第35話 農園

 わたしが働く農園ファームでは、希少な魔法作物ヴィーガを栽培している。魔法薬の素材としても、食材としても上級品で高値で取引されているため、その価値に目を付けた野盗にもよく狙われる。

  おい!       聞いているのか!?

      収穫した分は        どこにあるかって       聞いてるんだよ!?

 そう。

 今のわたしのように。

 目の前に現れたのは、野盗の二人組。

 見るからに思慮に浅く、目先の宝に考え無しに飛びつくような手合いだ。農園ファームにはわたししかいないと知ってか、随分と余裕な顔を浮かべているが、わたしの態度に明らかに気分を害したようだ。

   おい!     なめた態度         取ってんじゃねえぞ!

      女だからって        助けてもらえると        思ってんのか!?

 何か喚いているようだが、どうせ理解するに値しないものだろう。

 さらに詰め寄ろうとする野盗を尻目に、わたしは手近の作物を勢いよく引き抜いた。

          ギャーーーーーーー!!!!!

 また仕事が増えちゃったわ。

 野盗もせめて、入り口に立ててある看板の文字を読める程度のがくは持っていてほしいものね。


マンドラゴラ死叫野菜農園 無断侵入自己責任・生命不保証』

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