ソード・ワールド2.5リプレイ「墜ちた魔動機と天の貴公子」

アトラ

プロローグ  - レイン・ハイリッジの日記 -

 僕の名前はレイン・ハイリッジ、冒険者だ。

 なぜ、なのかって?…それはだって、僕がいくらメリアの長命種とはいっても、もうだからね。

 冒険者なんて華やかで危険な仕事は、活気のある若者たちに譲って、今はひっそりと書庫の管理人をしているのさ。


 僕の人生の目標は「この世界の全ての知識を知ること」。

 だけど、それとは別に僕にはささやかな趣味があってね。それは、僕の体験した出来事や冒険を日記に書き記すこと。

 そして最近は、そこから得た教訓や素晴らしい体験を後世に伝えていくことも、余生の楽しみの一つかな。


 さて、じゃあ今日はどんなお話をしようか?

 …そうだ、僕たちのパーティにも、まだまだ駆け出しの冒険者だった時代があったわけだけど、そんな僕たちが、少しだけ有名になるきっかけとなった冒険譚があるんだ。それを話すことにしよう。


 この物語にタイトルをつけるなら、そうだなぁ…。

『墜ちた魔動機とそらの貴公子』…かな。

 ええと、どのページだったか。


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 今、僕は王都ハーヴェスにある公園、そこにある大木の下でこれを書いている。この場所は、僕のお気に入りだ。

 メリアである僕は睡眠をとる必要がない。だから、夜の間は読書をしたり、こうして記録を書くことに存分に時間を費やすことができる。

 でも、ただ部屋に閉じこもって、それをしていてもなんだか味気がないだろう?

 それに“賢神キルヒア”様は、知識は書物で学ぶだけではなく、実際に外に出て感じる事も大切であると説いている。

 だから僕はこうして、大きな樹木に寄りかかりながら、偉大なる自然を身近に感じ、夜には月の光を、朝が来れば陽の光を浴びながら新たな知識を学ぶようにしているのだ。


 さて、僕が最近新しく学んだ“賦術ふじゅつ”については昨日書いたから、今日は、最近僕と一緒に依頼を受けている冒険者の仲間たちについて、改めて書き記しておこう。


 まずは、僕の初めての依頼のパーティメンバーにして、現在最も付き合いの長いメンバーである、リカントのフォスター姉弟だ。


 姉のフーリィ・フォスターは、弓使いだ。

 弟思いの良いやつだが、少し過保護すぎると感じるのは僕の気のせいだろうか?

 弟の付き添いで冒険者になったと言っていて、冒険自体にはあまり興味がなさそうだが、幼い頃から狩人をしているらしく、弓の実力は目を見張るものがある。

 最近は“慈愛と復讐の女神ミリッツァ”についてもよく学んでいるみたいで、以前僕にも聞きにきた。

 僕が信仰しているのは“賢神キルヒア”なので、僕と信仰する神こそ違うが、神々の教えを学ぶのはとても良いことだと思う。

 彼女は、蛮族に対して過剰に反応を示すことがあるが、過去に何かあったのかもしれない。


 弟のニトライド・フォスターは、拳闘士だ。

 明朗快活な性格で、僕は気に入っているが、やや向こう見ずなところがあり、たまに依頼中に大怪我をして肝を冷やすことがある。

 そう考えると、姉のフーリィが心配性になるのも確かに無理はないか…。

 彼らリカントは戦う時に、頭部を“獣変貌”させるので、リカント語しか喋れなくなる。

 姉弟同士では何も問題はないだろうが、僕や他のメンバーとは連携がとり辛くなってしまうので、今後彼らとパーティを組むと決めた僕はリカント語を学んだ。

 他の人族特有の言語を学ぶのも、これが中々興味深く、面白い。

 こんな機会でもなければ、学ぶことはなかったかもしれないから、いい経験をさせてもらったと思っている。


 次に、以前『雪山の依頼』に行った際に出会った二人を紹介する。


 一人はルーンフォークのアミラ・キュリアス。剣士だ。

 彼女の見た目は、成人した人間のように見えるが、実年齢はなんと3歳らしい。

 短期間で成人を迎える短命種のメリアと似たようなものだろうか?

 性格はその年齢の通り、無邪気で天真爛漫だが、それとは裏腹に剣士としての実力は本物で、魔動機術の心得も持っている。

 彼女の短い人生の中で、その技術は一体どこで学んだのだろう…?

 ルーンフォークは魔動機文明時代に人工的に作られた種族らしいが、実に興味深い種族だ。


 もう一人はドワーフのバーバラ・イノール。操霊術師だ。

 アミラとは対照的に、彼女の年齢はなんと120歳らしい。

 ドワーフの女性は幼い見た目をしているのが一般的だが、彼女ほどの年齢になると…流石に少し違うようだ。

 彼女は操霊術師でありながら、自らも前線でメイスを振るって戦うスタイルで、僕と違って中々に豪快で逞しい女性だ。

 鍛冶屋の夫と、たくさんの子供を抱えているということらしいから、きっとその人生経験が彼女をそこまで逞しくさせたのだろう。

 操霊術は僕の学んでいない魔法系統なので、彼女が初めてゴーレムを作り上げるところを見た時は、少し興奮してしまった。


 と、4人について書き記したところで、いつの間にか朝日が昇ってきていたようだ。

 熱中すると周りが見えなくなるのは僕の悪い癖かもしれない。

 いつも通りであれば、しばらくしたらあの二人が訪ねてくることだろう。

 彼らが来る前に読んでおきたい書物があるから今回の記録はここまでにしておく。

 続きは、また後で。

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