上向き筆記・修正液・復活法

■上向き筆記


 上向き筆記とは、ペン先が重力に対して水平以上の角度で筆記することを指す。

「水平以上」というのがミソで、使用者は上向き筆記していないと思っていても、実際は上向き筆記になっていることがある。

 たとえば、壁に掛かっているカレンダーに対して筆記するのも「上向き筆記」となるし、手に持った手帳などに書き込むときも、ちょっとした加減でペン先が水平以上になることはよくある。


 ボールペンは、ペン先が何かと触れているときだけインクが流れる構造になっている。そのため、筆記中にペン先を水平以上の角度にすると、リフィル内に空気が入り込んでインクが出なくなったり、芯の中でインクが分離したり、インクが渇いたりする原因となる。

 インクが残っているボールペンが途中で使えなくなる最大の原因はこれで、次がキャップの閉め忘れ(ノック式の場合はペン先のしまい忘れ)。ボールペンは構造上、キャップをしなくても長期間インク詰まりしないが、ペン先にホコリその他が付くことでインクが流れ出し、それが固まってインク詰まりの原因になる。あとは、筆記以外に使用するなどしてペン先を壊すケースもありがち。保管方法がしっかりしていれば、わりと長期間保管していてもインクはちゃんと出る。


 というわけで、ボールペンは基本的に机の上でのみ使用するようにし、壁掛けカレンダーに何か書き込んだり、手に持った紙に何か書いたりする場面では、上向き筆記できる筆記具を使うようにした方がいい。シャーペンとボールペンを両方持ち歩くなどすると、状況に応じて使い分けられて便利だし、ボールペンの寿命を無駄に縮めなくても済むようになる。



■修正液・修正テープ


「修正液」や「修正テープ」で検索してくる人が多いことから、ボールペンを使用する際にこうしたことで悩んでいることが意外と多いことを知った。

 振り返ってみると、私自身も、ここ最近になって、修正テープで字を消した後、どうやって書き直すかで少々悩んだことがある。


 修正液や修正テープは、1.0mmや0.7mmの油性ボールペンが主流だった頃はほぼ問題なく使用できたが、0.5mm以下の細いペンが好まれるようになってきた現代においては、使用に注意を要する文具となっている。

 修正した上から細いペン先のボールペンで筆記すると、ペン先が尖っているため固体化した修正液を削りやすく、それがボールに付着し、詰まってしまうからである。ペン先のボールが動かなくなるとボールペンは書けなくなる。


 修正した部分に筆記し直す際は、0.7mm以上のボールペンを使用するのが好ましい。どうしても細字で書き直したい場合は、書けなくなることを覚悟した上で、よく乾かした上で力を入れずに書けば壊さずに済むかもしれないが、推奨しない。


 私は修正後の筆記に0.4mm以下のボールペンを使用して3本ダメにした。そのため、今では修正後には必ず油性の0.7mmを使うようにしている。



■ボールペン復活法


 インクが出なくなったときに、再び出るようにする方法について。


 最初に言っておくと、買ってから何年も経ったペンや、上向き筆記や修正液、ゴミなどを巻き込んでインクが出なくなったペンなら、復活を考えるよりもリフィルを買うことをおすすめする。

 壊すような使い方をしておきながら、復活させてまで大事に使うというのは理屈に合っていない。大事にするなら壊さないように使うべきだし、そうでないなら壊れた時点で買い換えるべきである。


 買った直後にすでにインクが出ない場合は、店で交換してもらうべきである。


 製造年から3~5年経過したリフィルはすでに寿命であることが多く、書けなくなった場合はやはり新品リフィルに交換したほうがてっとり早い。



●リフィル内に空気が入った


 主に上向き筆記した場合に起きる。

 キャップ式ならキャップを締めて、振る(ボールペンはペン先に何かが触れていないとインクが出ることはないので、ペン先が壊れていなければインクが飛び散ることはないはずだが、いちおう注意すること)。粘度の低いボールペンの場合は復活しやすいが、油性は諦めたほうがいいかもしれない。

 なお、キャップ式ボールペンの場合、キャップに不具合があったり、非純正リフィルを使っていたり、純正リフィルでも入れ方等に問題があると、キャップとペン先が触れて空気が入ることがある。



●ペン先にゴミが詰まった・インクが固まった


 ティッシュで拭く。ペンを垂直に立てて、折ったティッシュに試し書きしてみる。ペンを垂直に立てて、紙の上で試し書きする。ペンを垂直に立てて、軽く濡らした紙の上で試し書きしてみる。

 濡らした紙の上で書くのは、HI-TEC-Cやフリクションなど、すぐインク詰まりする一部のPILOT製ボールペンには特に有効。

 修正液や修正テープを使った後に0.4mm以下の細いペンで上書きすると詰まりやすいので、なるべく修正後の筆記には0.7mm以上を使用する。どうしても細字を使用するなら、壊すことを覚悟した上で、修正液はなるべく薄く塗り、液やテープがしっかり乾いて定着したことを確認した上、なるべく力を入れずに書くことを推奨する。そして使い終わったら必ずペン先を拭いておく。

 その他予防策としては、ゴミっぽい、ほこりっぽい紙面は書く前に手で拭くなどする。ペン先にインクやゴミが付いた場合、早めにペン先を拭く。



●手で暖める


 この方法で復活することもたまにある。



●その他


 紙質が合っていない、書くときにペンを寝かせすぎている、細いペンで大きい字を書こうとしすぎている(ペン先を早く走らせすぎている)など、ボールペン自体は壊れていないが、別の原因で不調になることもある。


 なお、ライターやはんだごてでペン先を熱するとか、熱湯に漬けるといった方法は、ペン先やインクを痛める可能性が高く、とどめを刺すだけのことが多いので、推奨しない。



 私としては、復活方法を考える以前に、ボールペンが壊れないように使用し、保管する方法を考えたほうがいいと思う。

 使用法については、なるべく筆圧をかけないようにする。なるべくペン先を素早く動かしすぎずに書く(ペンを素早く動かしすぎたためにボールを壊してダメにするケースは意外とある。特に0.5mm以下の極細ボールペンは注意)。加圧式ボールペン以外はペンを水平以上に傾けて筆記しないようにする。修正ペンなどで消した上に書く際はなるべく0.7mm以上のペンを使用し、ちゃんと乾いていることを確認し、筆圧をかけないように書く(修正ペンの液やカスがボールに絡まってダメにしてしまうケースは結構ある)。紙やペン先のホコリやゴミを取ってから書く。

 保管については、高温多湿を避け、ペン先にゴミなどが付かないようにすること。キャップ式のキャップは、乾燥を防ぐためというよりは、落としてペン先を壊したり、ゴミが付いたりペン先が何かに触れることでインクが流出し、それが固まることでボールが動かなくなったりすることを防ぐためにある。いずれにしても、使い終わったらちゃんとペン先をしまい、キャップ式ならキャップを閉める。落とすのはどの文房具にしても厳禁。


 また、購入するときはなるべくリフィルの製造年を確認し(見えない場合は店の人に頼んでリフィルを取り出してもらうといい。勝手に分解しないように)、試し書きができるなら必ず試し書きすること。また、試し書きする際は、メモ帳などを持参するのがおすすめ(店によってはインクののりの悪い、つるつるした紙を試し書き用として提供しており、紙が悪いだけなのかペンが悪いのか判断できないことがある)。

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