「やった!じゃあ今度の休日ね!絶対だよ!」

「はいはい、じゃあぼくパトロール行ってきますから。留守番してて下さいね。」

京太郎は立ち上がってそそくさと交番を後にした。危うくスキップでもしてしまいそうになる気持ちを抑えながら。

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