第3話



「今日はご苦労だったな」


 サウスゲートは喫煙所に入ってきたミロを労いの言葉で迎えた。今度はちゃんと第一声で労を労えた。


「いつもここっすね。部屋より多くいるんじゃないですか?」


 相変わらず気怠さを全面に出しているがいつもより若干テンションが低い。戦闘後の疲労というにも尋常じゃない体力を持つミロからは考えにくい。


「何だ、俺を探していたのか。何か用か?」


「大した用じゃないですよ。ちょっと明日、休暇がもらえないかと思いましてね」


 灰皿を挟んでサウスゲートの座るベンチとは逆側に立つ。今回は煙草を奪うような真似もしない。

 サウスゲートはここでミロの不自然な態度に気づく。


「急だな。どうかしたのか?」


「別に……。今日初めての奴らとの戦闘でストレス溜まったんでリフレッシュしたいと思っただけですよ」


 慰安と言い張るがあの戦闘はミロがフラストレーションを溜めるようなものではなかった。ただでさえ、普段の訓練をサボって好き勝手やっている男だ。改めて休暇が欲しいなど何かを疑ってかかってしまう。


「レベッカからは滞りなく目的は達成できたと聞いているが?」


「あいつがいなければもっと早く終わりました」


 これは本音だろう。だが、理由づけとしては薄い。


「まあそう言うな。いずれ彼女の力に頼る時が必ず来るさ」


「どうすかね」


 否定することはせず短く済ませるミロ。いつもなら減らず口を叩くことを考えると今のミロには本当にストレスを抱えているように見えた。


「お前好みの気高い戦士だと思うんだかな」


 気高い…? どこが?

 ミロは首を傾げ口をへの字に曲げた。


「男が女に求めるのは高さじゃなくて大きさですよ。胸と器は大きいに限る。逆に、女が男に求めるのは厚さですね。女は胸板と財布の厚さにこだわりますから」


「上手いこと言うな。だが、この歳にもなると胸じゃなくて尻の方に目が行くものだ」


「そうすか? 歳はとりたくないすね」


 真剣な顔で馬鹿馬鹿しい会話をする二人。

 リラックスに付き合ってみたもののミロが思いの外、乗ってこなかったのでサウスゲートは咳払いで空気を流す。


「それとネスタからは苦情を預かっているが何か聞いているか?」


「ええ、直接言われましたよ。ニーナが上手く言いくるめてくれたお陰で大人しくなってくれました。あいつも柔軟性に欠ける人間すね」


 むしろ柔軟性を評価して引き入れたのだが、やはりミロは対象外だったか。

 サウスゲートは頭が痛くなり眉間を指で抑える。


「ニーナもすっかりお前の毒牙にかかってしまったな」


「元々、ああいう奴でしたよ。でなければ俺だって副隊長に選んでない」


 類が友を呼ぶように穿った心を持つ者が作為なく集められたのが第一小隊であった。腕のある者たちがいるのは心強いがこのままではいけない。統率なき群れはやがて滅びる。


「お前も少しは歩み寄る努力ってのをしてみてもいいと思うぞ。あいつらは同じ軍の仲間なんだ。信頼関係を築いておいても損はないだろう」


「御免ですね。あいつらは同じ軍の隊員である前に普通の人間ですから。デザイナーズチャイルドの俺とはどうしたって壁がある。軍も俺を利用することにしか価値を見出していないことも分かってます。簡単に手懐けられてたまるかってもんですよ」


 ミロのストレスは軍へのものだった。アンドロイドとの戦闘で自分の使命を見つめ直し嫌気がさしたらしい。戦うだけの駒として利用される人生。それに対する見返りも少ない。何故、ミロが王国軍として戦っているのかは誰にもわからない。


「難儀な運命を与えられたものだ……」


「代わりますか? 案外楽しいですよ?」


 薄気味悪く笑うミロ。何を考えているのかわからない。


「休暇はもらえるってことでいいっすね? 俺は疲れたんでもう行きます」


 そう独りでに言い残しミロは喫煙所を出て行く。

 サウスゲートも無理に引き止めることはしない。しつこくつきまとっても心を開いてくれる人間じゃない。軍隊員と上官の関係に何重にも鎖がかけられている。迂闊にアプローチをかければ簡単に絡まり二度と解けなくなる。



 するとミロと入れ違いになって今度はレベッカが入ってきた。首に貼られた湿布が貼られている。


「お前も何か用か?」


「え、あーはい。今お時間よろしいでしょうか?」


「あぁ」


 通りすがった不機嫌そうなミロとなんとも言えないような複雑な表情のサウスゲートを目にしてレベッカは困惑した。


 言い合いと言うよりは一方的に苦言を呈されていたようで二人の関係を知らない彼女にはどうしていいか分からない。


「先程、ミロと何を話していたんですか?」


 率直に疑問を口にする。


「急に明日休暇が欲しいって言ってきたから認めてやっただけだ。何かまずかったか?」


「それと関係しているかは不明ですが今日の戦闘で少し気になる会話を耳にしまして」


「……気になる会話?」


 レベッカは聞いた会話を端的に伝える。


「はい。軍母艦の中でアンドロイドと交戦したのは報告の通りです。ですがその前にミロに対してアンドロイドから情報が与えられていました」


 サウスゲートの表情がさらに強張る。


「穏やかじゃなさそうだな。あいつ、俺には何も言わなかったぞ」


「私たちには知られたくない……ってことなんですかね」


 レベッカは考える。


 あの時、自分が部屋の外で会話を聞いていたという可能性をミロどこまで考えていたのか。


 気づかれていたとして、口止めをしてこないということはそれほど問題視していないのかもしれない。だが、相手がデザインコレクションだと言うことを考えれば何も起こらないわけがない。

 それとも、端から再会する気がないというのもあり得る。でも、これも休暇のタイミングとしては不自然すぎる。

 

ということは気づかれていない……?


 取り越し苦労かもしれないがもしものことを想定すると一人では抱えきれなかった。


「どうだろうな。それで内容は?」


「あ、はい。実は……ミロと同じデザインコレクションの一人から伝言があったようで、あの軍母艦はその為の遣いだと」


「伝言?」


「どうやらそいつはミロに会いたがっているようでして、始まりの場所で待っていると……心当たりありますか?」


「いいや……」


 腕を組み考え込むサウスゲート。少佐と言えどデザインコレクションの与えられている情報は他の人間と大差ない。過去の事情など以ての外だ。


「もしかしたら明日会いに行くってことなんですかね?」


「その可能性は高そうだな。ところで相手の名前は聞いたか?」


「……リエラ・アルベールと言っていました」


 恐る恐るその名を口にする。どんな人間かは想像できないが危険な人物であるのは確かだ。ミロ以上にイカれた思考をしていても不思議じゃない。


「リエラ・アルベールか……間違いないな、デザインコレクションの一人だ。そしてそいつは今、テロリストとして指名手配されている」


「テロリスト……ですか。相当な悪人なんですね」


 息を呑む。


「悪事を働いているかどうかは定かではないが今の国王になってからデザインコレクションは問答無用でテロリストにされている。ミロが例外なんだ」


 ミロは軍に入り結果を残すという条件で存在が認められている。それに関しても本人は不満が募らせているだろうが。


「すみません。私、その辺のこと詳しくなくて。でも、なかなか非道な決まりですね。デザインコレクションは生きているだけで罪人ってことですよね」


 レベッカは王都から遠く離れた田舎町の出身の為、最先端であるデザイナーズチャイルドなどの話題には疎い。

 だからこそ率直な感想が言えた。


「全くだ。俺も国王の考えには賛同しかねる。デザイナーズチャイルドは奴隷扱い、デザインコレクションは罪人扱いなんておかしいだろ。あいつらだって俺たちと同じ人間だ」


 普段冷静なサウスゲートが熱を上げたことにレベッカは驚いた。


「しかし、何が目的なんですかね。旧友とはいえ、ただ昔話に花を咲かせたい訳でもないだろうし」


「デザインコレクションにしか分からない事情なのかも知れないな。もし、そうならDr.ゼラが絡んでいる可能性は大いにある」


 サウスゲートはDr.ゼラの差し金である可能性を警戒しながらも別の不安があった。他の人間と同様に扱うと心に決めていても、やはりミロにはデザインコレクションであるというどうしようもない事情がある。

 

ミロがリエラと結託してスクラベール側に付くようなことがあれば取り返しのつかないことになるだろう。さっきのミロの態度からもない話ではない。


「もしよろしければ私に尾行させてもらえませんか? 怪しい点がありましたらすぐに報告しますので」


 サウスゲートの言おうとしていたことがレベッカの口から放たれた。

 

レベッカの内にもミロを不審に思う気持ちは強くなっている。その目で確かめるのが一番だと判断していた。


「……頼めるか? 内密かつ危険な仕事になるとは思うが──」


このタイミングで喫煙所に入ってくる影があった。


「その役目私に任せていただけないでしょうか?」


「ネスタ隊長……」


 ネスタは部屋の側でレベッカとサウスゲートの会話を盗み聞きしていた。

 二人も不自然さに懐疑的な目を向けるが偶然を装うネスタを否定はしない。非はこちらにある。


「ふぅ……。迂闊だったな。こんな所でする会話ではなかった」


後悔を滲ませるサウスゲート。

 

招かれざる客が来てしまった。レベッカが盗み聞きで得た情報を更に盗み聞きされるとは油断も隙もあったもんじゃない。


「非礼な事をしてしまい申し訳ありません。ですが、とても放っておける話題ではなかったもので」


「いいや、こっち落ち度だ。気にするな」


「では──」


「だが、お前にこの仕事を預けるかは別の話だ」


 ネスタに別の思惑を感じたサウスゲートは食い気味に拒否した。


「サウスゲート司令。レベッカはデザインコレクションについての情報が乏しいので僕の方が適任だと思います。僕はこれまでデザイナーズチャイルドと何度も仕事を共にしていますから」


「……駄目だ」


 ネスタの言いたいこともわかる。偶然でも必然でも耳にしてしまった以上、経験が上のネスタを選択するべきだろう。


何故か渋るサウスゲートを不思議に思いレベッカが口を開く。


「私は別に構いませんよ? ネスタ隊長の方が経験もありますし、何かあった時に私より対応が速やかかと」


 年齢も歴もネスタの方が上だ。隊の人間もネスタが信用に値する人間ということは軍から聞き及んでいる。


「……まあそうだが……」


「僕の過去の事を言っているのなら心配要りません。自分の与えられた使命を忠実に実行します」


「過去?」


 レベッカが首を傾げた。情報にない。


「関係ない。私がレベッカを適役と判断したんだ。私の決定が全てだ」


 司令官の権限を行使する。強制はやむを得なかった。

 しかし、ネスタは簡単には引き下がらない。


「……そうですか。だったら、僕は司令の判断は誤っていると断言しますよ」


「……何?」


「相手がテロリストと判明しているのならまず、上層部に預ける案件ではないでしょうか。レベッカもとい、サウスゲート部隊では手に余ります」


 確かにデザインコレクションに関してはサウスゲート部隊の管轄外。ミロに刺激を与えたくないというサウスゲートの思惑がある故の選択だ。


「まだ判明しているとは言えない。疑惑の段階だ。現時点では私が確認、指揮する」


「話を聞く限りでは決定的だと思いますが。仮に事実が存在しないとしても報告して損をすることはないでしょう。これは重大な情報です。司令がしないのであれば僕がします」


 それを言われればサウスゲートを難色を示す。隠密に事を済ませたい本心は隠せない。


「……かなり厄介な新入りが来たものだ」


 ネスタとレベッカ二人を眺める。


 レベッカはついでに厄介認定されたことに不満を覚えながらもサウスゲートに聞く。


「上に知らせると何かまずいんですか?」


 何も知らない。単純な疑問。


「言っただろ。国王はデザインコレクションを消す事に躍起になっている。度を越した力は制御しきれないからな。そうなると監視には上の階級のネスタが任命されるだろう」


「結局、司令の権限は無意味ってことですか」


「それだけじゃない。おそらく現場には多くの戦力が投入されるだろう。生死を問わずに捕獲なんて命令が下されればミロだって危険に曝されるだろう」


 つまり、もうサウスゲートにはネスタに尾行をさせるという選択肢しかないわけだ。うまくミロを盾にされている。


「いくら上層部とはいえミロ君の命は守るでしょう。彼は対スクラベールにおいて重要な戦力ですから」


「仮にそうだとして、ミロはとても傷つくことになるのは請け合いだ。仲間から餌にされ、同胞は殺される。奴の最も望まない展開だろう」


「テロリストを始末して何が悪いんですか?」


「ミロが軍を裏切ったら取り返しのつかないことになるんだぞ!」


 声を荒げるサウスゲートに一歩も引かないネスタ。板挟みになったレベッカがそっと宥める。


「まあまあ。要するにネスタ隊長なら事にうまく対応できる自信があるってことですよね。折衷案として正しいのかはわかりませんが私が譲ればいいんじゃないですか? 一応サウスゲート司令の権限が効く範囲ですし」


 サウスゲートは不本意ながら了承するしかない。

 上層部を引き合いに出されれば不利になるのはこちらだ。気が変わらない内に折れるところで折れておく。


「……わかった。お前に頼もう。但し、何かあったらすぐに報告すること。そして、デザインコレクションとの戦闘は避けること。いいな」


「はっ! 英断に感謝します!」


納得いく言葉を貰い満足気にネスタは出て行く。その後ろ姿には尾行への気合と同時に別の意志が読み取れた。



「……はぁ」


 喫煙所のドアからネスタの姿が消えるとサウスゲートは重々しく息を吐いた。


「渋々でしたね。私、余計なこと言いましたか?」


「いや、私の怠慢が招いた事故だ。お前の判断は正しい。……まあなんだ、一番バレたくないやつにバレてしまったというだけだな」


「過去に何かあったんですか?」


「ちょっとな」


 それ以上サウスゲートは話そうとしなかった。上官として個人的な事情は伏せると判断したのだ。レベッカも迂闊に追及するわけにもいかず黙って喫煙所を後にするのだった。




***



 翌日、朝一で軍保有の車の停められた車庫を訪れたネスタ。ここにある車は全て私用の為のものでスポーツカーから運搬用トラックまで幅広く揃えられている。


 外出するにも脚が必要だ。当然、ここにある車両を利用するはず。

 早速、車庫専用のコンピューターでデータベースにアクセスする。すると一時間前にミロ・マイアス名義での利用履歴が確認できた。


「もう出て行ったみたいだな」


 申請を出さなければ鍵を借りられないこともあり、ミロは律儀にスポーツカーの貸し出し許可を貰っていた。


 利用履歴から詳細を確認し、同じ車種の貸し出しを申請する。

 ミロがスポーツカーを選択することをネスタはある程度予想していた。位の高い隊長格ならとりあえず性能の高い車を選ぶ。それはデザインコレクションも例外ではないはずだった。


 だから、軍にある全てのスポーツカーに発信器を仕掛けて後からでも追えるよう昨晩から準備していたのだ。あまりに近い距離の尾行では必ず気付かれる。これくらいの準備は必要だった。


「にしても、もう少し絞るべきだったなぁ」


 発信器の情報をカーナビに転送してため息が出た。

 ミロが乗って行った車以外をカーナビから除外するのに意外と手間が掛かったのだ。


 今はミロが乗っていった車以外は車庫にあるが時間があれば誰が出て行くか分からない。なるべく万全な態勢で取り組む性分であるネスタは時間を浪費することを選択する。


 自分が仕掛けた罠に足踏みをしながらもすぐに車を発進させた。




***



 軍人の日々というものはほとんど休みはなく毎日厳しいトレーニングに明け暮れる。今日もその一日として全隊が早朝から集められていた。

 少し離れた場所にて開始時刻を待つのは隊長のレベッカ。副隊長のカイル、ハルマと雑談を交わしている。


「おはようございます。今日は合同訓練らしいですね」


 ハルマが陽気にレベッカに確認を取る。昨晩の内に司令を通じて全隊へ連絡があったのだ。


「ええ、急で悪かったわね」


「いえいえ、隊長もいなくてどうしようか悩んでたんでありがたいですよ」


 詳細を知らないカイルがハルマに訊ねる。


「マイアス隊長は休暇と聞いたがオメント隊長は何故不在なんだ?」


「なんか出張らしいですよ。昨日、本部から連絡があったって」

ハルマは実際にネスタに言われたことを真実だと信じて伝える。何も知らない人間からは疑いようがない。


「そうか」


 レベッカは否定も肯定もせず二人の会話を見守った。副隊長が相手でも情報を流す訳には行かないのだ。

 そんな訓練前のひと時を過ごしていると遅れてニーナがやってきた。


「……あ、おはようございます」


 ニーナはレベッカを一目見て息を呑み挨拶をした。


「おはよう。どうかしたの?」


「いえ……てっきりいないのはストルフィ隊長だと思っていたので」


 ニーナは予めミロに今日リエラと会うこととレベッカが尾行に来るかもしれないと伝えられていた。大方の予想が外れたことに何か不測の事態を感じ取る。

また、レベッカもニーナがこちらの事情を知っているかもしれないということに疑念を抱いた。


「どういう意味?」


 動揺して口を滑らしたニーナを問い詰める。


「なんとなくです。昨日のこちらの軍事指揮にオメント隊長は不満だったそうなので合同訓練をしたがっているのかと」


「……そう」


 もっともらしい理由をつけるニーナ。

 平然と返しているが心の中では迂闊だったと後悔していた。


 一方、レベッカはこの発言の全てが嘘ではないと思いつつも疑うことをやめなかった。

 

 ニーナが知っていたとしたら十中八九ミロからの情報だ。そうなると、この尾行は全くの無意味。むしろこれを逆手に取られる事態だって十分に考えられる。

 厄介なことになる前にニーナに真相を問い質したいところ。


 しかし、相手もかなりのやり手。簡単には口を割らないだろう。

 打開策を思案していると隣のカイルから声が掛かった。


「隊長、時間です」


「えぇ……」


レベッカは頭のリフレッシュも兼ね訓練始めることにした。




***



 第三軍事基地からミロを追って車を走らせていると自然めいた風がネスタの髪をなびかせてきた。

 川のせせらぎの聞こえる田舎の村。窓から見える景色には畑仕事に精を出す老人の姿が映る。


 ここにミロは何らか用があるらしい。

 田舎の情景を眺め疑問を浮かべているとカーナビに印されたレーダーはさらに奥地へと進んでいく。


「……森か」


 とても人気があるようには思えない大森林。道もどんどん狭くなり尾行には不向きな状況になっていく。


「ミロ・マイアス……」


 後部座席に積んだライフルが車の弾みに合わせて音を立てる。


 ネスタは舌打ちをしてアクセルを強く踏んだ。



***




 森の中に潜む錆びれた研究所。ミロがここに来るのは十年以上前のこととなる。


「廃れたな……」


 懐かしさを感じつつ適当に車を停める。広大な土地を歩き研究所の一棟の前まで向かうと足下に積もった砂埃に足跡が付いていた。おそらくリエラのものだ。

 もはや自動では動かない自動ドアをこじ開けて研究所の中に入っていく。


 中は薄暗く、疎らに散るように点々と明かりが点いているのみ。廊下から様々な研究室が見えるがどこも今は使われている様子はなく置かれている装置も作動していないようだった。


 埃の溜まった道に付いた足跡を追いながら目的の部屋へと辿り着く。


 培養室。

 ここは遺伝子操作を行った受精卵が人間の姿になるまで成長する場所。即ちミロの産まれた場所だ。


 重く閉じた扉をこじ開け、中に入ると大型の培養器が複数とその上に行儀悪く腰掛ける女が見えた。

 

 リエラ・アルベール。

 ミロと同じくDr.ゼラに認められた優れたデザイナーズチャイルド。

 袖の広いカジュアルなシャツにパンツスタイル、ロングヘアに整った顔立ちが薄明かりに照らされて確認できる。


 丁度、部屋の中心で歩みを止めるとリエラは喧嘩腰に口を開いた。


「おせーよ。くそが」


「これでも最速だ。大体、時間指定されてねえし」


 懐かしの再会にも二人は冷たい態度をとる。

 元々研究所で過ごしていた時からデザインコレクション同士の仲は最悪だった。無駄に競わされ全員がDr.ゼラに認めてもらう為に蹴落としあっていた。

故に今も感情が昂ぶることはない。


「知らねーよ。アタシが来いっつったらすぐ来るんだよバカ」


「相変わらずイカレてんな。会話が成り立つ気がしねえ」


 ミロはそう吐き捨て辺りを見回す。リエラ以外は誰もいないようだった。もしかしたらゼラがいるかもしれないという期待は大きく外れた。


「てめぇもここに来るのは久しぶりだろう?」


「ああ。懐かしさも糞もねえな。俺らがいた頃とは随分変わっちまってる」


「あぁん? そうか? アタシは別にんなことは思わねーけど。ほら、この培養器なんてあの頃のまんまだぜ。てめぇもアタシもここで産まれたんだよなぁ」


 リエラは旧家に懐かしさを感じてたかと思えば急に培養器に蹴りを入れた。

 バコンッと大きな音を立て鉄の壁に大きく溝ができる。


「与太話はいい。用件を言え」


「まあそう急くなよカス。久しぶりに会ったんだお互いの近況について話し合おうじゃねぇか」


 女性らしからぬ暴力的な一面と口の悪さ。見た目が想像させる性格とはかけ離れている。


「お前らがどこで何をしてようが関係ねえし興味もねえ。そんな話をする為に呼び出したわけじゃないんだろ」


「はーん。最高傑作の余裕ってか。ムカつくんだよ。この裏切り者のユダが」


 ゴミを見るような目でミロを見下すリエラ。その目に映るものは憎しみというよりは苛立ちに近いように思えた。


「裏切った? 俺がいつお前と徒党を組んだ」


「あ? 国に寝返ってスクラベールと戦う理由がどこにあるっつってんだよ」


 スクラベール……。やはり、リエラはある程度の事情を知っている。ゼラの影がちらつく。


「それは俺とあの人の事情だ。お前には関係ない」


「あんまり生意気言うなよウジ。ぶっ殺すぞ」


 今度は頭に青筋を立てて不快感を露わにするリエラ。いつ手が出てもおかしくない。

 反応が遅れないように身構える。


「俺が軍にいるのがそんなに不満か?」


「あぁ不満だね。てめぇが今、中指立ててる相手は紛れも無いアタシたちの生みの親だ。くだらねーアホの自己満で殺されてたまるか」


「それでわざわざ俺を呼び出した訳か。だが生憎、俺にその気はねぇぞ」


 目的は単純、ゼラを守る為。おそらくこれに偽りはないだろう。

 しかし、ミロが本当に知りたい部分はそこじゃない。


「そう言いつつちゃんと武器は持ってきてるようじゃねーか。アタシは昔からてめぇを殺したいと思っていたんだぜ?」


「こんな罠で俺が殺せると本気で思ってんのか?」


 ミロがスタンナイフを取り出し、何も無い空間を斬りつけた。

──すると後方からバタフライナイフが飛んでくる。


 ミロはすぐさまそれに反応して弾く。だが、ミロの表情からはそこまで予想していなかったようだった。


「二次攻撃に気をつけろよ。ただのワイヤーの網かと思って油断してると四方八方からナイフがお前を突き刺す」


 光が当たらなければ確実に視認できないほどの極細ワイヤーが部屋に無数に張り巡らされている。それだけかと思いきや、天井にはワイヤーが切れた際に飛び出すナイフが隠されているのか。


 速さを強みとするミロにとってこのワイヤーは煩わしい障害であるが取り除くにもナイフが飛んできて隙が生まれる。ミロの特徴を知った人間が故の洗練された包囲網であった。


「……おもしれぇ。上等だ。巣の中でしか意気がれない蜘蛛を外の世界まで引きずり出してやるよ」


 気持ちが昂ぶったミロはスタンナイフの電圧を上げた。


***



 午前中のトレーニングを終え、隊員たちは昼休憩のために基地へと戻る。食堂に向かうもの、シャワーを浴びるもの、午後のトレーニングに向け各々が体を休める中、レベッカは何の設備もない別棟の陰で身を潜めていた。


 目的はもちろんニーナ。基地に戻らない彼女を不思議に思い追いかけたのだ。

ニーナは周囲を見渡し人気がないことを確認すると懐から通信機を取り出した。

その瞬間、レベッカは出て行く。


「何してるの」


「私用です」


 ニーナは動揺した様子を見せずに淡々と答える。まるで来るのがわかっていたようだ。


「誰かと連絡を取ろうとしていたのかしら?」


「答える必要ありますか?」

    

「答えられないことなの?」


「いえ」


「じゃあ、答えて」


「……ミロ隊長です」


 レベッカの圧にニーナは渋々答える。だがこうなれば矢継ぎ早に質問が続くことは安易に予想がついた。


「何の為に?」


「訓練の件で助言を頂こうかと」


「詳しく」


 お互いに目的を相手に言わせようと舌戦が続く。


「……合同訓練をするにあたっての第一小隊の役割と方針が知りたかっただけです」


「そう。じゃあ、何故こんな所でこそこそする必要があるのかしら」


 一向に譲らないレベッカに遂にニーナが痺れを切らせた。


「もうはっきり言ったらどうです? ストルフィ隊長も私に言いたいことがあるから追いかけてきたんでしょう?」


「……そうね。私はあなたを怪しいと思って追いかけてきた。ミロの側近として今日の極秘任務に関する情報を何か聞いているんでしょ?」


 ニーナ相手に心理戦は骨が折れる。釣るためには餌がいるようだ。


「任務については何も聞いていません」


「もう探り合いはやめましょう。私も出来る限りの情報は教えるわ」


「それは私に利があるのでしょうか」


「ないの?」


「……さあ?」


 僅かに目線を逸らしたニーナの反応にレベッカの口角が上がる。

 

利点がないと断言できるならニーナは全てを把握している可能性が高い。その上で導き出される考え。


「わかったわ。じゃあ、私が勝手に予想で話すから合っていたら教えて頂戴。──まず、ミロは昨日の時点で私に会話を聞かれていた可能性があることに気づいていた。そして、私はサウスゲート司令に相談すると仮定した上で司令は私に尾行は命令すると予想していた。ここまではいい?」


こうなった経緯にはミロがサウスゲートの前で軍に対する不満を打ち明けたことも影響していた。基本的にサウスゲートはデザインコレクションについて偏見はなく、ミロを普通の部下として見てくれる数少ない人間だ。だが、それと同時にミロに対して精神面を不安視している節がある。


 ミロがデザインコレクションとしての葛藤に悩んだ末に軍に反乱することを最も恐れるべきことだとしているサウスゲートにリエラの情報は寝耳に水だった。尾行を依頼するのはもはや明確。


「……はい」


 ニーナは黙秘するわけにもいかず事実を認める。


「そして、尾行するのが私ではなく急遽ネスタ隊長になったことをミロは知らない。私だったらどこかの段階で足止めをする準備はしてあったんでしょう」

レベッカの予想を静かに聞いていたニーナだったが足止めという言葉に首を傾げた。


「いえ、確かにミロ隊長は尾行を予想していましたが、それを嫌がる様子はありませんでした」


「え? どういうこと?」


「尾行はむしろ歓迎されていました。デザインコレクションのリエラ・アルベールと対峙することで自分が軍側の人間であることを示すことができる。ミロ隊長は全てを分かった上で何もしなかったんです。オメント隊長が代わりに行ったと知って困惑しているのは私です」


 情報の齟齬が起こったことでニーナは全てを話すことを決めた。このまま無駄に時間を浪費するのは良くない。


「ごめん……話が全く見えてこないわ」


 困惑するレベッカ。昨日のネスタの姿が思い浮かぶ。


「あの人は危険です。心の内にとても深い闇を抱えている。もしかしたらミロ隊長だけでなく軍を裏切る可能性だってある」


「何を言っているの。彼は軍の中でも指折りの優秀な隊長よ。今までだって隊規を犯したことはないと聞いたし仲間の隊員を陥れるような真似はしないと思うわ」


「ストルフィ隊長は彼のミロ隊長に対する敵意に気づいていないのですか? だとしたら問題ですよ」


 レベッカはこれまでを思い起こした時に心当たりがあった。昨日の喫煙所から出て行った際の寂しそうな背中。そして、サウスゲートが懸念していた彼の過去。

 だが、それはとても曖昧なものであってニーナの言葉を肯定できる理由にはならない。


 それ以上にネスタに抱いた第一印象とこれまでの功績が良いものだった。とても軍を裏切るような人ではない。


「現にサウスゲート司令がネスタ隊長を信用して任務を与えたの。私たちの独断で軍規に叛く方が問題よ」


 最終決定権は司令にある。司令の決定に逆らうことほど無粋なことはない。


「なら、アプローチを変えましょう。オリンソン隊長の件は一先ず置いておくとして……先程も言ったようにミロ隊長は既に尾行されていることには気づいています。ですからそれが誰かということを教えるのは大した問題にはならないと思うんです」


「駄目よ。これは極秘任務であなたが関わることは想定されていない。簡単に容認することはできないわ」


「ミロ隊長ではなく軍側に付けということですか……」


 レベッカはこの時初めてニーナの怒りに触れた。上下関係など関係なく実力で正当化してしまおうとする気概を感じる。


「当たり前よ。私たちは軍人で軍の一部なの。軍が窮地に追い込まれれば仲間が死んでいく」


「ミロ隊長も軍人であり仲間です」


「でもその前に彼はデザインコレクションよ。簡単にDr.ゼラと繋がれるコネクションを持っている。リエラとの再会だって何か関係があるかもしれない」


 それを聞いてニーナは目を見開いた。そして、嘆くように呟く。


「……がっかりです。あなたも結局、前の隊の奴らと変わらない……」


 ニーナはゆっくりと歩き出し別棟に設置されているロッカーから次の射程規定で使うはずだったハンドガンを取り出した。


「仕方ありませんね。ここで死んでください」


セーフティロックを解除し、銃口がレベッカへと向けられる。



***




 ミロから少し遅れてネスタは研究所へ到着した。


「……何だここは」


 そこはカーナビにも表示されていない辺境の地。森の中にテーマパーク程の敷地があり、様々な建物が建っているがどれも今にも崩れそうな廃病棟のようだった。


 とりあえずミロの車の停まっていた近くの建物へと侵入する。しばらくそのまま歩いて行くと微かに声が聞こえてきた。

 なるべく足音を立てないようにゆっくりと慎重に声の大きくなる方へと歩みを進めていく。


 そして、培養室と書かれた部屋の前で足が止まった。



「てめぇは知らねーだろ。あの後アタシたちがどんな目にあったのか」


「研究所から保護されたんだろ。軍で捨て駒扱いされてる奴が言ってたよ」


「一部はな。王国に懐疑的な連中と私たちデザインコレクションは迷わず逃げ出した。そうなる未来が見えたからな」


「賢明な判断だな」


「てめぇが言うなバカ。アタシたちは殺されかけたんだ。……いや、今も命を狙われている最中だ」


 制御のできない力は戦力にはなり得ない。早々に見切りをつけて処理するのが最もだ。堅実な選択を好むこの国らしい。

 ミロは考え込んだ上で一番聞きたかったことを聞く。


「お前はまだあの人と繋がりがあるのか?」


 Dr.ゼラとの関係。それを知らずには帰れない。


「何でそう思った?」


 ミロの心理を読み取りはぐらかすリエラ。


「あんな軍艦で仕掛けてこられたら誰だってそう思うだろ」


 部屋の外のネスタはミロとリエラと思われる女の会話だということを知る。中を覗いて顔を確認しておきたいところだが万が一のことを考えて踏みとどまった。


「繋がりと言うほど密接なものはねーよ。つい最近、接触があっててめぇの話を聞いただけだ」


「あの人が俺を殺せと?」


「ちげぇよ。てめぇを殺したいのは私の意志だ。先生はアタシに力を貸してくれただけ。アタシはてめぇと違って愛されてるみたいだからなぁ」


「どうせ性玩具扱いだろ」


 スタンナイフがバチバチと音を鳴らす。


 互いの殺意がぶつかり合い一瞬の間が生まれたところで二人が気配に気づいた。


「……ミロてめぇ、つけられたな」


「……」


 リエラは入り口に注目する。


「おい、出てこいよ雑魚! そこに居たって面白くねえだろ」


 ネスタは一つのミスも犯していない。足音を殺し室内を覗くこともしなかった。


 だが、リエラは気づいた。微かな空気の流れの変化のみで敵の位置を特定してみせた。


 普通の人間からは常軌を逸した存在だということを改めて思い知らされる。

 己の存在がバレてしまった以上、目の前に出て行く他ない。ここで逃げるのは悪手だ。

 ネスタは室内に足を踏み入れると初めにミロと目が合った。


「お前かよ……」


 当てつけのようにがっかりするミロ。


 その言葉には他意も含まれている。レベッカよりも都合が悪いという意味で。

 その反応を見てリエラはネスタが軍人であると知る。


「何だよ。軍の犬かよ。殺し甲斐がねぇなぁ」


 動揺しながらもネスタは一歩も引かない。尾行を志願した時点でこうなる覚悟はしている。


「お前がリエラ・アルベールか。指名手配犯であるお前が何故ここにいる」


「どこにいようがアタシの勝手だろうが。指名手配だろうが誰にも捕まる気がしねぇし、支障はねぇ」


「目にした以上、僕は放っては置かないぞ」


「いいねぇ。そう言って数分後にはミンチと化している奴らをアタシは死ぬほど見てきたよ。ここでサクッと殺してやりたいが……、生憎今日はミロのハンバーグだけで十分だ。てめぇは失せとけ」


「ネスタ、これに関しては同意見だ。お前は邪魔でしかない。帰れ」

ミロもレベッカじゃないのならとネスタを遠ざけた。しかし、ネスタは滾ってしまっている。


「悪いけど断るよ。僕は自分の力でこのデザインコレクションを倒す。むしろ邪魔なのは君だ」


 譲れない意志。ミロに向けられていた以上の感情がリエラに向けられる。紛れも無い負の感情だ。


「生意気言ってんな三下ァ。たかが軍人にアタシが殺されるかよ。こっちも暇つぶしに雑魚狩り過ぎてもう飽きてんだ」


「お前はそう言って罪のない人々も殺してきたんだろ……」


 ネスタは怒りに肩を震わせる。


「あー殺したねぇ。数え切れないほど殺したさー。時には村ひとつ潰したこともあったなぁ」


「……なん…だと……」


「仕方ねぇだろ。アタシたちはこの国に勝手にテロリストにされてんだ。問答無用で国民殺しておかねぇと採算あわねぇし、馬鹿な国王は考えを改めねぇだろ」


「……ふざけるな! お前が僕の家族を殺したのか!」


 目的の存在を見つけたネスタは声を荒げる。


「あ? 知らねぇよ。誰だよてめぇ」


「コークラン市旅客機墜落事件。お前たちが首謀のテロ事件……僕の故郷はお前に潰されたんだ! あそこには僕の父も母も弟も妹も友達もいたんだぞ!」


 ネスタは過去にデザインコレクションに身内を殺されていた。8年前のテロ事件。デザイナーズチャイルドによる旅客機のハイジャックにより旅客機は大型ビルに墜落。周囲にも甚大な被害が及んだ事件だ。そして、その首謀者はデザインコレクションだと言われている。


「コークランだぁ? いちいち潰した街の名前なんて覚えてねぇけどアタシかそれ?」


もし、リエラがこれに加担しているとしたらテロリスト扱いなどとは言ってられない。正真正銘のテロリストだ。


「……死ねよ。ここで死ねぇ!」


 ネスタはリエラに銃を向けすぐに発砲した。

 乾いた破裂音が室内に響く。


「落ち着けよ能無し。まだ、アタシがやったってわかってねぇだろ? デザインコレクションは七人いるんだ。こいつも含めて全員、村壊滅させることなんざ造作もねぇよ」


 リエラは簡単に弾を躱しミロを差す。


「関係ない。遅かれ早かれ僕はこの手でデザインコレクション全員を葬るつもりだ。お前が最初の一人目なんだよ」


 ネスタがミロに向けた殺意の真相。それはミロが家族を殺した容疑者だからだ。復讐の為に部隊に志願しミロに近づいた。あわよくば仇を取るために。


「おいおいミロ。てめぇ仲間からも命狙われてんのかよ。ざまあねぇな」


 リエラは馬鹿にして高笑いする。一方のミロは無表情だった。


「お前が俺に向けていた殺意の理由が今分かった」


「気づいていたんだね。そうだよ、僕も他の人たちと同じ……いや、それ以上にデザインコレクションが嫌いだ。君を目の前にしてからも殺すことしか考えていない。僕がこの部隊に入ったのも君に近づいて全てのデザインコレクションを葬るのが目的だ」


 全てを打ち明ける。今後のことはまた考えればいい。今はリエラを殺すことしか頭にない。


「正直だな。俺を利用して最後に殺るつもりか」


「そうだね。一応は仲間だからそのくらいの猶予は与えるさ。だからとは言わないが君はここで帰ってくれ」


「えらい上からだな。お前ひとりでこいつに勝てると思ってんのか?」


 ミロは戯言と受け取る。どんなに好条件が揃ったところでデザインコレクションとは埋められない差がある。


「刺し違えてでも殺すさ。それが、僕の目的だから」


 確かに首だけになろうとも喉元に噛み付いてきそうな目をしているが、いかんせん相手が悪過ぎる。


「どっちが死んでも俺にとっては好都合だがやめといた方が身の為だ。でないと俺がお前を殺してしまう」


 現状で憎しみが良い方向に転ぶとは考えにくい。ミロは血迷うネスタを止めることにした。

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