ジャンル横断、毎日更新。希代不思議な物語、此処に晶出する

 1年に亘って連載されたショートショートシリーズ。どこから読んでも楽しめる、すこし不思議な物語たち。ある話では御伽噺風、ある話ではホラー、ある話では〇〇によって話が語られたり、現代的ツールを使ったり、抒情詩だったり。ある話では国のシステム、政治、宗教、恋、死生観、家族、愛とは何かまでを問う。まさに、「現代ドラマ」というカテゴリに囚われないジャンルレスな仕上がりとなっている。加えて、読み続けているうちに、作品全体に漂う現実との「ズレ」に読者はいつの間にかすっかり馴染んでしまい、その世界に入り込んだかのように錯覚してしまう重厚な没入感をも味わえるだろう。宝石のように輝く短編──毎日、“変化球” を投げ続けた著者に感服するほかない。

 ここで本レビューを見て、初めて読む読者の為にも、全366話の中で個人的に好きだった10作品を以下、挙げておく。是非、気軽に読んでみて欲しい。

1. 病室できみと会う 6/23投稿
2. 腹に抱えて犬のお散歩 7/13投稿
3. ストーカーじみてる 8/12投稿
4. 藤井、元田 8/28投稿
5. 天の川周辺 9/23投稿
6. 世界線ルーレット10/14投稿
7. 修正テープ要員 10/18投稿
8. やすどたかし君 12/10投稿
9. またこの街に帰ってきました 1/11投稿
10. 真希さんへ 3/17投稿

 余裕のある方は「壁になれるカラオケボックス」と「ロークディッシュでの一日」もお勧め。