のどかへ  創より



 街の中。俺は、のどかの横を知らん顔して通りすぎた。のどかはスマホを見ながら歩いてて、もしかして彼氏なんかと連絡とっているのか?と考える。俺は立ち止まって後ろを振り返り、より女性らしくなったのどかの背中を見つめる。俺はのどかへの気持ちが込み上げた。





のどか…

俺はあの時、あれを言っていればと後悔してるよ。俺は毎日、カメラばっか見てて、それはカメラが大好きなんじゃなくて、恥ずかしくて、のどかをまじまじと見れなかっただけなんだ。


だから俺は、純斗が羨ましいよ。だってあいつは、毎日のどかの事を見てた。話すときものどかの目をじーっと見て、顔を近づけて…。あぁ、自分が情けない。あのときこうしてればっていう後悔は、いくら思ってももう、二度とできることはできないんだから。俺はカメラ越しでしか、のどかと目を合わせたり、見たりすることができない。性格めっちゃキツいくせに、馬鹿だよな俺。そんなことも出来ないなんてさ。だた俺は、のどかのことが好きだった。本当に好きだった。


のどかと一緒に座ったベンチ。


のどかと一緒に見たクラゲ。


のどかと一緒に話したあの店。


もう一度、一人で座ってみても、行ってみても、見てみても心の中が苦しくなるだけだった。小人に、タイムトラベルっていう魔法を新しくつけてくれないかな。


…なんてね。




俺はこれからもずっとのどかを見守るし、


助けるし、


そばにいる。


君は分からないかもしれないけど。




幸せにね、のどか。


じゃあ。









創は一回息を吐いた後、「のどか」と言い捨てて、また自分の進む道を進んだ。




その時、のどかが創を見たことを、創は知らない。

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