第2話 東間さん

東間さんは二枚目である。


彼の目は、はっきりとした二重瞼ふたえまぶた、目尻に笑いじわが入っており、本職はその目に会う時何度でも心をくすぐられて歯がゆい思いをしたものである。


本職は、一度意識してしまったことから好きで見ていたその目もいつしか真っ直ぐに覗けなくなってしまい、そのことにより、本職は彼に嫌われないかと不安になったりもした。


ある日、彼は本職の手料理を食べに来てくたのだが、その際に彼が放つ言葉が悪気なく花を摘む子供の手の様に本職の気持ちを掻き乱すのである。

「イケメンですね。」

嬉しく・・・

「彼女とかいないのですか。」

本職は貴方に夢中です・・・

「一緒に暮らしたいです。」

心の底から・・・


「高校一年生位に見えますね。」

本職は嬉しく、かつ、また恥ずかしくもあり、笑いながら赤面した。


本職は自分で自分が気持ち悪く感じたが、それでも彼への気持ちは止められずにいたのである。


「そういえば、何で髪の毛切ってしまったのですか。長い方が良いですよ。」

その言葉は客観視なのか、或いは彼の好みなのか、本職にはわからない。


赤面を誤魔化すため、両手で顔を扇いで暑がるふりをする本職に対して、彼は容赦なく自身の服を捲って腹筋自慢をする。


男が男に恋するはず等無い、後に深く傷付く前にこの気持ちに始末をつけなくてはならないが、期待してしまう自分がいるのである。


「最近、彼女と連絡とってないです。」


男が男に恋するはず等無い、男が男に恋するはず等ない、無いのである。


本職は自身を丁寧に慰めて彼に最高の笑顔を贈った。


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