3. 安っぽい生まれ変わりの誘い


十本の指が首を覆い、ゆっくり肉にめり込む

長く筋張った指はグルリと首を囲うのにちょうどよく

硬く厚い皮膚はピタリと張り付いて隙間を作る余裕もない


苦しくなる呼吸と狭まる視界

ブラックライトがチカチカ瞬く


暗転


急に流れ込んだ空気で肺が一気に膨らむ

驚いた気道が咳を誘発し、その衝撃で体が跳ねた

滲む視界に涙で乱反射した光が眩しい


こんなことで生まれ変われるなんて安っぽいにも程がある

ニヤついた男の胡散臭い口車に乗って

それ以上でもそれ以下でもない、それだけのことを知った


バカバカしさに体の力が抜ける

劇的なことはなにもなく

今日がだらしなく明日になる

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る