第二話

――ガラリ。

教室の扉が開き、担任の飯沼いいぬま先生ともう一人、見知らぬ男子が入ってきた。

その男子の容姿をみたクラスの人全員が息をのんだ。

なぜかって?それは、すっごくかっこよくて、超美形と言ってもいいような男子だから。

他の女の子は、その男子に目を奪われてるみたい。ま、まあ、私は少なくとも違うんだけど。

もう少しその男子について説明すると、ふわっとした黒髪で、少し短い前髪の下にある丸い瞳は、私と同じ少し茶色がかっていた。そして、すっと通った鼻筋に綺麗な形で少し薄い唇、ちょっと丸いあご。

最初にも言ったように、美形と言われるぐらいに全てが整っていた。

そんな転校生の男子を見て全員がポカンとしているのを見た先生は苦笑していた。

「じゃあ、今から転校生を紹介するよ」

先生がホワイトボードに黒のペンで、名前を大きく書いていく。


霧島きりしま 佑哉ゆうや


「霧島佑哉くんです。佑哉くん自己紹介は?」

「......とくにないです」

佑哉くんは先生の言葉に、真っ向から反対をした。

これには飯沼先生もちょっとびっくりしているようだ。もちろん、私たちも。

佑哉くんは、緊張している様子や焦っているような感じがしない。

これが普通なんだろうか?と考えたけど、やっぱり分からない。

というか、むしろちょっと不機嫌っぽい?......分からない。

そんな中、飯沼先生は、

「じゃあ、特異な科目は?」

とか、

「得意と言うか、好きなスポーツは?」

などと質問をしていたが、

「べつにありません」

という答えだった。

「......じゃあ、あそこの空いてる席について」

最後にそう言った飯沼先生は、ちょっと不機嫌な感じだった。

真新しい制服を着た佑哉くんが机の間を通り、私の方に向かってくる。

クラスの人たちは彼に注目している。(特に女の子たちが)

もちろん私も。

転校初日からこんな態度の転校生ってそうそういないと思う。

でも、そんな子だからこそ、ちょっとだけ興味が湧いてきたかも。

ゆっくりと歩いて私の横を通り過ぎる時、ふと甘い香りが漂った。

かすかだけど、なんか花のような、さわやかだけど甘いような感じの香り。

「わ。いい匂い」

思わず声に出してしまい、ちょっと恥ずかしさがこみ上げてきた。

自分の席に座ろうとしていた佑哉くんは、ビクッとおどろいたように私の方を見た。

私も佑哉くんの顔を見ていたから、自然と目が合ってしまう。

......あれ、なんかこの子、普通じゃないような気がするんだけど。

普通じゃないとなぜか確信を持った私。佑哉くんには何か感じる。

なんだろう、この感じ。

佑哉くんの丸くてくっきりとした目が私をまっすぐに見ていた。

目をそらそうとしてもそらせない。なんか、綺麗な瞳に吸い込まれたかのような感じ......?

教室の中だというのに、私は周りの存在を忘れて、ただ佑哉くんを見つめていた。

佑哉くんも私と同じく動かない。

でも、先に動いたのは佑哉くんの方だった。

はっとしたように佑哉くんは、私から視線をそらし席についた。

......どうしたんだろ私。

そう思いつつも、まだ私は、佑哉くんのことを目で追っていた。

私の視線に気づいたのか、佑哉くんはもう一度私の方を見た。

「えっと......どうしたの?」

「あっ!い、いや、な、なんでもないよ!」

私はちょっと焦りながらもそう返した。

なんか、この子は普通の男子とは違う気がする。

まあでも、友達ぐらいにはなれそうかなと私は思った。














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